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今は亡き?ギャル文字

私が小学4年生ぐらいの時、つまり2005年ぐらいから、主に女子生徒の間で「ギャル文字」なるものが流行った。

簡単に言えば、わざとくずした書き方をした文字の事だ。

ギャル文字にも、定番のものから、ちょっとマニアックなもの、原形を残しているものや殆ど記号のようなものまで、色んな種類があった。

そしてそのギャル文字を駆使して、日々やり取りをする手紙を書いていた。

小学生でもスマホを持つのが普通となった今からは考えられないかもしれないけれど、当時は本当によく手紙を書いた。

家で書いてくる時もあれば、授業中に書いて回す事も。

手紙だけなら、友達とのやり取りなので問題はないけれど、「ギャル文字」は、日々の勉強にまで影響を及ばした。ノートやプリントに書く時も、ギャル文字を使うのだ。当然、先生達からはよく思われなかった。

流行りに敏感な子の中に、ギャル文字をセンス良く書ける子が何人かいて、流行りには後から乗っかるタイプだった私は、そういう子達から貰った手紙を見て、ギャル文字を勉強した。

記号のようなギャル文字は比較的分かりやすく、難なく書けたけれど、原型をちょっとだけ崩した、丸文字のような字は、なかなか上手く書けなかった。

しかも残念な事に、中学生になると、記号のようなギャル文字は廃れ、丸文字のような書き方だけが残った。

この、丸っぽいギャル文字が、私には難儀だった。

自分で言うのも何だけれど、私の字は綺麗だった。
書道を習っていた事もあり、字に丸さはなく、大きく、はっきりとしたタイプの文字だった。
筆圧も強かった。(小学校の書写の授業で、「力を入れすぎ」と注意を受けた事もある。)

それなのに、頑張って一部分だけくずして丸文字にした為に、私が書いた文字はかなり滑稽な感じになった。
ある日、私が書いたプリントを見た友人がこう言った。
「何か、頑張ってくずして書いてる、って感じ。」

その時は、軽く「そう?」とだけ返したけれど、その指摘は完璧に正しかった。

私は、ギャル文字を書く為に、なぜか"頑張った"のだ。

親と先生が褒めてくれた綺麗な字を捨てて、現代の女子の流行りについていく為に、ギャル文字を身に付けようとした。

今となっては、つまらない事に躍起になってしまった気がするけれど、当時は真剣だった。

比較的、「ヤンキー」と言われる人が多く在籍していた公立マンモス中学に通っていた私は、そんな些細な事でさえ、「流行りについていけなかったら、いじめられるんじゃないか」とビクビクした。

結局、中学生時代(というか全ての学校生活において)にいじめを経験する事はなかったので、結果的には取り越し苦労となった訳だけど。

あの時、実はたくさんのストレスを溜めていたんだろうな、と思う。
当時は、ストレスとは、仕事をし過ぎた大人が溜め込むものだと思っていたから気付かなかった。

私が子供を持つようになるのか、これからの人生において、子供と深く関わるような機会があるのか、それは現時点では全く分からない。
でも、10代で抱えた痛みのことを、大人は簡単に忘れ去ってはいけないのではないかと、時々こうして思い出した方がいいのではないかと、大人というにはあまりに未熟な私は、考えている。

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