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源氏物語 3、 4

源氏物語 3

『源氏物語』通読、「若紫」と「末摘花」2巻は最もお世話になった新潮社の日本古典集成版で。色刷りの傍注がありがたく、さくさく読めます。2021/05/17

源氏物語 4

『源氏物語』第七帖「紅葉賀」は、序盤の最も美しく切ない典雅な一巻。光源氏は18歳。あでやかな舞姿の輝くばかりの美しさは、その若々しさとも相まって観る者に感動ゆえの涙を誘わずにはいられないほどだった、と語り手は伝えている。先帝参賀のための朱雀院行幸はひときわ規模の大きなもので『源氏物語』を語る際の常套句である「王朝絵巻」と言うに相応しい設定。参賀に同行できない藤壺のために試楽が催され、紅葉に彩られた背景のもとで光は頭中将とともに「青海波」を披露する。読者であるぼくらは、その場面に陶然としながら登場人物たちの様々に交錯した心理を受けとめる。
この時すでに継母藤壺との一夜の契りが交わされている。光の華麗な舞を観て、あの夜さえなければもっと堪能できたのにと藤壺は後悔を深める。一方の光も禁じられた恋に苦悩し、快心の舞にはならないと、翌朝、藤壺に贈歌する。相変わらず正妻葵との関係はしっくり行かず、北山で見初め二条院に迎えとった藤壺の容姿を宿した幼な君が日に日になついてきている。春宮の母弘徽殿女御の光源氏を疎ましく嫌う思いますます過度となり、この後、物語を大きく動かす心理の綾が一通り用意される。
急ぐことなく展開する物語の時間にひたり、1000年後の読者であるぼくらは、それらひとつひとつを咀嚼し、ゆっくりと味わう。「源氏物語』の通読で、あらためて読書の真髄を堪能している。 2021/05/22

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