michiru

歌手。作詞家。小説家。生きづらさをフィクションに変換して生きています。

聖少女被昇天

美しいむすめの曲線に寄り添うことなかれ
ペーパーナイフで薄皮を剥ぐように撫でるのはおよし
くるぶしに知恵の実を隠したまま飛んでしまったから地上には謎の棲む
残された疑問符にメロディをつけるあわれよ
風に立つシャンプーの残り香が青空にいつまでもこびりついている
土を濡らした雨粒が雲に戻ってゆくだけの離別だよ

2016年

夜明けの猫より大切なもの

今夜もあやつは帰ってこないのだろう。取引先との飲み会だの何だので、二軒三軒ハシゴして、始発ならまだ良い方だ。最近は飲みに出るともっぱら外泊で、翌日の服はユニクロで調達。二十七の男がそれで良いのか、と呆れる。
 私はといえば、茹でた枝豆に塩を振りながら、昔だったら涙で味付けをしたなと思っていた。交際七年目ともなると、彼氏の不在も怖くない。こんなときはひとり晩酌をして、都心のどこかから来たり来なかっ

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M嬢の物語

ママは誰も好きじゃないの 
魔昼の倦怠が好き

丸い石が好きなパパは
間違ってあたしを抱くの!

真が夜にあるものなら
まるでこれが正しいみたい

巻きついた髪をほどくとき
真っ白な顔で謝って

マリア・カラスみたいに
歌えたらいいと思ったこともあったわ

街はガラスみたいだから
壊れちゃえばいいってね

巻いたタネはどこへ消えた
真夜中 鏡が嗤う

目蓋なぞる指が

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イエスタデイ・ストップモーション

手を繋いだら
新しい国へ行けそうな 
そんな匂いをさせてた 

生まれつき茶色の髪 
そんなの嘘さ 化粧上手
でも笑うとえくぼ綺麗だね

明日には他人同士でも
いまだけ最高のふたり
好きなことして遊ぼうよ
きたない電車にのりこんで

目を凝らしても
新しいものはなさそうだ
そんな毎日生きてた

運勢を占ったり
そんなの嘘さ 予定調和
でも奇跡は僕に舞い降りた

明日には名前

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窓辺から

煙る雨の十字路
二階から見ていた 
ため息すら曇るよう
本も開かない

あの日待ち合わせたふたり
君はこなかった
愛し方間違えた僕の
革のコートが濡れただけ

交差点 行き交うのに
みんな うまく歩くもんだな
すれちがう人生のよう
誰もかれも背をすぼめ

すべて恋のまぼろし
過ぎてから気づいた
赤すぎる嘘をつく
君を抱いた僕

ふいにいなくなった人は
いまどこにいる

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