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紅の英語歌詞に文脈モリモリ実写版「カラオケ行こ!」ネタバレ注意感想

 はじめに書いておきますと、私は大満足の実写化でした!
 なのでこれは全力ネタバレ絶賛感想となっておりますのでご注意下さい。

 そもそもスタッフ&キャスト発表の段階で期待大の実写化でした。
 脚本に野木亜紀子さん、狂児役には綾野剛さんときたら名作ドラマMIU404。
 原作が映画1本にするには尺が足りない気がしていたのもあり、恐らく映画化にあたってはオリジナル要素とか追加されるんじゃないかな、大丈夫かな……でも脚本野木さんならそんなに悪いことにはならないだろう……という期待と不安の中、初日に観に行って来ましたが、あまりにも心地良い空気の作品になっていて、この映画ずっと観ていたいな、終わらないでほしいなと思ってしまうほどでした。

 まず驚いたのは、原作にある聡実くんのモノローグ全カット。
 聡実くんの語りから始まるとばかり思っていたので、最初に雨に濡れたシャツ越しに入れ墨が透けて見える狂児の背中が来たとき、映画の始まりだし視覚的にインパクトがあるカットから始めるのかな~と気楽に構えていましたが、カラオケのシーンになってもモノローグが入らないので、えっ全部無しなの!?と動揺。
 でもモノローグがなくても聡実くん役の齋藤潤さんの演技と表情で、何を考えているのか分かるようになっていたんですよね。齋藤さんの演技力にすべてを委ねたんだなあと、スタッフさんたちの信頼を感じて凄かったです。

 聡実くん役の齋藤潤さんの演技はとにかく素晴らしかった。
 最初の狂児に連れて行かれたカラオケで傘とバッグ抱えてプルプル震えてるシーン、大人しいのかと思いきや結構モリモリ食べるところ、ヤクザ大集合で怯えて狂児の腕にしがみついてるところ、宇宙人ヤクザに捕まったところ、狂児の歌えそうな曲リストを用意して自分から座席の距離を詰めるシーン、あまりにも子犬感すごくて可愛いと思ってしまう自分への良心の呵責が凄かった。
 声変わりを迎えた中学生の繊細さとヤクザ相手に結構ズバズバ言う大胆さ、それから何と言っても肝の「紅」歌唱シーン。全部良かったですね…!

 狂児役の綾野剛さんは、キャスト発表されたときは狂児はもうちょっと骨太な印象だったのもあり、どうなんだろう……?と半信半疑でしたが、「うそ~ん」の言い方がめちゃくちゃ良かった。
 「紅」のヘドバンが想像していたより激しくて、映画館で笑いを堪えるのが大変でした。
 何を考えているのか分からないヤクザの異質さと、おじさん臭い陽気さ、聡実くんを見つめる目の優しさ、滲み出るバイオレンス感。すべてが見事で、魅力的な俳優さんだなあと改めて思いました。

 あとカットされたものといえば、いちご狩りとシルバニアファミリーなんですけど、流石に中学生に学校行事サボらせるのはまずいって判断されたんだなあと納得しかない。でも狂児がお詫びにいちご渡すシーン好きなんですよね……。

 追加されたオリジナル要素の大半は聡実くんの学校生活でしたが、原作読んで聡実くんのことが心配だった部分なので、むしろ丁寧にフォローされていて安心しました。
 後輩の和田くんが原作とだいぶ違うキャラクターになっていましたが、部活命の一直線男子中学生って感じで愛おしかった。
 ほんの少しセリフや口調がキツかったらものすごく嫌われてしまう立ち位置だと思うのですが、絶妙に愛されるキャラクターになっていて、これは脚本の野木さんのバランス感覚がいいんだろうなと思いました。
 あと副部長の中川さんの人間が出来すぎててすごい。
 メディア化にあたって主役の異性がオリジナルキャラとして追加されたり出番が増えると、大抵の場合、無理矢理増やされた恋愛要素になるのでちょっと警戒していたのですが、いい意味でめちゃくちゃいい人なだけだった中川さん。本当に中学生なのかとちょっと疑っていた。人生何周目なんだろう。

 先生たちもオリジナル要素が多かったのですが、お花畑ももちゃん先生の「歌は愛やで」が紅に繋がっていたり、先生粗忽者だから気をつけてって言われた直後に聡実くんの目の前で和田くんにもしもの時の代わり頼んでたり、キャラの立たせ方が憎めなくて良かったです。
 映画を観る会もちゃんと「愛は与えるもの」とラストに繋げていて、意味のあるオリ要素になっていて良かった。聡実くんに合唱部以外にも居場所があるのが分かって、なんか安心しました。
 あとビデオデッキ壊しちゃって落ち込んでる和田くん可愛かったね……。中川さん子守お疲れ様です。

 楽しみにしていたヤクザ大集合熱唱シーンは全部フルで見たかった~!って思うくらい面白かったです。
 チャンス大城さんが演じるキティの兄貴が聡実くんに飲み物聞いたり、精一杯優しく接しているのがとってもキュートで良かった。

 狂児の母親和子役で登場したヒコロヒーさん、ちょっと棒読み感は否めないのですが、なんかこういう女性の役すごく合うんですよね。泥濘の食卓のドラマでもなんか良かったので……。

 そして作中の重要曲である「紅」。
 まさかの英語歌詞部分を関西弁に和訳、それを狂児との出会いから死亡(仮)に重ねるという文脈モリモリ感情過多にすることで、齋藤潤さんの熱演も合わせてとんでもないシーンになってました。
 ただでさえ聡実くんの声変わりという一大イベントも兼ねてるのに、さらに盛るんですか!?ありがとうございます……いやまじで……凄かったですね……。
 歌は愛で、愛は与えるもので、元気お守り渡し済みで。
 何という生存確定演出。カラオケ行こ!は輪るピングドラムだったのか……?

 聡実くんの名前は「聡い果実」って狂児が口にしたのは原作未読の方への配慮かなと思ったけど、ラストのシーンが変更になってたからだったんですね。
 あそこは聡実くんの反応込みで見たかったなあとちょっと思ってしまいましたが、二人を再会させると聡実くん役の齋藤さんが青年になっている必要があるし、映像的に違和感があるから変更したのかなとか、一晩考えてました。
 原作は「ファミレス行こ。」という続編があるので、映画も続編が作られる可能性があるのだろうかと少し期待しています。

 とても素晴らしい実写映画でした。素敵な作品をありがとうございます。


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