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祖母へ、愛と涙を込めて。

昨年までよりもひっそりと遠慮がちに、クリスマスソングが街中に流れるようになりましたね。

「クリスマス・イブ」
「いつかのメリークリスマス」
「ひとりぼっちのクリスマスソング」
「クリスマスキャロルの頃には」

日本のクリスマスソングには、「切なさ」が溢れた曲が多いですね。
寒くなる季節と相まって、心に染み入る感覚が意外と好きです。
(でも寒いのは大嫌いなので、沖縄とか台湾に移住したい。笑)

去年の今日、まだ世の中がこんなにも変わる片鱗さえ感じていなかった頃、祖母が82歳で亡くなりました。

亡くなる1週間前辺りから、病院に入院する祖母からの苦しみが伝わって来たように、私は毎夜毎夜、布団の中で泣きました。

私は祖母と一緒に暮らした事はなく、ただ帰省の時に会うだけの、4人いる孫のうちの1人に過ぎなかったのですが、祖母があんなに元気で、「90歳まで生きる」と言って、周りも祖母の長生きを信じて疑わなかったからでしょうか。

心の整理がついたのかあまり涙を見せない父と母の分まで、それこそワンワンと、お葬式の間もずっとずっと泣いていました。

今日は祖母の命日です。

昨年、亡くなる数日前、仕事終わりに母親から連絡を貰い、父が夜中に車を飛ばしながら、祖母が入院する隣の県へと、家族4人で向かった日の事が思い出されます。

部屋に僅かに光が差し込む夕方、隣のベッドに入院する方々も幾分か元気で、僅かながらに明るさの残っていた2ヶ月前の訪問と違い、深夜に裏口から入り、暗い廊下の向こうに祖母のベッドだけが白く光っている様子に、「きっともう、本当に長くは無いんだ。抗う事は叶わないんだ。」と感じられてなりませんでした。

祖母は寝ていて話は出来なかったものの、取り敢えず生きている内に会えたのだという事を心の慰めに、少し涙ぐみながら、近くの親戚の家へと帰りました。

翌日、昼間だという事もあり、幾分か昨夜よりも気持ちが落ち着いた気がしながら再度向かった病院。
今度は正面玄関から入って、看護師さん達と挨拶を交わしながら進んだ廊下は、昨日よりも少しだけ明るく感じられたものの、祖母の姿を見ると矢張り、「もう長くは無いんだ」と感じた心は変わりませんでした。

また少し涙ぐみながら、意識があるのか無いのか分からないけれど、それでもまだふっくらとして暖かい祖母の手を握りながら、何もせず、何も言わず、時間が過ぎていきました。

夕方に差し掛かる頃、仕事や学校が翌日に控える為、また車を飛ばして一旦帰る事になった父と弟と私。

祖母への別れの挨拶の時、それまで着丈に優しく祖母に声を掛けていた高校生の弟が、突然泣きじゃくりながら祖母の手を握り、「ばあちゃん、ありがとう」と声を掛けました。
それまで、喉が痛くなりながらも皆んなの前では賢明に堪えていた私の涙も、その瞬間から、ワッと溢れて止まらなくなりました。
そして祖母に私が伝えたかった事を少し恥ずかしながら声に出すと、今まで意識があるのか無いのか、あったとしても、もう孫の私の事は認識出来ないんじゃないかと感じるぐらいに朧気な様子だった祖母が、少し力を込めて、私の手を握り返しました。

その瞬間の、祖母の最期の、強く逞しい生命に溢れたエネルギーに触れた感覚が、今でも私の手の何処かに微かに残っているような気がします。

家に帰った翌日、私は詩吟のイベントにて、途中の盛り上げ役として、ベリーダンスを踊らせて頂きました。曲名は「ふるさと」。

祖母は、最期に入院生活をした半年間を除いては、ずっと「五島列島」という島に住んでいました。

緑の海に囲まれたあの島を思い浮かべながら、まだダンスの技術も初心者レベルで緊張と気恥ずかしさも多い中踊ったふるさと。

三線の生演奏と共に揺れ動きながら、何だか不思議な感覚がしたのを覚えています。

その翌日、祖母は旅立ちました。

そして命日の今日、3年半とちょっと勤めた会社を年内で退職する事が、上司と話が纏まり、正式なに決定しました。

祖母を失った昨年の2019年11月18日。

正社員と言う居心地が良く安定した地位を失う事が決まった2020年11月18日。

1年間本当に色々あった様な、でも色々あるのはこれからの様な気もします。

いつも良い言葉をくれる大切な仲間から、こんな言葉を貰った事があります。

「失う事は得る事。」

何かを失うという事は、何か別の新しい扉が開くということ。

昨年は、祖母が亡くなってから約2ヶ月後、従姉妹に赤ちゃんが生まれました。
そして今年の7月から、祖母と同い年のママのお店で、お手伝いをしています。

輪廻転生。死と変容。

きっと生きている限り、失う物があってこそ、得られる物があるのだと思います。

今日もまた昨年と同じ様に流れる大粒の涙を、強さと明るさに変えて。

(明日こそは、鍵が見つからなくて会社に嘘の体調不良で遅れるような事が無いようにします。
←それにしても、箸やフォークを仕舞うテーブルの引き出しに鍵が入っていたのは何故だろう。笑)


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