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友達のお母さんに“尻叩き”をお願いしたら、リモートワークが捗った話

自由な働き方の代表例とも言える「リモートワーク」。でもリモートワークって監視の目が無い分、ダラケちゃったりしませんか…?この記事では、自分に甘く、ときには日が暮れてから仕事をダラダラ開始していたぼくが、友達のお母さんに「尻叩き」をお願いしたところ、「劇的に仕事がはかどった」という話をしたいと思います。

※当記事における”尻叩き”は「発破をかける」という意の慣用表現として用いられており、体罰を推奨するものではありません。


管理型の大企業 vs 自由すぎるスタートアップ

Veriff勤務時代

<エストニアのスタートアップでの一枚>

本題に入る前に少し自分の過去の話をさせてください。ぼくはエストニアに移住する前、外資系のコンサルティングファームで2年間勤務していました。「外コン」と聞くとバリバリ働くイメージをされる方がいらっしゃるかと思いますが、ぼくの勤務先も例外ではなく、毎日かなりのプレッシャーを浴びながら勤務していたことが記憶にあります。

厳しいながらも愛のある上司に恵まれ、日々割り振られたタスクを必死にこなす。そんなコンサルティングファームでの日々は、「プレッシャーがある分、頑張れる環境」でした。

さて、その後エストニアのITスタートアップ・Veriffに勤務することになり、エストニア移住を決めたわけですが、それを機に「働き方」が大きく変わったのです。

個々の裁量権を大きく認めるエストニアでは、各々が自由に仕事を進める文化が根底にあります。「成果させ出せば文句は言わない」を地でいくカルチャーで、集中するために仕事中に音楽を聴くことは当たり前。リモートワークも当たり前のように認められていて、自由に働いている姿に最初は驚きを隠せませんでした。


自由な働き方の負の側面

ところが、働きはじめてから数ヶ月すると、自由な働き方の負の側面にも気づきます。

・出社時間が決まっていないから、昼過ぎから出社しても怒られない
・何ならリモートワークも認められているから、出社しなくても問題ない
・タスク管理は自分で行うから、本来自分が発揮できるパフォーマンスの7割、8割しか出せなくても、期待値さえコントロールできていれば問題ない
・職場でSNSを見ていても誰も気に留めないため、ついつい無駄な時間を過ごしてしまう

最初の試用期間の4ヶ月間こそ「解雇されるまい」と必死になっていたのですが、その試用期間も過ぎて無事正社員になると「自分に対する甘え」が大きくなっていくことに気づきました。そこそこの成果は出せていたものの、常に「自分はもっとできるのになあ」という葛藤に苛まれる日々が悶々と続いていたのです。

その後Veriffを退社して(念の為、クビではなく円満退社です笑)、現在のSetGoの立ち上げ、blockhiveの事業開発を任された時も、最初こそ与えられたミッションに必死になって取り組んでいましたが、やはり数ヶ月もすると自己責任文化・リモートワーク中心の日々の中で、「ダラけ」「甘え」が生まれていることに気づきました。

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<blockhiveのエストニアオフィス>

原因は割と明確で、「適度なプレッシャーの不足」でした。コンサル時代は常に客先で勤務をしていて、厳しい視線を向けられていたため、(厳しい)プレッシャー下にありました。一方で現状は自由な環境下に甘えて、(試用期間やサービス開発期間を除いて)プレッシャーを自分にかけきれず緩んでいたのです。

例えば、コンサル時代は毎朝「朝会(モーニングスクラム)」を開催していて、各メンバーがその日に行うタスクを発表し、役割範囲を明確にする、という会を行っていました。このことで、ピア・プレッシャー(集団内の相互監視で生じる同調圧力)が作用していた状態だったのです。

ただ、このピア・プレッシャーを再現するというのは中々難しいもの。以前も仲間内数人で「運動したら報告をして褒め合う」というグループを作って運用していたのですが、始めのうちは機能したものの、しばらくするとみんな投稿の頻度が少なくなり、そのうち自然消滅してしまいました。
これは「みんなやっていないから」という負の同調圧力が作用してしまい、「継続面」で問題があったからと理解しています。

そんな悩みを親友である木村新に相談したところ、「ある提案」をされました。(お待たせしました。ここからが本題です。)


尻叩き役はお母さん!?

