マンチェスターユナイテッド対ブライトン試合レビュー

 エリック・テン・ハーグのもとで再び築き上げたオールドトラフォードという要塞は、イタリア人監督のモダンフットボールによって崩れ去った。

 サッカープレミアリーグ第5節、マンチェスターユナイテッド対ブライトンは、3-1でブライトンの勝利。ブライトンはこれでユナイテッド相手にリーグ戦で5試合連続負けなし。ユナイテッドにとって、ブライトンへの苦手意識を決定づけるような印象深い試合となった。

 前半の立ち上がり早々はユナイテッドがこれまでと違う4-4-2の中盤ダイヤモンドで奇襲を仕掛け、ブライトンのペースを乱すことに成功していた。

 しかし試合はウェルベックが前半20分のワンチャンスをモノにするとそこからは一気にブライトンペース。三苫の1ミリならぬラッシュフォードの1ミリとも呼べるような惜しい場面もあったが、これはVARの結果1ミリならず。これにより、期待されたホイルンドのプレミアム初ゴールも次節以降にお預けとなった。

 その後もユナイテッドは、ラッシュフォードとブライトンのRCBファン・ヘッケとの勝負で生まれる個の優位性を活かして何度もゴールに迫っていたが、結果としてはノーゴール。そしてそのまま試合は前半終了した。

 後半がはじまっても試合はブライトンペース。53分にはこの試合で何度もビルドアップに顔を出してユナイテッドによるプレスからの回避に効いていたドイツ人MFパスカル・グロースが、見事なキックフェイントでリサンドロ・マルティネスをいなして追加点。実況にもあったが、彼はユナイテッドキラーとしてほんとうに恐ろしい存在となっている。

 その後もユナイテッドは悪い流れを断ち切ることができず71分にもゴールを決められ3失点目。スタジアムではホイルンドに代えてマルシャルを投入するという采配にブーイングまで起きた。

 ユナイテッドは期待の20歳、ハンニバル・メイジブリが強烈なミドルで1点返したことで反撃のムードがスタジアム全体にも少し立ち込めたようにも思えたが、試合はそのまま3-1でブライトンは勝利して終了。ブライトンはこれで5戦4勝を記録したのに対し、ユナイテッドは5戦2勝のみと両者が抱える立場の違いが明確になってしまった。

 ブライトンは三苫のゴールが8月の月間ベストゴールに選出され、バルサの至宝アンス・ファティもこの試合でデビューするなど、クラブとしての格というものがあるのならば、それを着実に上げている。いまやブライトンは欧州でも注目されるクラブの一つになった。

 しかしそれとは逆に、ユナイテッドは悪い意味での注目が目立ってしまっている。グレイザーというピッチ外の問題、サンチョ・アントニーの問題、そして続出する怪我人に、決して大成功とは言えなかった移籍市場。この試合の終盤にブルーノ・フェルナンデスがCBの位置に下りたことも、それが単に戦術的な意味合いだけの采配であるかは疑問である。

 まだ5節ではある。しかし近年のプレミアムリーグで優勝争いをしたいのならば、序盤からでも落としても構わない試合は1試合もない。もはやすべての試合に勝つという気持ちでシーズンに臨まなければ優勝は難しいだろう。

 「まだ5節」か、それとも「もう5節」か。それぞれのサポーターが見据える目標によって、その印象は変化するはずだ。そしてもしもブライトンサポーターが「もう5節」と考えるのならば、それは彼らが本気で今シーズンのCL出場権以上を狙っているという自信にほかならない。


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