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映画、演劇、音楽を中心にエンターテインメント全般についての発信を続けています。   鎌…

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映画、演劇、音楽を中心にエンターテインメント全般についての発信を続けています。   鎌倉ペンクラブ会員

マガジン

  • 源氏物語(再掲)

    源氏物語にかかる記事一覧です。再掲になります。

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    映画、演劇、書籍(文学)等、文化全般にわたるレビューを書いています。ランダムにマガジンにまとめてみました。

最近の記事

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再掲:のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて

一部からご要望賜りましたので、再掲させていただきます。 幻冬舎webコンテスト 第二回 エッセイ 優秀作受賞作です。 よろしければご一読ください。 https://www.gentosha-book.com/contest17/

    • 朝井リョウと岸善幸が問いかけるもの:『正欲』レビュー

       朝井リョウの原作は第34回紫田鍊三郎賞、岸善幸監督が脚本の港岳彦と組んだ映画は昨年の東京国際映画祭最優秀監督賞と観客賞。ともに読み応え、観応えある仕上がりで、未読、未見の方に是非と推奨したい。作品を通してふたりの作家が、われわれに問いかけるテーマは重く、ただ良質なエンターテイメントであるとだけでは片付けられないものがある。  ここのところの世間一般での金科玉条とも言うべき「多様性」の三文字。その前で、個人的には、ただ平伏し、時に萎縮するしかない場へと追い込まれる印象を有する

      • エマ・ストーンの2度目のオスカー納得。映画『哀れなるものたち』レビュー

         エマ・ストーンが2度目のオスカーを獲得した『哀れなるものたち』をDisney +で配信鑑賞。『聖なる鹿殺し』、『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督らしい、と評してしまえばそれまでだが、ファンタジー・ポルノという印象の仕上がり。原作があって、古いゴシック小説のようだが、あらためて読むまでもないだろう。ネタバレになるが、自分自身の子の脳を移植された母たる主人公が、性的経験を重ねながら成長し、その肉体に追いつき自立心旺盛な女性として自我確立、覚醒して解剖医になると

        • クリストファー・ノーラン監督らしい仕上がり『オッペンハイマー』レビュー

           オスカー7部門受賞の話題作を劇場鑑賞。3時間の長尺を飽きさせず、緊張感を維持して観せるあたりは、さすが。難解の評判先行ながら、クリストファー・ノーラン監督らしい仕上がり。原爆の父、オッペンハイマーをめぐるドキュメンタリー伝記映画というべき結構。映画らしい映画で、見応え十分だが、深い抒情味や感動はない。観客へのサービスか、冒頭で本作2部構成と丁寧に字幕提示があり、かつ、カラーとモノクロで時間軸の重層構造が鮮明。キチンと受け止めれば、主題も仕掛けも実に分かりやすく、物理や歴史に

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        再掲:のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて

        • 朝井リョウと岸善幸が問いかけるもの:『正欲』レビュー

        • エマ・ストーンの2度目のオスカー納得。映画『哀れなるものたち』レビュー

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        • 源氏物語(再掲)
          15本
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          24本

        記事

          巍然屹立、山崎ナオコーラ『ミライの源氏物語』レビュー

           大河ドラマ『光る君へ』で紫式部が主役になったことから昨年来、関連本、youtube、百花繚乱の様相である。そうしたなか本年度ドゥマゴ文学賞の栄誉に輝いた山崎ナオコーラの『ミライの源氏物語』は、巍然屹立の感ある出色の一冊である。  いまや世界中、いや、もしかしたら先進国と括られる、ある特定の「世界」中かも知れないが、LGBTQ +、が世界標準となった多様性時代。語弊、批判覚悟で私見一言添えさせて貰えば、多様性を謳いながら、わがまま勝手の独りよがりは決して許容されない、別角度か

