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器の小さいあの人

【登場人物】

関係機関Aの彼

僕の休職した理由の一つに仕事で関わる関係機関Aの一人が高圧的な態度を取ってきた、というものがあります。

彼は私よりも20歳以上年上で、最初の印象はおどおどしているというか、自信なさげな感じに見えました。
僕ももちろん休職するような人間ですから自信に満ちたような人間ではありません。彼には、少し親近感を覚えていました。

そんなある日、僕は彼といつものように仕事に関しての電話を交わしていました。関係機関Aとは違う関係機関Bとの連絡調整、またその関係機関Bのあまりの杜撰さに嫌気がさしていた僕は彼につい強く当たってしまいました。

そして後日、僕は彼に無理なお願いをしなければならなくなりました。それも関係機関Bの雑な仕事が原因です。無理なお願いですから、もちろん下からへりくだるようにお願いしました。それが、彼を調子に乗らせてしまったのでしょう。
そこからの彼は今までのおどおどっぷりが嘘のように不遜な態度を僕に取ってくるようになりました。
期限通りに連絡をしても「遅い」と怒鳴り、「いい加減にしろや」(原文ママ)と威圧する。もちろん僕は嫌な気持ちになるわけですが、それは恐怖というよりは汚物に触れたような嫌悪でした。

そのあまりの迫力のない怒号と、元々のおどおどした口調が相まって、あぁ彼は少し自分の自尊心が脅かされただけで怒り狂う器の小さい人間なんだな、とものすごく気持ち悪くどうにもできないものを見た気持ちになりました。彼は50代です。もうこの先に未来はないでしょう。こんな汚物を抱えている関係機関Aが可愛そうになるくらい、彼の姿は惨めでした。

器の小さい人、という言葉が彼には一番しっくりきます。正直言って可哀想です。彼はこんな二回りは年下の若者に少し刺激されるだけで砕けてしまう程度の自尊心しか50年以上の人生で持ち合わせることができなかったのです。普通に愛し愛されていれば、平凡に培われるはずだった最低限の自尊心さえ彼は持っていないのです。本当に、お悔やみ申し上げます。

けれどそんな彼を馬鹿にできるほど僕もレベルの高い人間ではありません。そもそも休職してしまっていますし、彼の器の小ささから生み出された悪意、そこから生み出された嫌悪に耐えきれなくなったのは僕の方だったのです。こんなどうしようもない人間とこれからも連絡を取り続けなければいけないのかと吐き気がしてしまって耐えきれなくなったのは僕の方なのです。

どうしてこの話を今書く気になったかというと、休職を経て僕の心がそれなりに落ち着きを見せてきたこと。今一度文章に起こせば頭も整理できるのではという狙いがまず一つ。

もう一つは、彼のことを最近よく考えてしまうからです。休職が明けてまた彼と話すことになった時、また彼が僕に暴言を吐いてきた時、その嫌悪感に僕は耐えられるのか。僕も彼と同じようにおどおどながら気色悪く言い返したりしてしまうのではないか、と心配になるのです。
そもそも仕事を変えてもらえばいいのではないかと思うが、そんな器用な職場なら最初から休職などしていません。
彼の暴言を『不快に思っている』と、誠実に伝えられればいいのだろうか?と考えもしますが、僕がそれを冷静に実行できるかは微妙な気がします。人に頼る、ということもありかもしれませんね。一緒に話してもらうとか。
方法は思ったよりいろいろありそうです。

ということで、器の小さいあの人の話でした。
僕自身自覚はないですが、彼の暴言が堪えている、彼という矮小な存在に嫌悪感を抱いている時点でそんなに彼と変わらない存在なのでしょうね。
僕もまた彼から見れば器の小さいあの人ということです。

とにかく今は休職を脱却すべく、心身を整えるのみです。
転職活動もしているのでそっちが実れば御の字ですかね。


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