5.彼女

足早に家を出て向かった先は携帯ショップ。

Nokiaの時代錯誤な携帯とトップアップ式のシムを購入し、グチャグチになったメモを開き直した。

私は果たして何に巻き込まれてしまったのか。何も知らないというのは、ある意味好奇心をそそられるところもある。

Hello. I’m.

すぐに返信が来た。
しかしながら非常に打ちづらい…英語で打つと予測変換をしてくれるので、英語で会話した方が幾分ましだろうか…などと思案する間にどんどん長文が来た。返信する間も与えられないので、暫く眺めることにした。

明日朝近くのブレックファーストをやっているお店で会おう、という内容だった。

その夜、彼女は昨日の通り遅い時間に帰ってきた。老人何か話しているようだが内容までは聞こえない。
毎日遅く帰ってきているのは、わざとかもしれない。そういう自分も出来るだけ時間を潰して帰ったから。何とも、安心出来ない家など家の機能を果たしていない。
早く次の住処を見つけねばならない。
明後日には出ていかなければならないから尚更だ。何故一階の電気はついていないのか。何故隣の部屋同士で自由に話せないのか。何故夜息を潜めていなければならないのか。老人に見張られているのだろうか。老人は一体何者なのか。色々な想像が膨らむ。少し焦りもある。早く明日彼女に会い、状況を明らかにしたい。

この閑静な住宅街の一角のこの館の悍ましさを。


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