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【能】渋谷能 『落葉』(金剛流)

2023年1月13日(金)、渋谷のセルリアンタワー能楽堂で、渋谷能の第三夜が開かれました。渋谷能の今年のテーマは『源氏物語』。文学好きの私にはたまらないテーマだったので、続けて観ています。

第三夜の演目は金剛流の「落葉」です。「落葉」は金剛流にしかない曲だそうです。しかも、金剛流は京都に拠点をおき、東京での公演は少ないでしょうから、観ることが出来て、すごくラッキーでした!
なお、渋谷能は文房具の「コクヨ」プレゼンツで、参加すると手帖とペンが貰えます。

■「落葉」の簡単なあらすじ

1.源氏物語での部分
源氏物語でいうと第三十四帖「若菜上」以降の話のようです。兄の朱雀帝から女三の宮を託された光源氏。そして、妻(女の二宮・落葉の宮)がいる柏木は、女三の宮に横恋慕してしまう。※女三の宮は、女二の宮の異母妹。

2.能において
小野の里(京都市の北、大原あたり)で、女二の宮が、夫の柏木が自分の妹の女三の宮を深く愛していた事、柏木の死後光源氏の息子の夕霧が落葉宮のもとに通った事などを語ります。

■シテ・ワキ・能面・衣装などについて

・シテは、金剛流の宇髙竜成さんでした。12月の事前説明会にも私は参加させて頂き、宇髙さんの解説を伺いすることが出来ました。
・能面は「孫次郎」でした。
・衣装は、前場は唐織の着流し、後場は長絹、大口でした
・宇髙さんは、「女二の宮(落葉の宮)は、置かれた立場や運命の流れの中で、自分のことを自分で決められなかった女性」と仰っていました。なるほどと思いました。そして、アフタートークの中で、友枝雄人さんが、「(置かれた状況の中で)清楚に生きた女性」とも仰っていました。
・ワキは、有松遼一さんでした。シテやアイとの会話を受け止め、回向を行う姿が、しっかりとされているように感じました。
・囃子は太鼓が入らない「大小もの」でした。

■詞章について

1.出て来た歌
・諸葛 落葉を何に拾ひけん 名は睦ましき かざしなれども
→配布資料の慶應大学の高橋悠介さんの解説によると、賀茂祭で桂と葵を両方挿す「もろかづら」に絡めて、姉妹の両方のうち、どうして女二の宮=落葉を拾ってしまったのかという、残酷な含意のある歌
・山里の あはれを添ふる夕霧に 立ち出でんかたも なきここちして
・横笛の 調めはいとど変はらねど 空しくなりし 音こそ尽きせね

2.個人的に心に残った部分
・波と草とにかはれども 枕や同じかるらん → 海路の波枕、陸路の草枕
・惟喬親王の皇居
・横川の峰 → 比叡山
・この落葉の宮と申すは 女三の宮と枝を連ねし 女二の宮のおんことなり
・さやけき月に 妄執の夕霧 身ひとつに降りかかり 目もくれなゐの 落葉の宮は せんかた涙に むせびけり
・されども逆縁の み法を受けて 罪咎ももろき 落葉の音は ほろほろはらはらと 時雨に交じりて 

■その他

・柏木が女三の宮に一目ぼれする場面 → 何回か聞いたことがあり、『源氏物語』の名場面の1つなのでしょう。猫が出てきます。
・能楽堂の北の方向(流派によって考え方が異なる)、金剛流では鏡の間が西?
・扇の使い方 → 春夏秋冬。ここは面白そうで、もう少し勉強してみたいです。
・序ノ舞、破ノ舞 → 能の鑑賞も何回目かで、落ち着いて鑑賞出来ました。
・能に陀羅尼落葉という演目がある。
・能『定家』、式子内親王と藤原定歌

後で追記するかもしれませんが、以上です。

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