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重慶大厦に恋してる。

普段、映画は殆ど見ません。
映画を見ていると、どんなに面白くても、時計が気になってしまうんです(笑)
共感できる人、いませんか?

そんな私でも、いくつか、ハマった映画があります。
それが、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督作品です。
彼は香港の映画監督で、特に、彼の初期の作品(1990年代)の作品が大好きなんです。

オススメは「恋する惑星」と「天使の涙」かな。

どちらも、中国返還の少し前、まだイギリス香港だった頃の、香港で生きる若者を描いた作品です。

王家衛監督は、細かい台詞を用意しない事で有名で、大まかなストーリーがあるだけで、後は役者さんが自由に演じるそうです。

作品全体を通して見ても、ハッキリとした起承転結がなく、ただただ刹那を追いかけているような、そんな雰囲気です。

はっきり言って、好き嫌いが明確に分かれる類の作品ですが、私の好みには非常に合いました。

ネオン街と雑居ビルのコントラスト、お互い一方通行に話すばかりで、成立しているようでしていない会話。一瞬に込める真剣さと、次の瞬間に立ち現れる不安。

どれも香港らしさをよく表しているようで、「出来る事なら中国返還前の香港を、この目で見てみたかった」と思いました。
出来れば、今はなき、啓徳空港を利用して。

出演しているのは、香港を代表する大スター達ばかり。
金城武や、他の作品ですが、若かりし日のチャン・ツィイーなんかも、王家衛監督作品には登場します。

中でも、私が好きなのはトニーレオン。「恋する惑星」の最終場面、彼がヒロインをじっと見つめるシーンが大好き。とても色気たっぷり。
「トニーレオンは目で殺す」なんて言われるそうですが、私も漏れなく撃ち抜かれました。笑

王家衛監督作品を初めて見たのは、大学生の頃。
今から、5年くらい前でしょうか?

なぜこの映画に出会ったのか、全く覚えてないのですが、とにかく、王家衛監督の描く香港に、とても惹かれました。

実際の香港には、旅行や仕事で3回ほど訪れた経験があります。

最近、「香港世界」という本を読みました。

山口文憲さんという方が書かれた、香港に住んでいた頃のエピソードをまとめたエッセイ本なのですが、何とこちら、1970年代のお話。

王家衛監督作品は1990年代ですから、さらに時代は遡ります。

山口さんが、香港の面白さについて語っている部分が印象的だったので、抜粋します。

「(香港は)何もないけれど自由はあるわけです。自由だけしかないと言ってもいい。
ことばを変えると、何も定まらないところと言ってもいいかもしれませんね。歴史とかアイデンティティーとかをはじめから持たないような、持てないようなシステムになっている。いつも「今」があるだけ。」

信じられるのは今(とお金)だけ。
それが、社会ではあるが国家ではない香港が持つ、面白さと不安定さ。

何故私が、こんなにも香港に惹かれるのか。

ずっと疑問に思っていたのが、少し分かった気がします。

「今ここ」を駆け抜け続ける香港に、湧き上がる羨望と、そんな所で生きていくなんて大変だという思い。
楽しそうだけど、少し怖い。そんな感覚。

香る港、香港。

私の長年の思い人。

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