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<親友兼ウクレレの師匠である新さんとの一枚>

「今のアレックスに足りないのは尻叩き役だよね。だったらうちの母親にお尻を叩いてもらったらどう?

新さんに相談すると、こんな提案をされたのです。最初は「自分のお母さんに親友の尻を叩かせるなんて、何を言っているんだコイツ」とすら思ったのですが、確かによくよく考えてみると、

・かつて日本時代には上司や同僚がある意味での尻叩き役だったが、自己管理がベースの今の会社ではそういったカルチャーが希薄
→今の自分に足りない「適度なプレッシャー」をかける役割として、監視作用が働く尻叩き役がいるのはありがたい

・尻叩き役は、短期的ではなく、継続的に管理してもらわないと仕組みとして成立しない
→同年代の秘書や学生さんに管理役をお願いすることもできるが、転職・就職などのイベントが多く、継続性に不安
→その点、専業主婦である"お母さん"は比較的時間があるようで、継続性という観点でも安心

・お母さんは新さんの子育てを通して、時には恨まれながらも「尻叩き役」を貫いてきた存在
→つまり「尻叩き役」のプロフェッショナルなのでは?

と整理できたのです。

確かに、誰しもがお母さんに「宿題やったの!?」「いまやろうと思ったところ!!」という会話をしたことがあると思います。あれは「尻叩き」以外の何ものでもないですよね。

更に新さんのお母さん(面倒臭いので以下“お母さん”とする)は、サイパンと日本を往復する日々の中で、オンラインでもできる仕事を探している、という渡りに船な状態。

大人になってまで「実の母に尻を叩いてもらう」というのは恥ずかしさの極みではある一方、「尻叩きのプロフェッショナル」として母親世代に依頼するのはありかも…?と思って、まずは試しに2週間お願いしました。

ちなみに、新さんと”お母さん"がこのビジネスを立ち上げたお話はこちらのnoteに記してあります。


ぼくと"お母さん"のルール

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“お母さん”には以前サイパンに遊びに行ったときにお会いしていたので初対面という訳ではなかったのですが、存在こそ認知されていれど、ぼくがどんな仕事をしているのかちんぷんかんぷんな状態。

なので、最初に1時間ほどざっくりと今行っている仕事の説明をして、ぼくのタスクに対する解像度を上げるという会を挟みました。加えて管理の仕方を相談。「コンサル時代の朝会と報告会を再現したい」ということを伝えると、以下のようなルールになりました。

・毎日出社時にその日のタスク予定を報告
・退社時にタスクの進捗を報告

・基本的には100%できるタスクのみをその日のタスクとして設定する
※ただし差し込みタスクが入ることも想定されるため、その辺りは柔軟に

・前日未完了のタスクがあった際などは、翌日以降のタスクに反映されているかを”お母さん”側からリマインドする

ぼくは元々タスク管理をMacbookのメモ帳でしていたので、フォーマットを相談しながら、毎日のタスクを送り始めました。それがこちら。

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ちなみに記号の意味は以下のとおりです。
☆優先度高 ○対応中 ●対応依頼中 ✓完了 ・未対応 ○対応中 


※契約時にNDA(秘密保持契約)を締結していますが、コミュニケーションの際は、クライアントの社名や機密情報は伏せています。

また、その日の最初に

・その日の作業時間
・いまやっていてうまくいっていること(Keep)
・逆にいま課題に思っていること(Problem)
・その課題に対する解決策の仮説(Try)

