入門編 原油の基礎知識

はじめまして、カメさんです。

今年の4月20日に初めてWTI(West Texas Intermediate ※詳細は後述)の価格がマイナスになったことで、注目を浴びることになった原油。皆様、原油についてどの程度ご存知でしょうか?我々の生活には欠かすことのできない原油ですが、意外とよく知られていないと思います。

そこで普段石油関係の仕事をしている私が、初心者向けに原油について分かりやすくざっくり説明していきたいと思います。好評でしたらシリーズ化して、もっと深掘りして書いてみたいと思います!

初めてのnoteなので、皆様温かい目で読んで頂けたら幸いです笑

①そもそも原油って何?  

原油とは、油田を掘って産出されたままの未精製の状態の液体のことを指します。たくさんの異なる成分(炭化水素)から構成されており、黒くドロドロしています。その起源については諸説ありますが、一般的には、海底や湖底に堆積した生物の死骸が、地熱や地圧の影響を受けて長い時間をかけて熟成されて出来たもの、と言われています。

ただこの原油の状態だと前述の通りただの黒くてドロドロした液体で、何にも使用できません。そこで各石油会社は製油所と呼ばれる工場で、原油を精製することで使用可能な状態にします。具体的には蒸留という方法で原油を成分ごとに分離することで、ガソリン、灯油、軽油、重油と呼ばれる石油製品を製造しています。

②原油にはどんな分類があるの?

一言に原油といっても、産地や油田によって種類(品質)が異なります。ここでは原油の品質の基準として、重さ(比重)、硫黄分について紹介します。

●重さ(比重)

原油はその重さによって分類されます。軽質原油は、ガソリン、灯油、軽油を多く含み、重質原油は残渣油や不純物を多く含みます。そのため一般的に軽質原油の方が重質原油よりも高値で取引されます。ちなみに原油の重さを表す指標としては、APIという指標が使われます(比重のようなもの)。混乱しやすいですが、APIは数値が大きいほど軽く、数値が小さいほど重い原油を指します。 

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●硫黄分

硫黄分が少ない原油をスイート原油、硫黄分が多い原油をサワー原油と呼びます。硫黄は石油製品をつくる際にコストをかけて除去(脱硫)しないといけないので、スイート原油の方が処理が容易でサワー原油よりも高値で取引されます。

③原油の価格はどこで分かるの?

原油価格の指標としては、WTI、ブレント原油、ドバイ原油が使われております。これらの指標が、原油の品質、需給バランス、地政学リスクの影響を受けて、日々上下しています。石油元売り各社は、品質に加えて、こういった価格、および運送費を考慮して、どの原油をどれだけ購入するか決めているわけですね。

●WTI(West Texas Intermediate)

WTI原油とは、アメリカのテキサス州沿岸で産出される原油の総称で、特徴は超軽質のスイート原油というところです(品質が良い!)。NYMEXで取引が非常に盛んに行われており、石油先物取引として世界最大の出来高を誇っているため、アメリカのみならず世界の指標油種となっています。

NYMEXの現物受渡は、テキサス州の隣のオクラホマ州クッシングで行われるため、クッシングの在庫状況が価格に影響を与えることがあります。(先日WTI価格がマイナスまで落ちたのも、クッシングの在庫レベルが非常に高くなってしまったことが主な要因です。)

●ブレント原油

主にイギリスの北海にあるブレント油田から採鉱される原油を指します。ICEに上場されており、欧州向け原油価格の指標になっています。NYMEXのWTIと並んで、代表的な指標油種です。品質的には軽質のスイート原油であり、WTIと後述のドバイ原油の間に位置付けられます。

●ドバイ原油

ドバイ原油は、UAEの構成首長国の1つであるドバイで産出される原油を指します。仕向け地の制約が無いことから取引に便利な原油として、スポット市場で活発に取引されています。品質は、中質で硫黄分もスイート原油とサワー原油の間くらいで、一般的には価格も安いです。日本を含むアジアでは主に中東から原油を購入しているので、ドバイ原油がアジア向け原油価格の指標となっています。ちなみに日本は原油輸入の9割近くを中東に依存しています。

④まとめ

ざっくり説明しましたが、いかがでしたか?まとめると以下です。

・原油は油田を掘って産出されたままの未精製の状態の黒くてドロドロした液体

・製油所で精製されることでガソリン、灯油、軽油、重油と呼ばれる石油製品ができる

・原油の質は、重さ(比重)と硫黄分で決まる

・主な価格指標として、WTI、ブレント原油、ドバイ原油がある

・日本を含むアジアはドバイ原油を原油価格の指標として使用している


原油を知ると、普段目にする耳にするニュースの理解度が違ってくると思います。原油は産業の根幹であることに加え、世界情勢を色濃く反映します。非常にダイナミックで面白いので、まずはこのnoteを読んで皆様に原油に興味を持って頂けたら幸いです。それでは。





 

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