はじめに

”楠栞桜”というバーチャルYouTuber(Vtuber)をご存知だろうか．
2019年12月にデビューしてから約1年の活動期間で，事務所に所属していない所謂”個人勢”としては驚異のスピードで人気を博し，フォロワー数7.5万人以上・登録者数12万人以上を獲得した異例の存在だ．
麻雀配信やゲーム配信などを行いながら，大手Vtuber事務所「にじさんじ」や「ホロライブ」に所属するVtuberともコラボレーションし，自身の3D化の際にはゲーム「アズールレーン」などで有名なYoster社の協力を取り付け，麻雀プロと共演する冠YouTube番組を持つなど，その彗星のような勢いは止まらないように見えた．
しかし2020年8月，とある事件をきっかけに突然の休止宣言を出し，それからは12月に一度配信をしただけで，そこからの約3年全く音沙汰がなくなってしまった．
いったい彼女に何が起こったのか．彼女が何をやったのか．
ここではそれを，出来る限りフラットな視点で追求したい．

客観的な事実には※事実，未確定情報には※グレー，などの表記を行う．

2018年～2019年10月 夜桜たま時代

デビュー前：キャスト情報のリーク ※黒に近いグレー

早速混乱させるようで悪いが，楠栞桜はそのデビュー前にVtuber事務所「どっとライブ」に所属する”夜桜たま”として活動していた時期があった．
そう，楠栞桜は「転生」個人勢だったのだ．

楠栞桜が異例の人気を得た背景のひとつには，夜桜たまとして活動していた期間に築いたファンベースがあったのだ．
夜桜たまはVtuberという存在がまだあまり認知されていなかった2018年にデビューし，どっとライブ内ユニット「アイドル部」としての活動で10万人以上の登録者を得て，自身の麻雀本を出版するほどの売れっ子であった．
(余談だが，アイドル部は2Dデビューからの3D化・リレー配信・ある程度行き届いたロールプレイなどで，独自の文化とファン層をVtuber業界に持ち込んだ画期的なユニットであったことは記しておきたい)

その楠栞桜＝夜桜たまとしてのデビュー直前である2018年5月，まだ1ツイートのみ，音声が公開されていない段階で，音声配信アプリ「LisPon」に関する掲示板にキャストを考察するような書き込みがなされていた．
(よん：楠栞桜・夜桜たまのキャストのLisPonでの活動名)
完全匿名の書き込みのため詳細を追うことは不可能だが，何もわからない段階でこうもピンポイントで中の人(キャスト)を当てることができるだろうか．
勿論楠栞桜自身が書き込んだと断言することはできないが，少なくとも彼女にとても近しい存在が，彼女が今まで活動していたLisPonの，”基本アンチ”と掲げられた場所に書き込みを行っていたのは間違いないだろう．
この事を頭に入れたまま読み進めていただきたい．
(これも余談だが，楠栞桜＝夜桜たま，というのは99％確実な話止まりであるが，よん＝夜桜たま，というのはMinecraftのアカウント名履歴より100%事実であると確認されている)

2018年5月～2019年：情報のリーク　※グレー

5ちゃんねるという掲示板サイトには，アイドル部アンチスレ(通称ドルアン)なるものが存在していた．
タイトル通りアイドル部に関するネガティブな書き込みがなされていた場所だが，そこにはアイドル部メンバーの中の人に関する書き込みが何度も投下された．
こちらも当時は完全匿名だったため，誰が書き込んだのか特定することは不可能だが，その情報の一つはほとんど音声の載っていなかったInstagramのアカウントであり，キャストにかなり近しい存在だったはずだ．
また，ドルアンには楠栞桜の過去に詳しい人物がたびたび現れ(通称よんおじ)，過去に披露していた歌の録音などを投稿していた．
この人物が楠栞桜に否定的な書き込みをすることはなかったようだ．
他にもアイドル部のイベントで歌われる曲目や，書籍発売に関する情報，テレビ番組への出演など，広範な情報のリークが行われていた．

2019年1月：案件配信のリーク　※不明

またしても舞台はアイドル部アンチスレ(ドルアン)である．
突如アイドル部の関係者と名乗る人物から暴露用のTwitter(X)アカウントへの誘導を行う書き込みがなされた．
そのアカウントではアイドル部の給与に関する情報や，同じ事務所どっとライブに所属する電脳少女シロの未発表のコラボレーションに関する情報が投稿された．
このアカウントはこれ以上の動きを見せなかったため，詳細は不明である．

2019年10月：一連の行動　※ほぼ事実

2019年10月7日，夜桜たまがYouTube上で突如ライブ配信を行い，「自分のソロライブの告知を早めたいと要求したが返答を後回しにされた」，「夜桜たまは辞めない」と泣きながら訴えた．
また，夜桜たまは10月以降Twitterでのつぶやき・YouTube上での配信を行わなくなった．
この突然の配信と行動にファンコミュニティは混乱したが，それはアイドル部アンチスレも同様であった．
その混乱の最中，完全匿名制からﾜｯﾁｮｲと呼ばれる個人を識別する符号を付加する方式に変化していたドルアンに，通称76という人物が何度も現れるようになり，スレッドの内容を誘導するような書き込みを行っていたことがわかっている．
76氏は夜桜たまのTwitterアカウントのプロフィール変更を(botを凌ぐほどの)ありえない速度で検知し書き込み，アイドル部の内輪向けDiscordのチャットログとされる画像を投下し，夜桜たまの裏アカウントとされるものに注意を向けさせ，夜桜たまのファンを(ドルアン内に)増やしながら，アイドル部キャストの個人情報を何度も書き込み拡散していた．
後日の検証や本人による書き込みにより，これらの行動を起こした76氏は，後に登場するec氏とほぼ同一人物と見られている．
(同一人物でない場合，同じような書き込みの癖を持っていて，同じTwitterの裏アカウントを知っていて，同じようなアイドル部や楠栞桜に異様な執着を見せる，同じような速度で情報を知り得る人物が2人いることになってしまう．可能性を考慮して，ここではあくまでほぼ事実としている)