を明確にするようにしました。

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作業時間を明確にすることで、延々と作業をするのではなく、きちんと終わりの時間を意識する。そして日々の課題を明確にすることで、「カイゼン」のサイクルを早くすることが意図としてあります。

仕事終わりには、その日完了したタスク・できなかったタスクと、一言コメントを加えて報告をしています。

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<この日はサービスリリース当日で特にタスクが多かった日です>

ちなみに、あくまでもタスクの進捗を管理をしていただくものなので、実際のクライアントワークに入っていただいたり、いわゆる秘書的な役割を担っていただくことは想定していません。あくまでも「尻叩き役」として、ぼくのモチベーションを向上化・安定化するための役割を担っていただいています。


尻叩きがもたらした効果

さて、2週間のトライアルを終えると、明確な効果が現れてきました。ちょっとまとめてみます。

①仕事のアウトプット量が増えた

・「宣言した時間内に、宣言したタスクを終わらせないと」という適度なプレッシャーが働くようになった
・一日に行うタスクの範囲が明確になった
・チェックの数を少しでも増やしたいがため、退社直前の追い上げ力が上がった

②自分の課題や維持したいことを、確実に意識できるようになった

・Keep,Try,Problemを定期的に報告するため、日々改善ループが回っている状態になった
・定期的にKeepやTryのリマインドをしていただけるため、「そうだ、意識するんだった」という機会が増えた

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③タスクの構造化が進み、仕事の精度が向上した

・毎日タスクを整理するため、自分が何をやっているのか視覚化できるようになった(ただ、ここは割と元々できていた)
・タスクの見積もりと、実際の成果の差を毎日ベースで見られるため、タスク見積もりの精度が上がった
・定期的にリマインドしてくれるため、タスクの抜け漏れが減った

④飽きっぽい自分に、習慣ができた

・毎朝毎晩の報告が習慣となり、仕事にリズムが出てきた
・お金を払って「尻叩き役」をお願いしている分、自分としてもその対価を得たいから、ちゃんと報告する習慣ができた
・加えてペナルティがあるおかげで、モチベーションが低い日もちゃんと報告するようになった

⑤自己肯定感が上がった

・以前はダラダラしている自分に嫌気がさす瞬間が多かったが、ダラダラしている時間が減ることで、「自分ちゃんと頑張ったな」と思える日が増えた
→特に予定していたタスクをすべてチェックして退社するときの気分は格別で、最高に満たされた気分になれる
・また"お母さん"自体も一緒になって喜んでくれるため、ダブルで嬉しい

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<e-signリリースの日の"お母さん"からのコメント>

また、副次的な効果もありました。毎日カイゼンしたいことを報告する中で、業務外のことも柔軟に相談できるようになり「母の知恵」をシェアしていただける機会があったのです。栄養学的なものから、運動のことまでいろんなことをご提案いただいています。

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<ちなみにこの後本当にバイクを買って、今では毎日汗だくです>


尻を叩かれすぎて気づいた課題

もちろんうまくいくことばかりではありません。課題となることもありました。

①タスクの抜け漏れを毎日チェックされると、気が重くなる

ぼくは比較的タスクの管理は得意で、どちらかというと「モチベーションのムラ」が課題としてありました。そのため、「タスクが抜け落ちる」という課題はぼくにとってそこまで重要ではありませんでした。

当初、”お母さん”は「あのタスクは大丈夫ですか?」「このタスク、抜け漏れてないですか?」と細かく確認してくれていたのですが、「今やっているところ!!」という場面がいくつか発生してしまったのです。

こういう所まで再現されてしまうのが、逆に”お母さんの尻叩き”の醍醐味なのかもしれませんが、お互いのコミュニケーションコストが発生してしまっていたので、「週1でタスクの抜け漏れを確認する」方針に変更。以来はスムーズに連絡を取ることができています。

