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寂聴さんから教わったもの


小説嫌い?


『美は乱調にあり』『青鞜』『手毬』……

読んだものは10冊程度に過ぎない


私は、自分の人生ドラマで精いっぱいで

人のつくった物語などにはあまり興味が持てないし

読む暇のない日々を送ってきた

と思っていた。


でも、それは間違いだった。


そこには自分と響き合う感情があり

言葉にすらできずに通り過ぎてきた

時々の思いが刻まれていた


それが小説というものだった

寂聴さんの書く小説だった

寂聴さんの、伝記小説が好きだった。


初めての四字熟語


10年以上前になるが

苦悩を表す多くの言葉と出会ったのは

エッセイや対談本などだったと思う。

仏教には「四苦八苦」という苦しみの呼称があり

「四苦」は生・老・病・死の四つの苦しみ

「八苦」は、四字から成る四つの状況を加えたもの。


例えば、「愛別離苦(あいべつりく)」は愛する人との別れ

死別も壮絶だが、生き別れの場合もあるだろう

「求不得苦(ぐふとっく)」は文字通り求めて得られないことの苦悩

愛情だったり、才能だったり、お金だってそうだ。


「怨憎会苦(おんぞうえく)」

嫌な上司と毎日顔を合わさなければならないとか

まずくなった夫婦の冷たい関係とか。


「五蘊盛苦(ごうんじょうく)」

感性や、思考や、知識や、肉体があるゆえに起こる苦悩

これが一番解釈が難しいと思う、執着などもそうかもしれない


こうした言葉との邂逅が

人間の苦しみの多様さに気付き

捉えがたい真の姿を

見据えるヒントにもなった気がする。


命を生ききるために


数々の有名人が、

あるいは法話を聞きに集まる多くの人たちが

人生に何事かあるときに

寂庵を訪れては何かをつかんで帰られるのも分かる気がする。


つまずかない人などいないのだ

仏の 眼差しに見透かされたり、励まされたような気持ちになって

また、人々は歩き続けるのだろう。


寂聴2


寂聴さんが亡くなってしまったと思うと寂しい

けれども、私たちには一生掛かっても読み切れないほどの

寂聴さんの著書がある

また、折々に、大切に読ませていただこう。


そして、きれいな月夜には

月に向かってこっそりと語り掛けてみたい。

                        2021.11.13







創作の芽に水をやり、光を注ぐ、花を咲かせ、実を育てるまでの日々は楽しいことばかりではありません。読者がたった1人であっても書き続ける強さを学びながら、たった一つの言葉に勇気づけられ、また前を向いて歩き出すのが私たち物書きびとです。