見出し画像

【F1】コラム:運命を分けたミディアムタイヤ。直線番長RBR&マックスが跳ね馬の壁を越える〈第5戦マイアミGP〉

アメリカでのF1熱は半端じゃないなと思ったマイアミGPでした。チケットが一番安くて8万5000円みたいな話も聞きましたが、それでも3日で売り切れたのですからF1としてもアメリカでのレース開催は当然増やしたくなりますよね。来年はラスベガスでの開催も決まっていますが、脱ヨーロッパの動きが過度に進むことは個人的には良いと思えません。クラシックサーキットでのグランプリも魅力がたくさん詰まっていますし、ドライバーの力量が試されるコースもたくさんあります。F1は今後うまく調整しながら開催地を決めてほしいと願うばかりです。

勝利を手繰り寄せたスタート。王者の走りとはまさにこのこと。

さて今回もまたシャルル・ルクレール対マックス・フェルスタッペンのマッチレースになりました。
フェルスタッペンの勝利においてポイントは3つです。
まずはスタートです。2019年メキシコGP以来のフェラーリがフロントロウを独占したグリッドですが、カルロス・サインツの位置したイン側2番グリッドはレコードラインではないため、蹴り出しでの不利はある程度予想されていたわけです。しかし実際には1コーナーのブレーキングがポイントでした。レコードラインのフェルスタッペンは深くブレーキを踏んで大外を旋回し、次の2コーナーに向けてイン側を取る形でサインツの前に出ました。
2つ目はミディアムタイヤの扱い方です。ルクレールは右フロントの扱いに苦しんだ一方、フェルスタッペンは大きく苦しまずに済みました。シーズンはすでに5戦を終えましたが、今季のピレリタイヤを完璧に理解するのはまだどのチームもできていないようです。

3つ目は9周目のメインストレートから1コーナーにかけてのバトルです。フェルスタッペンのオーバーテイクはさすが王者だなと思いました。先ほど申した通りレコードラインとオフラインでは路面のグリップレベルに大きな差がありました。そのため今回のレースにおいては、ブレーキングで相手に並びかけてオーバーテイクをするのは非常に難しかったのです。つまり、1コーナーでのオーバーテイクはブレーキングでイン側に並んで侵入しても、止まり切れずコースオフする懸念があったわけです。ルクレールは開幕戦のバーレーンGP同様ストレートではイン側に寄らず、ストレート中央レコードライン寄りを走行しました。フェルスタッペンにはレコードライン上のアウト側から並びかけてオーバーテイクする選択肢もありましたが、イン側からブレーキングでルクレールを差しました。ルクレールからすれば狙い通りだったと思います。しかしフェルスタッペンはオーバーシュートせずしっかりコース内に留まり、クロスラインからの加速で抜くことを考えていたルクレールのラインを抑えて1コーナーを立ち上がりました。
結果的にこれが勝負の決定打となりました。SC明けのレース終盤、ルクレールはフェルスタッペンを追撃しましたが、ストレートスピードが伸びるレッドブルのマシンが前に出ると抜くのは至難の業でした。またしても1シーンで2人の高度な運転と頭脳戦を見ることになりましたが、シーズンのハイライトの1シーンになるのではないでしょうか。

メルセデスの真価は次戦明らかに

メルセデスはアップデートパーツを持ち込みマイアミGPに臨みましたが、真の評価を下すのは次戦スペインGPになります。マイアミGPの路面は比較的フラットだったこともあり、金曜日はポーパシングが少なくなっているようにも見えました。しかし土曜日以降セットアップを一歩前に進めると、再び酷いポーパシングが現れました。次戦スペインGPの舞台カタロニアサーキットは冬のテストでも走っていてデータもありますから、それとの比較からチームも評価を下すことになります。それにしてもジョージ・ラッセルは5戦連続5位以内でフィニッシュし、王者ルイス・ハミルトンを苛立たせていますね。オーストラリアGPに続いてラッセルは運に恵まれた面もありますが、これで決勝に限れば対ハミルトンで4勝1敗です。チームとしてはハミルトンの機嫌をこれ以上損ねさすことは望んでいないと思いますが、マシンが改善しトップ争いへ返り咲いた時にこの状況が続くと、舵取りがすごく難しくなるでしょうね。

上手くいかなかった週末でも結果を出したボッタスとオコン

バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)とエステバン・オコン(アルピーヌ)もこの週末全体を考えるとすばらしい決勝でのリカバリーでした。ボッタスは金曜FP1でクラッシュし、FP2を全く走れなかったですから予選5位、決勝7位はボッタスの才能を証明したと思います。が、決勝5位も十分あり得ただけに最後のミスはもったいなかったですね。失礼ですが、ある意味ボッタスだなと思ったシーンでした。オコンに関しては土曜FP3でクラッシュし予選を走れませんでした。ラッセル同様SC出動のタイミングの運もあってリバースストラテジーが成功したわけですが、SCのタイミングでどのポジションを走っているかは重要です。チームメイトのフェルナンド・アロンソがスタート以外悪目立ちをしてしまうレースになったのとは対照的に、堅実に走り続けたことは評価されてもいいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?