人はなぜ手を叩く

会社のどうでもいい朝礼に参加したときだろうか。
壇上の者がしゃべり終えたあと、パラパラと聞こえてくる拍手を聞いて強烈な違和感を覚えたのである。
手と手を打ち鳴らす、イコール賞賛。
なんだそれは。
冷静に考えるとちょっとどうかと思う仕草じゃないだろうか。
「賞賛の意味を込めて体のもみじ状の部位をぶつけ、打ち鳴らし、その音で他方が照れたり恐縮する習性を有す」
どんな動物だ、それは。
時代が時代なら宗教裁判モノの事案だ。証拠を持ってこい!と、てっぺんハゲの神父もご立腹だ。

いつ、どんなきっかけで始まったんだろう。
誰ひとり説明できない点も気になる。
音が鳴るならお尻ペンペンでもよかろう。
当たり前のように拍手をしているとき、ちょっと時空がズレて「くちびるを指でビルビルいわすこと」が賞賛を示す世界に飛び込んでしまったらどうする。
時空のあっち側のレディが卑猥すぎて失神モノのサインが「拍手」だったとしたら……。
そんなことを思うと気が気ではない。
人々は無自覚に手を叩きすぎやしないか。
なんなんだ、拍手。
違和感をおくびにも出さず今日も手を叩くが、心のモヤモヤは消えない。
ひとりだけくちびるを指でビルビルいわしてたら、ただばかみたいだった。