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映画ドラえもん 1期(01~18)活躍度


■まえがき

当方、藤子不二雄ド真ん中世代、というには、少し遅れてきた者。
1983年生まれで、F先生ご逝去が1996年なので、F勃興期ではなくF爛熟期に幼年時代を過ごした。
小学生当時は「オバQ」「パーマン」には疎く、テレビアニメ「ドラえもん」一色で、ついでに「キテレツ大百科」「21エモン」も少し見ていたくらい。
もちろん原作漫画も好きになった。
当時ドラのてんとう虫コミックスは、40巻くらい刊行されていて、書店にて既刊を月一くらいでバラバラと集める途中、41から45巻が出版されたときの、嬉しさといったら。
同時に、過去刊行されていた「藤子不二雄ランド」(セルシートつき!)を、古本屋で歯抜けで集めたり、大判の雑誌「ドラえもんクラブ」やムック本やで、藤子不二雄作品群に親しんだ。
低学年のころはFとAの仕組みが判らなかったものだ。
コンビ解消が1987年なので、それ以後の読者だが、当時の本には「・F・」がついていたりいなかったり、混在。
むしろFとAを見分けられなかった、というか見分ける必要のなかった低学年当時の混沌とした記憶のほうが、心地よく思い出される。
「怪物くん」も「ウルトラB」も、ドラに負けずまあまあ面白かったから、どっちでもよかったのだ。
深夜の帯番組で「笑ゥせぇるすまん」をうっかり見てしまったときの恐怖も綯い交ぜに。
そういう事情で、Fの優しさや藤子ブームを揺り籠に育ってきた者なので、Fに思いを馳せると感情が昂りすぎる。
それに歯止めをかけるためにこんな文体で文章を書いていること、諒とせられよ。
とはいえ中学進学あたりから、興味はテレビゲームや「新世紀エヴァンゲリオン」に移った。
まっとうな年代に自然とF離れをしたわけだが、ちょうどそこにF死去が重なる。
そのため敢えてF晩年の映画作品を白眼視したり、その後は遠ざけたり、声優交替後は意識の埒外に置いたり、してきた。
が、40になんなんとする現在、遅まきながら藤子連峰に再入門をしているところ。
てんとう虫コミックスや小学館文庫にて、ドラ以外のSF短編、「エスパー魔美」「T・Pぼん」「21エモン」「キテレツ大百科」「チンプイ」「ウメ星デンカ」「パーマン」「オバケのQ太郎」「モジャ公」など。
もちろん同時に「まんが道」などA作品にも。
てんとう虫コミックス「以外の」本への親しみが素地となって、懐かしいやら新しいやら感情揺さぶられ。
ただし、行き着くのはどうしてもF畢生の「映画ドラえもん」あるいは漫画の「大長編ドラえもん」へ。
本来短編や中編に自身の作風を合わせていた(手塚治虫の影響があるだろう)にもかかわらず、「ドラえもん」爆発的ヒットに引っ張られ、長期連載に助けられた(かつ苦しんだ)Fは、早すぎる晩年、「大長編ドラえもん」をご自身のライフワークと見定めた(ことで囚われた)のだと思う。
なぜなら特に終盤、Fならではの啓蒙的エコ思想、ペシミズム、創造神コンプレックス、死生観が、モロに反映しているからだ。
個人的には「コロコロコミック創刊15周年記念特別増刊 映画原作ドラえもん大全集1」「2」(「ドラビアンナイト」まで。金と銀。小学生には破格の1000円越え、1000ページ越え)を熟読したり、枕の代わりにしたり、その後は雑誌やムック本(デコボコのラミネート加工)で読んでいた。
F離れをしたと前述したが、いやむしろF晩年の大長編を冷遇したり、映画から目を逸らしたりと、情緒纏綿としていたのだと、今更ながら気付いた。
そんな今、故あって映画ドラえもんを再鑑賞したり、未鑑賞だったのものを見たり、している。
wikipediaに拠れば、
* 藤本存命中の作品(恐竜〜ねじ巻き都市冒険記) ※アニメ1期藤本生前
* 藤本没後、声優交代までの作品(南海大冒険〜ワンニャン時空伝) ※アニメ1期藤本没後
* 2005年の声優交代後の作品(恐竜2006〜) ※アニメ2期
と3期に分かれるらしい。
そのうち1期のピースが埋まっていたことが判ったので、今後2期3期を見る動機を高めるために、1期について振り返ってみる。
前述した通り、思い出語りをさせればきりがないので、思い切って数値化してみることで、自分の備忘録としてみることにした。
各作品ごとに、各キャラクターの「活躍度」を採点してみる。
その上で感想メモや個人的好みを、なるべく手短に記述してみる。
漫画版と記憶が混同している可能性もあるが、ご容赦あれ。