②緩い縛りを作らないと、結局ダレてしまう

毎朝毎晩に報告をする取り決めにしていたとはいえ、たまにサボってしまうしょうもない自分がいました。そのため「自分が報告をしなければいけない仕組み」を構築するために、「ペナルティ制度」を導入したのです。

これは木村家で元々導入されていた制度のようで、ぼくの場合は、「予定どおりの時間に報告ができなかったとき」「タスクの報告ができなかったとき」に罰金を支払うことにしました。

罰金とはいえ、これが”お母さん”の懐に直接入るようだとバランスが崩れてしまうので、別口で納めていく方式を採用しています。ちなみに金額は一回につき500円と、かわいい金額です。笑

更に、毎日カレンダーにその日のことを記録していただき、月の最後には振り返ることに。このことで、自分の1ヶ月のパフォーマンスを可視化することができるようになりました。

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*余談ですが、「自分の意志に頼らず、仕組みを作って継続をできる環境下に自分を置く」という考え方は、泉正人さんの「仕組み化仕事術 」という書籍を参考にしています。


③時差
これは当たり前といえば当たり前なのですが、ぼくは普段エストニア(日本と7時間差、夏は6時間差)、”お母さん”はサイパン(日本と-1時間差)にいるため、最大8時間の時差がありました。そのため、コミュニケーションが滞ることがちらほら。

ただこればっかりはしょうがないので、日本時間を基準にしながら「この時間までに朝の報告をする」という取り決めをして、その時間までに報告がない場合はリマインドをしていただく、という運用で補うことにしました。

朝の報告さえしてしまえば、あとはそのタスクに沿って仕事を進めるだけ。エストニアの夜の報告は、サイパン時間の深夜となるため、サイパン時間の翌朝にチェックしていただくことにしました。


「お母さんの尻叩き」が必要な人って実はもっといるのでは…?

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さて、ここまで読んでいただいてありがとうございます。既にお分かりの通り、ぼくは「自分に甘い人間」ですが、それでも良い意味で”お母さん”の力を借り、そして仕組み化することで、なんとかセルフマネジメントをしようと試みているところです。

そんな「母ちゃんの尻叩き」が一般向けにサービス化することになりました。ファーストユーザーとしては強くオススメしたいのですが、このサービスには向いている人そうでない人がハッキリしているんじゃないかな、と思っています。

▽向いている方
・20~30代の社会人
・スタートアップやフリーランスなど、自分に大きな裁量権がある中で仕事をされている方
・ついだらだらしてしまってタスクが終えられなかった経験のある方
・自分がやらなければいけないことはある一方で、モチベーションにムラがあり、それ故に成果や自己肯定感が下がってしまっている方
・新たな習慣を身につけたいと思っている方
▽向いていない方
・組織体制の整った大企業で勤めているなど、タスク管理がすでに仕組み化されている方
・マスキングしないといけない機密情報が多すぎて、タスク報告の効率が落ちる方
・すでに習慣化する能力のある方

→そういう方は現在の環境を軸にしながら、場合によって秘書さんをつけたり、業務の一部をアウトソースする働き方のほうが合っているかと思います!

リモートワークが一般的になり、更にフリーランサーとして働く方が増えている昨今。そんな中だからこそ、自分で全部頑張りすぎず、自己管理を一部アウトソースして、自分のモチベーションを保つという働き方があっても良いんじゃないかな、と考えている次第です。

サービスに興味があるという方は、是非 木村新 のTwitter DMからお問い合わせください。「こういう部分ってどうしているの?」という方はぼくにDMをいただければお答えできる範囲でお答えします。

さて、今日は母の日。好きな環境で自由に挑戦をさせてくれている自分の実の母親への感謝は尽きることはありませんが、今年は"第二のお母さん”にも感謝の気持ちを送りたいと思います。

エストニアから最大限の感謝の気持ちを込めて、ありがとう。



サポートしていただいた暁には、よりディープなエストニアを探訪してきたいと思います。今年は色んなサウナを巡る予定です。