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私の中のJALフィロソフィ

私が就活の時に、JALにこだわっていた理由が「JALフィロソフィ」という社員の行動哲学に惹かれたからだった。

地上、客室、セールス、、正直携わるフィールドはなんでもよかった。贅沢言わずになんでもやりますので、とにかくJALの社員にさせて下さいっ、くらいの勢いだった。

1年ほどでJALのグランドスタッフ(地上職)を辞めてしまった私がJALを語っていいものかとひやひやしながら綴っていたのだが、、辞めた理由についても一部公開をしようと思うので、お許しいただきたい。

冒頭のJALフィロソフィとは「世界で一番お客さまに選ばれ、愛される航空会社になる」ことを目指すJAL社員が、この同じベクトル(目標)に向かって一丸となる際に持つべき社内での価値観のことだ。これは、JALが経営破綻に陥った再建時に会長であった、京セラの稲盛和夫が唱えたものである。

そんなJALフィロソフィの中で私が一番大事にしていた価値観が「人として何が正しいかで判断する」。

これは簡単に言うと、自分の私利私欲や儲けのために動くのではなく、目の前で困っている人がいたら助けるべき、という行動指針だ。現在の3倍くらい正義感の強かった学生時代の私は、この言葉に心から共感していた。

どのコミュニティにもたまーーーにいるが、嫌われたくないが故に一番強い人のバックの陰から周りの様子を伺ったり、損得感情で友達付き合いをする人がいる。「付き合う友達は選びなさい」と言われることもよくあるが、それは自分にとっての損得で選ぶのはなく、道徳的に人として良い人か悪い人かの基準で判断すべきという意味だと私は思っている。

なのでこのフィロソフィは会社の中だけでなく、生きていく上で私が大事にしていきたい価値観でもあった。退職した今でもこの根本の価値観は変わらない。

そしてもう一つ、フィロソフィで私が一番大好きだったのが「最高のバトンタッチ」。このフィロソフィは私が働いていた当時、「私もこれすごく好き!」という社員が多かったような気がする。

旅券発券から、チェックインや搭乗手続きをサポートする地上へ、地上から機内外の整備、整備から機内サービスの客室・パイロット、客室から到着地の地上へ。いわゆるお客さまが旅を体験する順番なのだが、仕事は自分1人の力だけでなく、社員全員の力を合わせるからこそ最高のサービスが提供できる、という考え方だ。

今まであまり自覚はなく最近気がついたのだが、私はチームで何かをする、というのが、あんまり得意な方ではないのかもしれない。

だがこの考え方は、同じ目標を目指す仲間(社員)を互いに尊重し合い、皆んなで力を合わせる、ということがどれだけ大切かを教えてくれた。

JAL再生

ではなぜ、ここまでJAL好き人間の私がJAL社員を辞めてしまったのか。

就活の時、私は必死でJALについて勉強した。JALに入りたい人のほとんどがやっていたかとは思うが、webから始まり本も何冊か読んで歴史やフィロソフィについて学んだ。開催されるイベントは必ずと言っていいほど足を運んだ。JALは手書きエントリーシートだったので、何回も何回も書き直した。

そして内定をいただいた。世界で愛される航空会社を目指す一員になれたのだ。入社してからは、日々誇りを持ってJALの社員として働くことができた。JALがより大好きになったし、それだけで十分だった。「さすがJALだね。ありがとう。」とお客さまから感謝されることが、働きながら涙ぐんでしまうほど嬉しかった。覚えることがたくさんあって辛いことも多々あったが、毎日何が起こるかわからず感動の日々だった。

だが今思えば、「JALで働く」ことがゴールになっていたのかもしれない。JAL社員としてどうなっていきたいのか、具体的にイメージが抱けていなかった。シンプルにJALが好き、ということなら、今度はユーザーとしてJALと関わっていこう、本業の仕事は自分の体にとって、ストレスフリーなものを選ぼう、と思ったのだ。

というのも、仕事のワークライフは朝晩不規則で正直私にはちょっときついものがあった。なぜなら私はそれまで徹夜をしたことがほぼなかったくらい、必ず約7時間の睡眠をきちんととる生活だったのだ。大学生の時にオールで飲み明かしたとかそういうことはあったが、年越しの夜更かしも基本的に2時には寝てしまう私だった。

そして、私にはなりたい自分像があった。「ユリサはこんな人」「自分はこんなことができます」と自信を持って言えるスキル(現ライター)・魅力がある大人になりたい、とずっと思っていた。もちろんJALのグランドスタッフでもそれは身につけられたかもしれない。だが私の場合、「JALの一員である自分」を武器にして成長することを怠ってしまいそうだったし、何より不規則生活を何年も続けていく自信がなかった。

こう言うと誤解を招いてしまいそうだが、「JALの一員である自分が好き」なことが悪いことだとはまったく思っていない、むしろ誇りに思うべきだと思う。ただ、私の中では「会社が好きな現在の自分」と「なりたい未来の自分」にギャップが生まれていたのだった。

でも同期を含む社員の皆さんに切実に感謝をしているし、たった一年でも本当に多くを学ばせていただいたと実感している。仕事だけでなく、人としてこんな風になりたいという、社会人である前に「ひとりの人間」としての価値観や考え方、あるべき姿を。

新卒で入社し、社会人を迎えた会社がJALで本当によかった、幸せだったと、心から思っている。辞めた今でも、JALフィロソフィは私の心のどこかに根付いている。


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