■凡例

項目は8分類。
 ドラ:
 のび:
 しず:
 ジャイ:
 スネ:
 ゲスト:(代表者1名に絞り切れず)
 メモ:(舞台設定や気づきや)
 好み:
活躍度の採点は3段階。
 2 強烈
 1 まずまず
 0 言っちゃ悪いがいるだけ
なるべく点差をつけてみる。
また、思い出すためのちょい一言メモも。
1作品ごとのレビューや考察はネット上にたくさんあるので任せるとして、さて映画版で誰が一番活躍しているのかを数値化してみるのが、個人的な遊戯である。
ネット上の各作品感想やあらすじやを読み返しながら、考えてみる。
減点法ではなく加点法で考えたい。
とはいえドラのびは視点人物なので、下方修正される可能性あり。
好みの採点は、
 A 大好き
 B 好き
 C まずまず
完全主観。
5点満点でいえば、A=5、B=4,C=3。
「ドラえもん」に関していえば2点以下は存在しない(山崎貴「STAND BY ME ドラえもん」は別)。

■01 1980 のび太の恐竜

 ドラ:1 タイムマシン破損を隠して、せっかくだから一泊キャンプしようよ。桃太郎印のきびだんご。
 のび:2 鼻でスパゲッティ宣言。ピー助を返そうという決意。
 しず:0 嘘を謝っちゃえばいいじゃない→のび太「しずかちゃんまで」!
 ジャイ:1 「俺は歩く、のび太と一緒にな。俺がタケコプターを落とした時、お前、俺の手を離さなかったもんな」
 スネ:0 冒頭、ティラノサウルスの化石を自慢。プテラノドンに追われて、自分の想像で気絶。
 ゲスト:1 ピー助/恐竜ハンター/ドルマンスタイン。大人ピー助の低音「ピューイ」と、ザ・悪人。
 メモ:スピルバーグが影響されるだけあって92分でこの密度。
 好み:B

■02 1981 のび太の宇宙開拓史

 ドラ:1 実はチャミーに好かれる。ヒラリマント→タイムふろしきのくだり。
 のび:2 スーパーマンだと調子に乗る。ガンマンとしてギラーミンと一騎打ち。
 しず:0 ジャイスネに知らせにいく。
 ジャイ:0 隣町中学生にビビって責任転嫁。岩をバッティング。
 スネ:0 同上。
 ゲスト:2 ロップル/チャミー/クレム/ブブ/ボーガント/ギラーミン。流されたカーゴを仕方ないと言えるロップルの好男子ぶり。悪者数名の温度差(コア破壊装置のくだり)。クレムの雪の花。
 メモ:畳の下が超空間事故でつながるという設定(夢・気絶でスイッチ)。コーヤコーヤ星の洪水、二つの月、動植物、ガルタイト鉱業=開拓星。本当に生活がある感じがする。
 好み:A