2019年12月～2020年8月 楠栞桜時代

2019年12月：ec氏による書き込み ※事実

2019年12月4日，夜桜たまの契約解除が発表された．
それと近しい時期にアイドル部アンチスレから76氏が消え，それと前後するようにec氏が現れるようになった．
ec氏は夜桜たまの2冊目の書籍出版情報をドルアンに最初に書き込み，夜桜たまのものとされるTwitter裏アカウントへ誘導し，楠栞桜デビュー前の情報を書き込んでいた．
どっとライブのはっきりしない姿勢や遅い対応に業を煮やしたドルアンの住人は，そうした情報に思惑通りに食らいつき，夜桜たま＝楠栞桜の味方へと変化していった．
そして12月13日，楠栞桜がデビューした．

2020年1月～8月：ec氏による書き込み ※事実

楠栞桜のデビュー後もec氏の書き込みは止まらなかった．
書き込み量があまりに多すぎるため個別で取り上げる事は差し控えるが，不自然な速度での楠栞桜にまつわる書き込みから，麻雀プロの交際情報のリーク，アイドル部運営会社社員のLINEの画像リーク，他のVtuberの非公開のキャスト情報，他のVtuberの中傷まで，様々な事柄をアイドル部アンチスレに書き込んでいたようだ．
この間にドルアンでは荒らし対策のため，ﾜｯﾁｮｲという仕組みだけでなく投稿者のIPアドレスを表示するようになっていたため，ec氏のIPアドレスは今も閲覧可能な状態で残されている．

2020年8月：noteのIPアドレス流出とec騒動

2020年8月14日，note (そう，この記事が書かれているこのサイトのことだ)のページ内に投稿者のIPアドレスが表示されていることが発見され，楠栞桜のnote記事から取得されたIPアドレスと，アイドル部アンチスレのec氏のIPアドレスが一致していることが判明した．
この事件はITmedia経由でYahoo!ニュースのトップページにも取り上げられている．
詳しく知りたい方は，ニコニコ大百科の”ドルアンec騒動”ページ，Seesaa wikiのec関連保管庫避難所を参照されたい．
IPアドレスが一致する確率は各自で調べて頂きたいところで，またIPアドレスが一致したからといって本人だと断言することはできない．
しかしここで重要なのはただIPアドレスが一致しただけでなく，「楠栞桜にまつわる事柄を書き込み続けていたIPアドレスと楠栞桜本人のIPアドレスが一致した」ことである．
これを念頭に置かず書かれたものは考慮に値しないことは，ここまで読まれた方なら理解できるところだろう．
楠栞桜はこの日以降，メンバー限定を含め，三度の配信を行った以外の活動をしていない．

麻雀配信でのゴースティング ※限りなく黒に近いグレー

これに関しては他の方の記事や動画をチェックしていただいたほうが早い．

筆者は麻雀に詳しくないため詳細に言及するのは避けるが，こいつどうなってんだよ疑惑多過ぎるだろ．
尊敬していると言っていた土田浩翔プロに対して”そこ押さえても関係ないかな～”は共感性羞恥で鳥肌が立つ．
これ以上はフラットな視点が抜け落ちてしまうため，保留．
しかしIPアドレス一致のような決め手は存在しないため，いくら対戦相手が配信している時とそうでない時で実力が極端に変化しようが，自称している過去の段数と現在の段数に乖離があろうが，ゴースティング自体は限りなく黒に近いグレーの域を出ない．残念だ．

まとめ 楠栞桜とはなんだったのか

ここまでを要約すると，
・楠栞桜はアンチスレに頻繁に書き込んでいた
・楠栞桜は知人や友人の情報をネットにリークしていた
・楠栞桜は尊敬するプロにも嘘をついていた
といったところになるだろうか．

楠栞桜はデビューした時からアイドル部アンチスレと共にあった．
これはファンがどう擁護しようと変わらない事実である．
ただ出自がどうあれ前を向いて歩む道もあったはずだ．
しかし彼女はそうせず，配信中にも書き込みを止めない程だった．
楠栞桜が歩んできた道は，常にアイドル部アンチスレと共にあった．

彼女が承認欲求に取り憑かれた可哀想な人間だったのか，なにかの依存症めいたものを抱えていたのか，それとも病的な嘘つきだったのか，今となっては確かめる術がない．
(果たして本当にそうだろうか？)
ただ，彼女の活躍に純粋に期待していた人間を裏切るようなことをしてきたのは消えようのない事実である．
彼女が消えて約3年が経った．
楠栞桜の事を知らない配信者・視聴者も増えてきたことだろう．
この機会に改めて，人としてのあり方について考えてみるのも良いのではないだろうか．

……そして今日も，3Dお披露目配信で投げたスパチャは返って来ないことを思いながらエンタムのアトチに身をやつすのであった．