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源氏物語 9

『源氏物語』第34帖からの第二部と括られる巻名のみの『雲隠』までは光源氏の晩年が描かれる重苦しい物語群である。その前半部、光は40の賀を祝され『若菜』上下で、はるかに年少の女三の宮を正室として迎える。理想を具現化させた最愛の紫の上を苦悩させ、朱雀院ばかりでなく紫の上の病や出家志向が物語を暗澹たる雰囲気に染め上げていく。明石女御は後の春宮を出産し、父である明石入道は宿願成就と受けとめ遁世する。女三の宮と同世代の柏木がかの宮が光の正室であることを承知しながら恋慕し、契り、禁断の子をなして苦悩して死出の道につき、女三の宮は出家する。人生の実相に迫る深淵が次々と描出され、物語第二部の世界は、ひたすら深いところへと展開するのである。2021/06/20

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