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83  死海に沈む夕日 かっこちゃんへ

83  死海に沈む夕日

 ヨルダンにいます。

 かっこちゃん、ヨルダンは朝の4時。
モナの森では午前10時だね。

 ようやくここまで来られた。

いつもはイスラエルから死海を眺めるホテルに泊まり、
ヨルダンから昇る朝日を見ながら、かっこちゃんに手紙を書くのだけれど、
今回は、ヨルダンからイスラエルに沈む夕日を見た。

 37回目のイスラエル。
29歳で初めて訪ねてから36年の時が流れた。
長いようで、あっという間に過ぎ去ったようにも思える。

 たくさんの出会いがあって、僕の人生を彩ってくれている。
僕は、イスラエルを訪れるたびに、生きていることがなつかしくなるんだ。

 ニュースでイスラエルがパレスチナの人を殺しているという報道が流れると、
いったい現地ではどんな風になっているのだろうかと気になる。
イスラエルに住む友だちはどうしているだろうかと思う。
 愛してやまないトルコ航空が諸般の事情で、イスタンブールからテルアビブに飛ぶ便を運休させると発表になった。
それはないでしょう。
 ずっと前から予約して、席を押さえて、30人の仲間がお金も振り込んで待っていてくれているのに。
ひとり一人が、10日間という人生の貴重な時間を持ち寄って創る旅。

   時間=いのち

みんなのいのちを預かって創造する。
そんなみんなと一緒に創り上げる聖なる一度きりの芸術作品。
それが僕らの旅。
ね、かっこちゃん、そうだよね。

 さあて、どうしようか。
でも、「中止」という選択は僕にはなかった。
延期をしたら、今回参加することを決めた人の中でいけない人がいるに違いない。
ずっと楽しみに待っていてくれたのだから。
だから、どうやって行くかを考えたよ。

 こんな風に考えて、そして、動くことができるようになったのは、
かっこちゃん、あなたのおかげです。

 この前の手紙にあったね。
宮沢賢治さんとの対話の本をつくっているときに、

「なんと5回も一から作り直すと言うことがありました。
赤塚さん、それは、今までしたことがすべて徒労に終わったような、砂山が崩れ落ちてしまったかのような、軽くではあるけど絶望感に襲われます。もうどうしたらいいの? どうしてくれるの? みたいな感覚です。
でも私はきかんぼうなので、しかたないよとまた結局は設定からやり直し始めます。そして、五回直して今わかることは、やはりすべてにサムシング・グレートが働いていたのだと確信するのです。
気がついていなかったけれど・・・すべてが大事だったんだとわかるのです。
赤塚さん、本を書いたり、お話をさせていただいていると、少なからず私の使った言葉だったり、考え方に批判というか、疑問で、メールが届いたりするものですね。
そんなときに、こうして赤塚さんからメールをいただいたり、自分もまたどんな意見にも耳を傾けながらいる姿勢がとれているのかと振り返ることができたりして、サムシング・グレートがこの批判もなぜ必要として用意してくださったのかと考えることができるものですね。そう思うと、この批判や批判をくださった方も、自分にとって、水晶のひとつなのですね。道端の石ころひとつも、きっと中でちらちら美しくいのちを燃やしているのでしょうね。」

 どんなにびっくりしたことでしょう。
5回も最初からやり直さなければならなくなるなんて。
僕ならとっくに投げ出してしまうところだよ。

「ふん、こんなにうまくいかないなんて、きっとやらないほうがいいっていう
 神さまのメッセージなんだ」

そんな風に、できない理由をうまい具合に作り上げてさ。
言い訳考えて、楽になろうとすると思う。
 でも、かっこちゃんはやっぱりこう言うんだ。

「すべてはいつかのいい日のためにある」って。

  もう18年も前のことになる。
この文通でも話してきた、初めて一緒にイスラエルに旅したときのこと。
かっこちゃんをイスラエルに連れて行きたくて、その前の年にバリ島まで誘いに行った。
 そのころかっこちゃんは学校の先生だったから、夏休みにしか長い旅には出られなかったよね。
 「行きます」と、言ってくれて嬉しかった。 ありがとう。

 5月の旅の前の2月、イスラエルに行った。
訪ねる場所、そして現地を案内してくれる日本人のガイドさんの手配。
祈りながらまわった。
「いいふうになりますように」ってね。

 しばらくしてレバノンからイスラエルに向けて、ミサイル攻撃が始まったって報道。
5,000発を超えるミサイルが発射された。
連日TVも新聞も戦争が始まったような大騒ぎ。
そう、ちょうど今起きているハマスとの争いのように、ヒズボラというテロ集団からの攻撃のことを伝えていた。
 ごはんを食べながら見る画面を戦車が横切る。
そして、だれもイスラエルに行かなくなった。
 イスラエルに住む日本人は、イスラエルを離れてしまい、僕が頼んだガイドさんも日本に帰国してしまった。

 かっこちゃんは、学校の校長先生にイスラエルにいくなら教師を辞めてください、と言われた。

 でも、かっこちゃん
僕たちはあきらめなかったね。
数名の仲間が家族やまわりの人の反対でキャンセルしたけど、
ほとんどの人たちがついてきてくれた。
 たどり着いたイスラエルの空港で待っていてくれたのは、
たった一人残った日本人ガイド、榊原茂さん。
そう、バラさんだった。

 かっこちゃん、この手紙を書いているホテルの窓の向こうに死海があって、
夜明け前の暗がりで遠くイスラエルの灯りがゆれている。
 いよいよ今日、バスで国境まで行く。
そして、バスを降りて歩いて国境をわたってイスラエルの地を踏みしめる。
そこには、僕らの仲間、日本人ガイドのくにこさんが待っていてくれる。

 少し手間取ったけれど、約束の地に入るよ。

 僕をイスラエルに導いてくれた、糸川英夫博士。
キリストの霊を打ち込んでくれた、高橋恒男先生。
12年間一緒にイスラエルを歩いてくれたバラさん。
今回も一緒に旅をしてください。伴ってください。
そして、
キリスト、イエスよ
新しい仲間たちを紹介するから出会ってください。

 夜明けが近いよ。
かっこちゃん、荷物をまとめてイスラエルに向かう。
今日は「紀元節」日本の建国の日だ。
神さまのサインを見落とさないよう、しっかりアンテナを立てていくよ。

 また、イスラエルから書きます。
               高仁

 追伸です。
9月にかっこちゃんを連れていくのを楽しみにしているヨルダンのペトラ遺跡。
8年ぶりに行ってきました。
インディージョーンズ「最後の聖戦」の舞台にもなったから映画でも見られる。
でも、実際に歩いてみよう。
 きっと、びっくりするよ。 
そしてね、今回、ヨルダンの素敵なガイドさんと友だちになった。
 やっぱり、すべていつかのいい日のためにあるんだな。

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