          巍然屹立、山崎ナオコーラ『ミライの源氏物語』レビュー

          惜しくも胸に刺さらず:映画『PERFECT DAYS』レビュー

           昨秋の東京国際映画祭(tiff)オープニングを見逃して、そのまま機を逸していたのだが、昨夜の日本アカデミー賞主演男優賞を祝し、米アカデミー賞発表直前の、このタイミングで12月公開ながら今なお劇場公開中の同作を、ようやく鑑賞。周辺の評価高く、満を持しての思いで足を運んだが、個人的には、もうひとつ。深く刺さるものがなかった。  昨年、小津安二郎生誕120周年ということで小津を敬してやまないヴィム・ヴェンダースがtiffの審査委員長を務め、関係イベント多数催されたことから、本作が

          惜しくも胸に刺さらず:映画『PERFECT DAYS』レビュー

          映画『線は、僕を描く』レビュー

           Netflix配信『パレード』からの流れで配信鑑賞。同作のヤクザ役とはうってかわっての誠実・真摯な役柄を体現した横浜流星に感心させられるばかりの和文化作品。『ちはやぶる』で堅実な監督力を見せた小泉徳宏が百人一首から水墨画主題にシフトして、啓発教化的要素をくどくならないよう織り込み和文化の雰囲気たおやかない場面づくりに成功している。エンドロールの意匠は秀逸。  共演陣も安定感に満ちて過不足なく主役を盛り立てている。『パレード』『春に散る』や『流浪の月』、『きみの瞳が問いかけて

          映画『線は、僕を描く』レビュー

          藤井道人監督の抒情のありようが伺える佳品:Netflix配信映画『The Parades』レビュー

           藤井道人が初めて長澤まさみを起用したことで話題のNetflix製作作品を配信鑑賞。決して目新しい設定ではないが、共演陣粒揃いで穏やかに楽しめる。  登場人物ひとりひとりの物語に苛烈な深刻さなく、映画の力を強調して、劇伴も肩肘張らず、終幕に流れる野田洋次郎の歌声に涙腺刺激されるばかり。物語の大団円の技あり妙手が嬉しいカタルシスをもたらしている。  これからの日本映画を牽引するひとりである藤井道人に内在する抒情のありようが伺えるハートウォーミングファンタジー。心地よい仕上がりで

          藤井道人監督の抒情のありようが伺える佳品:Netflix配信映画『The Parades』レビュー

          スペクタルを真っ直ぐに受け止めることのできない悪癖を嘆く:映画『ナポレオン』レビュー

           ホアキン・フェニックス主演で話題だったリドリー・スコットの大作をApple TVで配信鑑賞。見応え十分。中盤の戴冠式は、ルーヴルの名高い歴史画そのもの。衣装、装置、装飾が見事で息をのむばかり。冒頭のマリー・アントワネットの断頭台シーンから長尺2時間半があっという間である。  ナポレオンの生涯や歴史的事実は誰もが知るところであるから、これをどう描く以上に、どこに新味を出すかにならざるを得ない。リドリー・スコットは、悪妻として歴史に刻まれるジョセフィーヌ基軸で全編を描き切った。

          スペクタルを真っ直ぐに受け止めることのできない悪癖を嘆く:映画『ナポレオン』レビュー

          源氏物語は恋のカタログ(再掲)

          マガジンにまとめました。https://note.com/kamakurah/m/m054284542d18

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          熱量希薄なディストピア小説。芥川賞『東京都同情塔』レビュー

           今期芥川賞を『文藝春秋』三月特別号で読了。ここしばらく、どの受賞作も肌に合わず毎回、不平不満をならべるばかりだったが、本作は興味深く読み遂せた。決定の報を聞いたとき笙野頼子の系統かなとの根拠なき印象を抱き、いくらか期待するところもあって候補作発表時点以降すぐに書店には並んだ同書を手にしかけたほどだった。  本作は、所謂ディストピア小説である。好んで親しむジャンルではないが、近年ではカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を抱きしめるように読んだ。古くはジョージ・オーウェル、

