鈴木日出男先生の学恩に浴しつつ『源氏物語』巻4「夕顔」まで読み返したところで、もう一人の源氏の恩師池田勉先生の『源氏物語試論』を学部時期以来45年ぶりに通読。池田先生御退官直前の学部2年の時、先生に顧問をお引き受けいただき同級3人で源氏輪読会を週一回で始めたものの諸事情あって半年しか続かなかったことが今となると悔やまれ、先生からは最後に無理しなくてもいいよと優しくお言葉を頂戴したことが懐かしく胸締めつけられてならない。同書は、源氏初発4巻の成り立ちや構造を考察された大学の紀要を纏めた一冊で、端正な語り口に先生のお人柄が偲ばれる。後記に、目覚ましく進展した研究史の現況にあって自説はもはや古いものであるかも知れないと記されていらっしゃるが、研究の基本たる王道は色褪せるもの何ひとつない。一般向けの書籍ではないけれど、ここに紹介させていただくことで、その堅牢な業績を顕彰したく願う。　　2021/05/09