■03 1982 のび太の大魔境

 ドラ:0 ジャイの男気に対して「そうだよ。みんな一緒だよ。これかなにが起こるとしても僕らはず~っと一緒だよ」。
 のび:1 中盤はいまひとつだが、名刀電光丸でVSサベール。
 しず:2 先取り約束機でお風呂→5人の外国人の伝説と結びつける、超活用。
 ジャイ:2 冒険ロマンに水を差されて、探検禁止令→卑怯な道具を置いていけ→本当に危険になり「どうせみんな俺のせいだ」と孤立、ペコを抱いて泣く→男気を出して責任を果たそうとする→団結「なんだよ。またいっしょになっちゃった」。
 スネ:0 谷にて不気味な声→岩の隙間を熱風が通るからとカラクリを喝破(自ら顔を火傷)し、ペコが自己紹介するきっかけを作った。
 ゲスト:1 ペコ=クンタック王子/チッポ/ブルスス/ダブランダー大臣/サベール隊長。ペコの知能の高さ(とはいえ地図は、わら半紙にサインペン)と、ある意味可愛げのなさ……二本足で立って喋り出した瞬間。
 メモ:出木杉「ヘビー・スモーカーズ・フォレスト!」(アフリカ→ザイール→コンゴ盆地)。バウワンコ王国(5000年の歴史、古代ローマふう)。巨神像。
 好み:B

■04 1983 のび太の海底鬼岩城

 ドラ:1 PTAに保護者として信頼されているらしいが。海底世界の解説役。海底バーベキュー。カメレオンぼうしにて、「パクパクパーク」。
 のび:1 バトルフィッシュに追われたり、オバケイカに襲われて「ほーら見ろ」と喜んだり。活躍というよりは、チャップリンぽく慌てふためく。
 しず:2 バギーを廃車にしようというドラを止め、バギーに懐かれる。ジャイスネを牢屋から出してあげてとエルに色仕掛け未遂。ムード盛り上げ楽団を用いて、自らを囮として鉄器兵に差し出すあたり。落ちる涙。掌の中のネジ。
 ジャイ:1 沈没船財宝ロマンに子供っぽい執着。テキオー灯効果切れで死亡、という衝撃の映像。海底人の診断で、凶暴性ゆえ地下牢に。
 スネ:1 同上。海底人の診断で、嘘つき性ゆえ地下牢に。
 ゲスト:2 エル/水中バギー/ポセイドン。所謂いい兄ポジションのエルに対して、道具の「くせに」癖の強いバギーちゃんの魅力。「ナカナイデ、ボク、シズカサンノタメナラナンデモスル」
 メモ:芝山努が監督し始める。海底国家ムー連邦VS滅亡したアトランティスの自動報復システム→米ソ冷戦、という見立て。バミューダ・トライアングル、という月刊ムー的な興味。
 好み:A

■05 1984 のび太の魔界大冒険

 ドラ:1 もしもボックス。石像のくだり。星の帽子。
 のび:2 石ころ帽子の主観。猫美夜子に「あなた魔法が使える? 悪魔と戦える? ここで2人とも捕まったら、誰が地球を守るの?」と強く諭されるシーンが好きなのだが、その台詞を引き出せたのは相手がのびだから。いったん逃げるときに泣いているのび。
 しず:0 スカートをめくられてばかり。
 ジャイ:1 ツノクジラを歌で撃退。銀のダーツ。
 スネ:0 チョークをチンカラホイして黒板に「のび太のバカ」。
 ゲスト:2 満月美夜子15歳/満月博士/大魔王デマオン/メジューサ/使い魔/ドラミ。最高ヒロインの美夜子と、トラウマ製造機メジューサ。
 メモ:出木杉の「笑わないよ。でも、魔法はない」という名解説。ドラミめでたしめでたし「おしまい」のテロップは単なるギャグではなく、直後に、もしもボックス→パラレルワールドを解説する巧みな導入。
 好み:A

■06 1985 のび太の宇宙小戦争

 ドラ:0 ビッグラ……?
 のび:0 チーターローション→効果切れ。
 しず:2 実は裏主人公。牛乳風呂→捕縛(→異臭は?)。「そりゃあわたしだってこわいわよ。でも……。このまま独裁者に負けちゃうなんて、あんまりみじめじゃない! やれるだけのことを、やるしかないんだわ」。スモールライト効果切れて、ザバー「こ、これ、どういうこと!?」の絶妙なポーズ(漫画ではFによる描き直し多数)。
 ジャイ:0 ポケットにピシア探査球というポカ。ロデオ。
 スネ:2 プラモ軍団。と同時に、無理だよ主張。→「しかたないじゃない。女の子を一人で危険な目に。いくらぼくだって」。→身長ネタ。
 ゲスト:1 パピ。優等生すぎてロコロコやドラコルルに印象負け。対になるギルモアも印象いまひとつ。
 メモ:子供心に難しかったが、道具の期限という目新しさと、全編を覆う勇猛さに、惹かれていた。出木杉ウォッチャーとしては「簡単な発火装置」に驚愕。武田鉄矢「少年期」込みで。
 好み:A

