見出し画像

「カナリヤ」に込められたメッセージ「生きていてもいい」そして「変化を恐れず前へ進む」ということ

米津玄師さんの楽曲「カナリヤ」のミュージックビデオが公開された。
映画監督の是枝裕和監督と初タッグを組んだ作品で、まるで短編映画を見ているようで何度も見入ってしまった。


愛する人の最期に手を触れることもできず、悲痛な表情のおじいさん
裸でふれあう若き男女
ビニールカーテンで隔てられたコンビニのレジ 

コロナ禍の影響を受けた描写がダイレクトに飛び込んでくる。
楽曲はピアノの旋律に導かれる優しいメロディであるのだが、映像からは「悲しみ」や「怒り」というネガティブな感情が伝わってくる。最後にはそのようなくすぶる感情を受け入れて前へ進もうとする希望を感じとることができる。

米津さんの優しく美しい歌声
どこまでも優しく包み込まれ
映像との相乗効果により涙腺が崩壊
この思いをどうしたらよいのだろうか…
この曲については以前にも自分の感想を記したが、改めて感じたことを記しておきたくなった。
以下は以前に記した内容になる。


「生きていても、いいんだよ。
おまえは…生きていてもいいんだ。
本当に、生きていても、
いいんだよ」

天童荒太 小説「永遠の仔」より



「いいよ あなたとなら いいよ
二度とこの場所には帰れないとしても
あなたとなら いいよ
歩いていこう 最後まで」

米津玄師 「カナリヤ」より



カナリヤを聴いた時この本の一節を思い出した。

この本は自身にとって永遠のバイブルと言える大切な一冊であり、初めて読んだときの衝撃は忘れられず、その後も何度か読み直している。
正直読みすすめるのが辛くて切なくてどうしようもない気持ちになる。
一言では語れないが、いずれまた時間をかけて自分なりの考察を述べたい。

根底にあるテーマは虐待
虐げられた者たちの悲痛な叫びが響いくる。
胸に痛いほどに迫ってくる。

冒頭に掲げた一文は物語の最後に記されている。
この一文によってようやく救われる。
救いの到達点に達した気持ちになれる。 

カナリヤはコロナ禍において
コロナ禍においてこそ生まれた曲ではないかと思う。

突然に一変してしまった世界、生活、人間関係
それは暴力的とも言えるくらいの出来事で
元の世界には戻れない 帰れない

けれど時は過ぎてゆく
少しずつ変わり始める世界
変わりゆく中でたどりついた言葉がまさにこの歌詞ではないか。

「いいよ」というひとこと
生きていてもいいんだと、優しく力強く肯定してくれるひとこと

そのひとことがこれほどまでに胸に響き、迫ってくることはなかった。

悩み、迷いながら進むなかでの希望の光とも言えるひとことではないかと思う。

救いを求めてたどりついたことばはとてもシンプルだが、奥深い。


以上が以前に記した内容になる。
その時の感情や考えは今も変わらない。
改めて感じること、思うこと、
それは「変化を恐れない、受け入れる」
つまり許容するということである。

変わりたくないと思っていても変わっていってしまう、変わらざるを得ないことは多々ある。
たくさんの人との関わりの中で生きている以上、変わらずに在り続けることは難しい。
許容するとは妥協やあきらめとはちがう。
自分なりに考えて納得して前へ進むという感じだろうか。
「そうじゃない」と反論したり
「こんなはずじゃなかった」と嘆くより
いったん受け入れてしまったほうが楽な場合もある。
悟りにも似ているかもしれない。

自身は今までの人生で数え切れないくらいのどん底を経験してきたと思っている。
しかしそのたびに
「これが人生のどん底じゃないんだ、これから先もっと大変で最悪なことが待っているかもしれない。死ぬことにくらべたら、このぐらいは大したことではないんだ」
というポジティブなのかネガティブなのかよくわからない信念に支えられて今に至っている。

色々あったけど、何とかなってきたなぁという感じだろうか。
今はコロナ禍という未曾有の出来事に直面している。
やがて時が経ち、新しい生活様式が当たり前になり、そんなこともあったね、などという日が来るだろう。
現に今の状況を見ても気の緩みが招いたとしか思えない。
しかし、何事もなかったかのように振る舞うことはしたくない。忘れたくはない。
忘れてはいけないと思う。
そうは言っても人間は忘れる生き物であるから、同じ過ちを繰り返す。
忘れないためにこうして記しておくことは必要だと感じた。

変化を恐れず、受け入れる。
悩みながらも前へ進む。


「カナリヤ」のメロディ、映像とともに自分の胸とnoteに記す。自分への戒めも込めて。

最後に
この作品に出会い、自身でも気づかぬうちに疲れていたり、傷ついていたことに気づくことができた。
そのことに感謝したい。ありがとう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?