          熱量希薄なディストピア小説。芥川賞『東京都同情塔』レビュー

          上質な佳品『せかいのおきく』レビュー(更新)

           ヨコハマ映画祭に寄せて。  岸井ゆきのとともに黒木華が主演女優賞の栄誉を得た阪本順治監督の意欲作『せかいのおきく』について一言。個人的には作品賞となった『ケイコ目を澄ませて』よりも本作を上位に位置付けたい。  江戸から明治への移行期。西洋文明が一挙に押し寄せてきた時代設定の中、新たな日本語となった「せかい」を見事にキーワードとした脚本が素晴らしい。市井の人々にも新文明が伝播し、色恋の観念そのものを塗り替える。その市井の最下層の若者(寛一郎)とそれまで最上位にあった武家(佐藤

          上質な佳品『せかいのおきく』レビュー(更新)

          物語性希薄でゴシップの暴露に終始 映画『マエストロ その音楽と愛と』レビュー

           バーンスタインの伝記映画と聞いて、すぐにも映画館へと調べていたら3週間もしないうちに勧進元のNetflixが配信すると知ってそのままにしているうちにオスカーノミネート、となりこのタイミングでの配信鑑賞。レニーファンとしては恥ずかしい。  中学生になって当時流行っていた4チャンネルステレオを買い与えてもらって最初に買い揃え始めたのがバーンスタインだった。何故レニーだったかと言えば『ウエスト・サイド・ストーリー』への感激が大きい。中2の時の大阪万博では、バーンスタインもカラヤン

          物語性希薄でゴシップの暴露に終始 映画『マエストロ その音楽と愛と』レビュー

          邦題ゆえにサリンジャーファン見逃しがちの映画『マイニューヨーク・ダイアリー』レビュー

           前情報なく配信鑑賞して、内容原題からジョアンナ・ラコフの『マイ・サリンジャー・イヤー』(邦訳 サリンジャーと過ごした日々 井上里訳)と気づき、あわてて原作邦訳を再読して、再鑑賞。  マーガレット・クアリーとシガニー・ウィーバーというキャスティングが秀逸。おそらくその妙ゆえに『プラダを着た悪魔』の系列作品として営業されたのではないかと思われるが(それゆえの邦題だろう)、本筋は、定期的なタイミングで配給されるサリンジャーもの(そういうジャンルがあるのかどうかは知らないが個人的に

          邦題ゆえにサリンジャーファン見逃しがちの映画『マイニューヨーク・ダイアリー』レビュー

          ガッカリ『ゴジラ➖1.0』

          なお上映中なので遅まきながら久々のレイトショー映画館に飛び込み鑑賞。知人、関係者の評価毀誉褒貶著しく自分の眼で確かめなければと無理して観たのだが、個人的にはガッカリ。『シン・ゴジラ』で充分、国家規模で立ち向かうべき困難に、きわめてパーソナルな対峙という設定からして笑止千万、しかもラストは蛇足。朝ドラ『らんまん』のスピンオフとしか思えない。キャスティングからして間違っている。東宝の次世代を背負うべき浜辺美波が気の毒でならない。製作、音楽プロデューサーともにご縁あり、こんな評をア

          ガッカリ『ゴジラ➖1.0』

          映画『52ヘルツのクジラたち』レビュー

           2021年の本屋大賞受賞作の同名原作を、『八日目の蝉』、『連合艦隊司令長官 山本五十六』の成島出監督で映画化。主演の杉咲花が今をときめく志尊淳、宮沢氷魚を相手役に難しい役どころを、2016年に様々な映画賞を受賞した『湯を沸かすほどの熱い愛』(中野量太監督)に勝るとも劣らない熱演である。龍居由佳里が手堅くまとめた脚本は原作のイメージを損なうことなく、原作愛読者も納得の仕上がり。主人公の「魂の番」となる少年役を映画初出演の桑名桃李が好演、町田そのこが描き出した孤独感が説得力豊か

          映画『52ヘルツのクジラたち』レビュー