■07 1986 のび太と鉄人兵団

 ドラ:1 決戦前夜のスーパーにて「全部タダでございます!」。直後、曙光とともに改良型山びこ山の作戦を思いつく、参謀的なシーン。
 のび:2 その他これといった活躍はないが、リルル「ええ、撃って」のび「や、やっぱり無理だよ」「いくじなし!」雷撃で気絶。これぞのび太流の活躍。映画ドラの中で一番好きなシーンかも。
 しず:2 中盤、リルルに首を絞められ振り切って、ひとり町を歩いて、でも翻意して自室に戻る。ここの無言の表現「……。」が素晴らしい。タイムマシンで「ワープ!」「リルル、あなたはいま、天使になっているわ」。しずあってこそのリルルの魅力。
 ジャイ:0 「いっぺんハムをまるごと一本食べてみたかったんだー」
 スネ:1 ミクロス関連。「大昔ヘ行ッテ神様ヘ文句言ッテヤロウ!」→しず「そうだわ!」という思い付きを引き出したということは、実はミクロスを創ったスネ吉兄さんが間接的に地球を救ったということ。
 ゲスト:2 リルル/ザンダクロス=ジュド/ミクロス。リルル「今度生まれ変わったら、天使のようなロボットに…」。もう100回くらい思ったが、リルルはのびではなくしずの前に現れるべきなのでは?
 メモ:別世界に踏み込むのではなく、パパママのいる現実が侵略されかねない、という恐怖が初めて描かれる。
 好み:A

■08 1987 のび太と竜の騎士

 ドラ:1 風雲ドラえもん城。ポップ地下室→「聖域」。恐竜絶滅巨大彗星衝突説の説明。
 のび:0 0点の答案を隠したい→どこでもホールという導入部以外、いたっけ。
 しず:0 大きくなる彗星を唯一気にする。
 ジャイ:0 いたっけ。
 スネ:2 "多奈川"および自宅の庭で恐竜を目撃、ラジコンのくだり→ジャイの所謂「ノゼローゼ」→ビデオカメラで撮影。本作の怪奇的雰囲気を倍増。
 ゲスト:1 バンホー/ロー/ナンジャ族。次元転換船というタイムマシンで歴史の改変(大遠征)を目論む。その見た目も作用して、人とは「わかりあえなさそう」な印象が強い(白亜紀の恐竜を滅ぼしたのはドラたちではないかと疑心暗鬼)→和解。映画初の悪役不在。
 メモ:スネ夫が最初に相談するのは出木杉。
 好み:B

■09 1988 のび太のパラレル西遊記

 ドラ:1 のび太の夢の中で、釈迦。ヒーローマシンのファミコンふうビット表現。VS金閣・銀閣のヒョウタンのくだり。
 のび:2 Fの分身として孫悟空に憧れを抱き、過去の歴史とヒーローマシンの作り出した仮想世界の狭間で、孫悟空に成り代わる……結果的に最もヒーローっぽいビジュアルを担ったのは、さすが主人公。
 しず:0 役は三蔵法師。とはいえモノホンを前にしては、格好だけ。
 ジャイ:0 役は猪八戒。
 スネ:0 役は沙悟浄。
 ゲスト:2 リンレイ=紅孩児/三蔵法師(その実在性を巡りフィクションの垣根が)/牛魔王/羅刹女/金閣・銀閣。タイムマシンで時間を置いて見るからこそ深まる、リンレイの内心の苦悩。母の死および父の死を見届けて、代理父三蔵の弟子へ。善き人間になってほしい。
 メモ:F入院のため、生前唯一、原作漫画なし。とはいえアイデアはFに拠る。また後の「夢幻三剣士」と同じく、バーチャル世界が、現実へ侵犯している。バグった感じが、怖いというか嬉しいというか。のびパパママや出木杉に角がにょきっと生えるくだり。学校の先生のメタモルフォーゼは怖すぎて笑う。
 好み:A

