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源氏物語 11

源氏亡きあとの第3部の「宇治十帖」と愛される子ども世代の物語は、第2部の心理小説風趣きにもまして近現代作品に重なる展開で、誰もが想起する様に、宇治の大君と妹中の君の哀しい顚末は、いつ読んでもジイドの『狭き門』を重ねないではいられない。姉妹の年齢差も人物像も、ここまで相似形となると、グローバルな文学の普遍性ということを感取するばかり。大長編の大団円は、亡き大君の面影を宿す異腹の浮舟と薫のあまりに切ない圧倒的なせめぎ合いで、王朝恋愛絵巻が見事に締めくくられ、ただただウットリ陶然とさせられる。

これをもって『源氏物語』原文通読、終了。ゴールデンウィークから2ヶ月にわたった朝読書による典雅な古典世界逍遥は、コロナ禍の過酷な現況のなか毎日の活力になりました。 2021/07/03


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