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写真の著作権

Twitterでちょっと話題になっていたのでまとめようと思います。

原則

写真の権利を考えるときは複数のことを考えることがあります。

  • 写真の著作物としての側面

  • メインの被写体の権利

  • 写り込んだものの権利

  • 撮影場所について

これらが場合に応じて絡み合うため、事前に権利周りを明確にしておかないとひどいことになる可能性が高まります。

写真の著作物としての側面

写真も基本的に著作物として認められますがいくつか例外があります。

写真が著作物と認められない代表的な例
・記録のための写真
・絵画など平面的な別の著作物を単純に正面から撮影したもの

つまり、「構図、露出、絞りなどについて誰がとっても同様になるであろう」場合には著作物として認められない事が多いです。

メインの被写体の権利

後述する映り込みと区別するためにこういう言い方をしていますが単に被写体についてと考えてください。

人の場合

被写体が人の場合は特に「肖像権」に注意する必要があります。

肖像権とは「自分の写真や映像を無断で撮影されたり、公表されたり、利用されたりしないように求める権利」と説明できます。

つまり、人物の写真については写真の著作物としての側面に加えて、被写体の肖像という側面も存在するということになります。撮影者の許諾があっても被写体から利用差止めを求められる可能性があります。

ただ、自分の肖像の利用が当たり前に予想されるという場合には肖像権を主張できなかったりします。たとえば、「雑誌のインタビューで特別の説明はなかったが写真を使われた」という場合、インタビュー記事でインタビュイーの写真が使われるのは非常に一般的で、不当に利用されていると配位がない、と判断されたりします。

また、肖像権はあくまでプライバシー権の一つですのでプライバシーを侵害しないと判断されると肖像権による差止めができません。

有名人の場合

被写体が有名人、より正確には、その人の顔写真を使うことで雑誌などの売上、Web記事のViewの向上が見込まれるという経済的な利益を得られるという場合には「パブリシティ権」を考える必要があります。

「パブリシティ権」とは「肖像権」の「財産権」的側面です。つまり、肖像に経済的価値のない場合にはこの権利は認められませんし、馬やキャラクターのように「人権のない(人ではない)」ものの肖像に関しても認められません。

写り込んだものの権利

写り込み、つまり意図せず写真、映像に入り込んでしまったものですが、これについては

  • 著作物については「著作権の保護の例外」として写り込んだ著作物は無許諾で利用できるとされている

  • 人物についてはプライバシーを犯すような写り込みでなければ問題にならない

とされます。例えばSNSで自撮りをあげたところそこにポスターが写り込んでいたとか言う場合はそのポスターについて著作権を理由になにか言われることは考えにくいということになります。
また、街の風景を写真にとることを考えましょう。大抵の場合人の顔が複数映り込むと思います。プライバシーを侵害するような写真の利用でなければこれも問題ないはずなのですが、侵害の判定が「その場にいることを知られたくなかったのにこの写真のせいでバレた」とかでも下ってしまう可能性があります。プライバシー侵害かどうかの線引がはっきりとはしていないので、人の顔についてはとりあえずぼかすのが無難ということになります。

撮影場所について

施設管理権と言われる権利があります。

建築物(私有地)の権利者は建築物内部(私有地内)における人の行動を人権を
侵さない範囲で規制することができる

このような権利を施設管理権と呼びます。施設とありますが土地も含みます。

公園で球技・焚き木を禁止したり、店内で写真を取るなと言ったりするときにはこのような権利が働いています(自分の領域で好き勝手してほしくない、という当たり前の内容ですが)。

例:展示会での撮影

さて、このような施設管理権を考えると展示会で撮影した写真をSNSにアップロードするときに問題になりそうなことは次の点にまとめられるでしょうか。

  1. 展示会での撮影禁止の場合

  2. 展示の撮影はOKだがSNSなどネットへのアップロードは禁止の場合

1.展示会での撮影禁止の場合

展示会でそもそも撮影が禁止されているので、撮影した事実がバレた場合、出禁などの対応をされる可能性があります(よほど悪質でなければ注意で済むでしょうが)。

ただ、撮影した写真の著作権性が否定されるわけではないので写真の著作権は当然発生します。正当に許諾を受けて撮影したわけではないので、その写真を写真集に入れて販売などは話が複雑になります。被写体の利用について何も許諾がない状態なので被写体の著作物の存続状態やその写真集の販売が被写体の経済的利益を侵害しているかなどが問題になります。