■10 1989 のび太の日本誕生

 ドラ:1 ハムスターで家出。時空乱流や神隠しの説明。「われこそは、精霊大王ドラゾンビ」。
 のび:2 ペット大臣。動物遺伝子アンプルで、ペガ・グリ・ドラコ。リニアモーターカーごっこでひとりはぐれ、夢を見たり、マンモスにラーメン汁で助けられたり。
 しず:0 環境庁長官。
 ジャイ:0 「おれはかーちゃんのどれいじゃないっつーの!」。けんか大臣、ではなく、建設大臣。
 スネ:0 農林大臣。ダイコン嫌い。
 ゲスト:2 ククル/ヒカリ族のタジカラ、ウタベら/不死身の精霊王ギガゾンビ=23世紀の時間犯罪者/ツチダマ(形状記憶セラミック)/クラヤミ族。ククルがのびにはぐれたオオカミの話をする場面、優しくて好き。後にウンバボと名乗り、なんと「チンプイ」のエリちゃんの先祖。
 メモ:第1作目をリスペクトする意味でタイムパトロールを再登場→その後のT・P無能化と頻出のきっかけに。神隠しの説明シーンが怖くて、VHSビデオのその辺りを早送りしていた。
 好み:A

■11 1990 のび太とアニマル惑星

 ドラ:1 ついにネコ耳をつけたというのに、活躍少ない。アニマル星の貧弱な武装、子供向けのひみつ道具を搔き集めて籠城戦を立案する。「鉄人兵団」に続いて、戦略を立てるの好きそう(黒澤明「七人の侍」なら島田勘兵衛)。
 のび:2 「ツキの月」で大活躍!
 しず:0 なにしてたっけ。
 ジャイ:1 ピンクのもや(どこでもガス)関連で、珍しく怯える。のち、ゴリラにノックアウト。
 スネ:0 ジャイと常に一緒だが、ヘタレ役をジャイに奪われ。
 ゲスト:0 チッポやロミや/ニムゲら/動物たち。チッポはノビスケっぽい性格だが、突出せず、アニマルらがダマになっている印象。
 メモ:本作のエコロジー思想が強烈で、F生前の1期においても、「日本誕生」が前期、「アニマル惑星」以降がペシミズムが押し隠せなくなる後期、という印象がある。ママが急激に勉強し始める辺りが、皮相的。アニマル星の"生活"よりも"信仰"に重きを置いた描き方も、作劇手法が変容しているためでは。ニムゲ=ニンゲンという安易な警鐘の鳴らし方は、子供にとっても微妙だった。
 好み:B

■12 1991 のび太のドラビアンナイト

 ドラ:0 貿易商アブドーラ。初めての四次元ポケットなし状況(盗まれる)→その後の作品における故障など、ドラ弱体化の先鞭。
 のび:0 秘書アリ。心配役。
 しず:2 ピアノ教室キャンプを一日勘違い(テヘペロ!)→(親に報告なく)絵本入り込みぐつでジャイスネの狼藉に辟易したところで、シンドバッドの空飛ぶ絨毯と激突、フィクション世界へ取り残され。→奴隷!むち打ち!オアシスで水浴び。Fの嗜虐心発露か。
 ジャイ:0 召使クマサン。
 スネ:0 召使ハッサン。
 ゲスト:2 ツアーコンダクター兼ガイドロボットのミクジン/船乗りシンドバッド("タイム・ベラベラの"コレクション)/奴隷商人アブジル/サソリ団首領カシム。レギュラーキャラが不活性なぶん、ゲストキャラが濃い(→のちの「ねじ巻き都市」の先鞭か)。映画的見所はシンドバッドVSアブジルなくらいだし。アブジルが穴の開いた板と紐で、星の運行から方角を割り出しているシーンが強烈だが、漫画だけだったか。
 メモ:アラビアンナイトを知ったのはほとんどこの作品。フィクションと現実の接点を探すという展開は、熱い(not絵本を燃やすママ!)。
 好み:B

