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歌姫2024 ④ aiko

aikoの「ボーイフレンド」は2000年の作品だが、何年経っても魅力の褪せない名曲だ。伸びやかな歌声もアレンジも爽快で、おそらく魔法のコードが仕込まれているのだろう。作曲について私は門外漢だが尋常でない中毒性を感じる。何度聴いてもフレッシュ。好きすぎる。

迸る詩情が凄い。イントロももどかしく開口一番「早く逢って言いたい」だ。ボーイフレンドのこと大好きというだけでだけでこんなにもパッションが溢れ出るものなのか。

aikoについて書くとき、どうしても触れたいのは「Loveletter」という2013年のシングル。この曲もキャッチーなサビメロと疾走感のあるバンド・アレンジが痛快だが、やはり作詞のレトリックが非凡だ。書かれた手紙を何度も読み返したという行為だけが描写され、肝心のラブレターの内容については一文字も触れていない。それがaikoの凄いところだと思う。

同じ学区で私立の男子校に通っていた私は千里中央でデートしている東淀川高校のカップルが眩しくて直視できないぐらい初心だったので「三国駅」のボーリング場が新大阪イーグルボウルなのか新三国アルゴセブンなのかというファンの議論に参加することはできない。できることはaikoの歌を聴いて失われた学生時代の恋を妄想することぐらいだ。私にとってaikoは若き日の北摂の風景を追体験させてくれる語り部でもある。

同年代の男性の友人が昨年ようやく「ボーイフレンド」の凄さに触れたらしく「自分に向けて歌ってくれているのに、気づくのが遅くなって泣いてしまった」と言う。私たちは「その感受性、羨ましい」と笑った。たしかに彼の感受性はaikoに劣らずフレッシュで、今年になって14才年下の可愛い恋人ができた。55才の彼だって、今ならテトラポットに登って宇宙へ靴を飛ばすことができるだろう。


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