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寝不足

帰宅してすぐ、ウイスキーをグラスに注ぐ。

エイミー・ワインハウスのアルバムをかけた。

名曲『Rehab』から始まるこのアルバムが大好き。

They tried to make me go to rehab but I said 'no, no, no'
リハビリに行け行けってみんなやっきだったのよ、でもあたしの返事は”NO, NO, NO "
Yes I've been black but when I come back you'll know know know
もちろん気分はどん底のブラックだけど、戻ってきたらわかるわよ
I ain't got the time and if my daddy thinks I'm fine
あたしには、そんな時間は無いわけよ、パパが大丈夫って言うなら尚更ね
He's tried to make me go to rehab but I won't go go go
パパは頑張ってきたけどね、あたしがリハビリになんて行くわけないのよ

この曲でグラミー賞を取って、ほどなくして本当にアルコール中毒で亡くなったエイミー。酒に溺れたい時はこの曲に限る。

飲みながら何気なく開いたツイッターのTLに、相互フォローの方がリツイートしたものが流れてきた。

「今日2月1日は俺の命日になります。死んでからになりますが、親にカミングアウトします」

トランスジェンダー男性のツイートだった。ftmだけど、今は学生で女性として暮らしているらしい。性別違和が理由ではなく、家庭事情が理由だそうだ。18時に自殺を決行するらしい。

何か声をかけようか迷ったが、すでに18時を過ぎていた。「いいね」だけ押してツイッターを閉じる。もし自殺を思いとどまったなら良いことだし、自殺してしまったとしても、それも本人の選択であり悲しくはあるが悪い事とは思わない。結果がどうであれ、彼に平安が訪れることを祈る。

少し経ってから再度ツイッターを開き、彼のアカウントを覗く。

彼は性同一性障害(今後は性別不合という名前に変わる)の事を世の中に知って欲しいと願っていたようだ。いくつかのツイートにいいねを押し「これ、共感出来るし参考になる」と漫画を紹介していたのでそれをリツイートした。私なりの供養。

もうこの世にいない歌手の歌を聞きながら、もうこの世にいない(かもしれない)人のツイッターを見ている。不思議な気分。グラミー受賞歌手も無名の高校生もみな等しく生きてきた痕跡を残すことが出来る世界で、生と死にどれほどの差があるのだろうと思った。少なくとも、今この瞬間の私にとっては、エイミー・ワインハウスもツイッターの彼も生きているに等しかった。

23時から1時まで、恋人と電話。互いに今日の出来事を語り合い「おやすみなさい、大好きよ」と言って終わる。それから1時間ほど飲んだことまでは覚えている。だから、寝たのはたぶん2時過ぎ。

夢を見て、目が覚める。外はまだ暗い。スマホを見るとまだ5時半だった。3時間しか寝ていない。目は完全に覚めている。

最低。


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