■13 1992 のび太と雲の王国

 ドラ:2 初・故障。子供心に衝撃だった。そのぶん、洪水の水中にて、偶然倒れた電柱の衝撃で復活した後の頼もしさといったら。グッジョブ>電柱。雲もどしガスを使ったネゴシエーションのあたり、戦略好き発露。そして石頭を活かした特攻! 衝撃×2。
 のび:2 壊れたドラを連れて歩く……かつて関係を持った者たちに助けられて……F先生いわく「ドラえもんは現実にはいないけど、色々な形で周りの人に助けられてきた。そういう意味ではドラえもんはいると言える」。のびの構えない善性こそが巡り巡って援助になったのだ、という構図自体が、Fのメッセージだと深読みしたい。
 しず:1 100円で1株という安牌。どう考えても不利な最後の審判にて、最良の発言。
 ジャイ:0 50円で半株。
 スネ:0 3万円で300株の大株主様。
 ゲスト:1 タガロ/ホイ/パルパル/グリオ/キー坊/密猟者3人。全員キャラ立ちしている。パルパルとしずの関係はよき。ホイやキー坊は言うまでもない。が、密猟者の手際の良さが際立つ。
 メモ:ホイやキー坊が再登場する異色作。天上人の鬼畜な「ノア計画」(富野由悠季「逆襲のシャア」)。のびドラがどこでもドア(時間ダイヤル)で直面するシーンの恐怖……のびがママを連呼する姿。教育ドリームのあたり含め、Fペシミズム極まれり。名曲「雲がゆくのは」。
 好み:A

■14 1993 のび太とブリキの迷宮

 ドラ:1 故障PART2(ただし拷問後の完全破壊→海中投棄)で早々にマンネリを露呈。アニヲタwikiによれば〈ナポギストラーは「ドラえもんが完全にのび太を見捨てた場合に辿る末路」のメタファーと言えなくもない〉。
 のび:1 トランク。アニヲタwikiによれば〈チャモチャ星の人々が「のび太がドラえもんに頼って成長しなかった場合に辿る末路」のメタファーとすると、〉。「ロボットでも人間以上なんだよ」
 しず:0 印象薄い。
 ジャイ:1 ロボコスプレで偵察。
 スネ:1 ロボコスプレで偵察。
 ゲスト:0 サピオ/ブリキン/タップ/ピエロ/ナポギストラー一世。科学文明過剰享受ゆえ病弱にというわかりやすすぎる構図を体現するサピオ。
 メモ:深夜テレビと会話してホテルと予約したことを疑わない、のびパパのぶっとび具合を皮切りに、ブリキン島のブリキンホテルの地下のラビリンス→島自体が宇宙船→チャモチャ星へ、というヤケクソのような舞台。ヤケクソなイートーマキマキとか、F頭大丈夫か。モチーフとしたミノタウロスの迷宮ってどれだけの子供が知っているのか。作者の教養と視聴者のリテラシーの乖離。家族旅行のスナップ写真を写すエンディングはすごく好き。
 好み:B

■15 1994 のび太と夢幻三剣士

 ドラ:1 ドラモン。四次元ポケットを封印。「かくしボタン」を押しちゃう。
 のび:2 ノビタニヤン。歴代最もかっこいいのび。中途半端に黄色いシャツが見えている上に、白銀の装備をつけているのも、いい感じ。
 しず:2 シズカリア王女→シズカール。大活躍。男装を隠して入浴。ビッグライトを適切に活用。そして結婚。あたかもドラ映画大団円のような。
 ジャイ:0 ジャイトス。三剣士カウントされているくせに、後半マイクロアンテナホクロを外して登場ゼロ。
 スネ:0 スネミス。上に同じ。
 ゲスト:1 シルク/妖霊大帝オドローム/トリホー/竜。「がんばってー!」と右手左手をテキトーに動かす妖精シルクの可愛さ(ミクジン的な)。が、実は似たサイズのトリホーが、本質的なゲストキャラといえるのかも。
 メモ:原作を描けなかった「パラレル西遊記」の「ヒーローマシン」のやり直しとしての「気ままに夢見る機」は、より生死に深く関わる。
 好み:A