2.展示の撮影はOKだがSNSなどネットへのアップロードは禁止の場合

あくまで個人的に楽しむための写真撮影が許可されている場合です。SNSへの投稿が発見されたからと言って、即座に問題になるかはその展示会の性質にもよるでしょうが。

ネタバレに関してかなり身長に運営されている展示でそういうことをすれば利益を損なったと責められるでしょうし、特に明確な理由なくSNSを禁止という場合には注意や出禁ですむかもしれません。

1,2どちらにしろ、だめと言われていることをあえてやっているので無用なリスクを背負い込むことになります。館内案内などには素直に従うのがいいでしょう。

補足:その他の特殊な例

建物の撮影

建築物は基本的に著作物ではありません。ただし、住居としての実用性や機能性とは独立して美的鑑賞の対象となるような造形芸術としての美術性を備えた場合には建築の著作物として認められます。

したがって、一般的には建築物は著作権の保護の対象ではありませんのでそれを写真にとっても著作権の観点から問題になることは非常にまれでしょう。しかし、これは建物の写真を無制限に使っも問題ないという意味ではありません。例えば会社の特定が可能な写真をその会社に著しく不利益な使い方をすれば著作権法以外の法(例えば不正競争防止法や刑法(業務妨害や信用棄損))を根拠に怒られることは当然考えられます。

私有地と公道

撮影場所についての節で整理したように、私有地の権利者(管理を委託・委任された者を含む)は私有地について一定の範囲で他人の行動を制限したり立ち入りを禁止したりする権利を持ちます。

撮影場所についてのところでは展示会を例に「室内」での例を整理しました。では「室外」はどの様になるでしょうか。

  1. 公道から自由に入れるような私有地

  2. 公道との堺に生け垣やブロック塀などがあり、特定の門からしか入れないが、誰でも入れる(公園や多くの大学)

  3. 公道との堺に生け垣やブロック塀などがあり、特定の門からしか入れない上に入場料が必要(兼六園のような公園や遊園地など)

1.公道から自由に入れるような私有地

公道から建物までの空間で、生け垣や塀で公道と隔てられていないようなものです。大きなオフィスビルの麓のところに現代アートおいてたりします。

このような「誰でも無料で自由に入れる空間」は公道に非常に近い扱いを受けます。「入場を制限する意思さえない」とみなされるのでしょう。出禁に使用にも私有地への侵入を管理できない、という実際的な側面も強いでしょうが。
この手の場合には「勝手に入ったから罰則」ということにはなりません。

2.公道との堺に生け垣やブロック塀などがあり、特定の門からしか入れないが、誰でも入れる(公園や多くの大学)

境界が明確にあるものの、結局門からは誰でも無料で自由に入れてしまうので1に準じる事が多いです。

3.公道との堺に生け垣やブロック塀などがあり、特定の門からしか入れない上に入場料が必要(兼六園のような公園や遊園地など)

この場合には入場を管理しているので屋外でも屋内の場合と同様に考えます。

特に兼六園のように景観を売りにして入場料で利益を出しているところについては、内部の景観の写真(当然被写体に著作物は含まれません)を勝手に大量に公開したり本にして販売したりすると施設管理権と関係なく大いに問題になるでしょう。

ちなみに、例に上げた兼六園については入場規約で園内で取った写真の商用利用は禁じられていたはずです。

まとめ

  • 写真にまつわる諸権利

    • 撮影者の著作権

    • 被写体の権利

      • 人の場合:肖像権、パブリシティー権

      • 物の場合:著作権

    • 映りこみ

      • 人の場合:顔をぼかすのが無難

      • 物の場合:著作権については「著作権の保護の例外」にあたるので基本的に問題にならない

    • 撮影場所

      • 建物内:管理者の指示に従う

      • 敷地(屋外):入場料がいるか、自由に入れるかがポイントになる

      • 公道から写る分には問題は基本的にはない


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