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気がする

 最近、友人を通して友人が増えてどうぶつの森状態である(ありがとう)瀕死のスラックスの裾を縫ってもらったり、本や猫の話をしてみたりしている。海で写真も撮ってもらった。去年は瑛人の香水ばかり聴いていたから瑛人の香水じゃんと思った(自分はカメラもミシンも短歌もセンスよくあやつれないので尊敬である)で、それきっかけでやっとのことnoteを始めた。恥ずかしながらnoteがまだどういうところなのかもいまいちわかってないけれど(日記?エッセイ?)相変わらず誰に見せるでもなく小説も書いているので、そういうものを供養する場所というか、お墓というか、霊園というか、古墳群というか、ピラミッドというか、それらに代わるところとしても活用していきたい。

 はじめましてのかたに本をたくさん貸してもらった。ここ近くはKindleで読むことが多かったけれど、ひさしぶりに紙の本に触れてみて、やっぱりいいなあというか、貸し借りできるという点において電子書籍にない良さがあると思った。借りるということは返さないといけないということでもあって、次に会う約束でもあると思う。約束は韓国語でやくそぐ。(選んでくれた本たちどれも素敵です)そう、ジャンルは違えど創作に携わる人たちと話すと心が落ち着くというか、自分の場所はここだったんだ、とさえ思う。日曜日、伸びをした飼い猫(にゃん太郎・ダークネス 2才 ♂)の腹をまさぐって引っ掻かれたり、平日、寝る前にYouTubeできまぐれクックの初期遊戯王パック開封動画を見たり、たまに、ピザハットに似た名前のピザ屋のもちピザ照り焼きソースMサイズ(厚い生地、コクのあるBチーズ)に両手を合わせていただきますをしたり。たとえばそれくらいのヒーリング効果がある気がする。あくまで気がする、なんだけど、この気がするっていうのが実は大切で、のらりくらり決断力0で生きてきた身にとってフィーリングこそすべてになってる節が大アリで、こういう「気がする」の方向へ漂流した結果の今なんですワヨ!!!と誰かに言われてる、気がする。ひとりボートに乗って、流れ着いた島の灯台で鍵が見つからず釣りをはじめるのも悪くない。フィーリングはヒーリング。ライフ・イズ・ビューティフル。溺れるナイフ。アンダルシアの柴犬。星になったクロマメ。走馬灯。シュザンヌ・ヴァラドン。ウォーホルが見た花。じゃあ今から海辺を走ってみて。宝石みたい。回復する傷。フォスフォフィライト。人生のタイムラプス。月にハネムーン。薔薇の指輪。宇宙の真理。この世の果て。


 この間、気が向いたのでひさしぶりにオリジナルで開発したポケモンパン デコキャラシールタロット占いをした。叔母に聞きかじった話をベースにして、オリジナルエッセンスを加えた占術法だ。みんなもやってみよう。まず手始めに手持ちのデコキャラシールを10枚ほど用意して欲しい。そしてそれらを裏返したまま混ぜる(この際なにか考えたら呪われるのでなにも考えてはいけない)。しっかり集中して、これだと思った1枚を指さしてめくってみる。

 逆位置のチコリータ。意味は『贖罪』、『延命』、『寄り添う愛』。このシールはポケモンパン デコキャラシールタロット占いの中でも一二を争う不吉なものだから、頭頂部に生えた謎の葉っぱの緑色が見えた瞬間血の気が引いたけれど、逆位置ででたことを確認して、ほっと胸を撫でおろした。そしてそのまま小一時間、逆さまのチコリータと見つめあっていた。母親の顔も知らぬまま、製造ラインから銀のフィルムに包まれて、進化もできず、ヒコザルの野菜カレーパンの下敷きになり、この部屋という島に流れ着いたチコリータ。ありがとう、ポケットモンスター。ありがとう、山崎パン。俺は小さくガッツポーズをした。そして、おもむろにチコリータに人差し指の爪を引っかけて、思いきりよく台座から剥がした。しがらみから解放されて、心なしか顔つきがたくましくなったチコリータを冷蔵庫の「ピタッと!ラスカル立体マグネット」の横に貼った。殺風景なキッチンが緑一点パッと華やぐ。劇場版ポケットモンスター チコリータの逆襲。何かでっかい事(ソーラービーム)してやろう。

 ときどき、新しい場所で頑張る彼に「チコチコチコ!ちこブリィッ!!!!」とやさしく話しかけてみる。彼はいつも真顔である。けれど話しかけつづければいつか小さく返事をしてくれるような、そんな、そんな気がする。

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