■16 1995 のび太の創生日記

 ドラ:0 道具出しただけ。というか「創世セット」なんてもん出しちゃいけんだろ。とりわけのび太には。
 のび:0 徹頭徹尾傍観者にして要らぬちょっかいを出す、ダメな神様。……いや、神って本来は……?
 しず:0 本作を通じて学びを深めたらしい唯一の人物。宗教戦争のくだりで「どっちも神様のためにと言いながら殺し合ったのよ。あたし、そんなこと頼んだ覚えもないのに」とか、エンディングの「戦争の絵はむずかしいので描きません」とか。「描けません」ではなく「描きません」としたところに、しずを通じたFの主張を感じる。
 ジャイ:0 四畳半島にて拉致。
 スネ:0 四畳半島にて拉致。
 ゲスト:0 ノンビ→ノビ彦→野比奈→野美のび秀→ビタノ/スネ麻呂/出木松博士/源しず代/チュン子/エモドラン/大統領。細切れすぎて魅力なし。元のキャラの魅力に依存。
 メモ:全員0点。本来徹頭徹尾右往左往七転八倒することで魅力を発揮するはずののびが、もしも「神の視点」を得たら。SF短編の創世記テーマをドラ映画で発揮してみた、異色作。「T・Pぼん」のような啓蒙的な連載であればいいが、一本の映画では不可能な挑戦だった。出木杉ウォッチャーとしては、「多奈川絵巻」という、子供にとってハイレベルかつ、絵巻という大人の喜びそうな自由研究を達成するくだり、過不足なくて嬉しい。その対比としてだが、先生エンドロールの合同自由研究を高く評価していたが、どういう気持ちで。にしても、昆虫人を、箱庭の中の箱庭に招いて、それでいいという、どうかしとる話。詰め込み過ぎなフェッセンデンの宇宙。
 好み:B

■17 1996 のび太と銀河超特急

 ドラ:0 予告なく未来にて三日も行列に並び、律儀に三日後に帰ってくる。またも四次元ポケット使えず。
 のび:2 射撃の天才の面目躍如。
 しず:1 真空ソープが弱点だと発見。
 ジャイ:0 壁抜けの術。
 スネ:1 乗っ取られ。「のび太って映画になると急にカッコいいこと言うんだから!」
 ゲスト:1 車掌さん/ボーム/アストン、ドン、ジェーン/ヤドリ。車掌さんの可愛さくらいか。
 メモ:ミステリートレインat宇宙、あるいは「銀河鉄道の夜」meetsテーマパーク。西部、恐竜、忍者、メルヘン、怪奇幻想、禁断の星。Fの多趣味パッチワークで、浅めにたくさん楽しめる。
 好み:B

■18 1997 のび太のねじ巻き都市冒険記

 ドラ:0 故障PART3。
 のび:1 種まく者の「教育ドリーム」っぽい感応力で啓蒙される。
 しず:0 提供したぬいぐるみ多数。
 ジャイ:0 土建屋の環境破壊を批判されてショボン。
 スネ:0 スネ夫モーターズの環境破壊を批判される。
 ゲスト:2 パカポコやピープやウッキーたち/種まく者/熊虎鬼五郎らクローンの社長およびホクロ。「創生日記」ほどではないにせよ不活性なメインキャラを尻目に、前科百犯の脱獄犯が一番活躍する珍しい映画。種まく者は、36億年という単位で思い付きを発揮する、ギリシャ的・ラヴクラフト的神。これがFの到達点と思えば感慨深い。発端となったパカポコは空気だが、「そういう性格」だったんだろう。
 メモ:死に瀕した作者が、ねじをまけば生命が宿るんだという話を思いついたことの、軽さだか重みだか。劇中は結構つまらない左右移動が行われて飽きるあたり、宮崎駿「君たちはどう生きるか」っぽくもあって、おふたりとも上下や奥行きではなくて二次元の左右を行ったり来たりするのだなと、つい結び付けてしまう。
 好み:B

■あとがき

採点してみる。
満点で 2×18=36
ドラ 13点
のび 24点
しず 14点
ジャイ 7点
スネ 8点
ゲスト 23点
圧倒的主人公のび。
実はドラより明晰なしず。
ジャイとスネは扱いが似ていたり、作品単位で突出したり。
予想としては、2期3期と均されていくのではないか。

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