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無力な少女がやがてブラッディメアリになる日まで『セシルの女王/こざき亜衣』

 漫画を読むにあたり、ストーリーを楽しもう、多彩なキャラクターの動向を追おうと思っても、自分のヘキに向かってスピンかけながら突っ込んでくるキャラクターに出会ってしまうと、もうその子のことしか考えられなくなってしまう。

 誰のこと?
 「セシルの女王」のメアリちゃんです!

 この幸薄そうな泣き顔がたまらん……。

 のちにイングランド女王メアリー1世となり、血まみれ女王ブラッディメアリと呼ばれるようにもなるメアリちゃんですが、今はまだ親の乱心に振り回される無力な少女。

 漫画「セシルの女王」はイングランドを舞台に、のちにエリザベス1世に仕える忠臣ウィリアム・セシルを主人公とした、歴史ロマンと宮廷ドロドロぎっしりの作品です。
 現在発売中の2巻まではエリザベス1世の母であるアン・ブーリンとセシルの関係が主軸になっており、メアリちゃんよりもメインはセシルの話なのでそれ自体ももちろん面白いのですが、なんか色々突き破って来ちゃったんですよね、メアリちゃんの泣き顔が。
 国王の娘として生まれたにも関わらず、愛情と恩讐に振り回される無力で哀れなその姿が。

 1巻ではまだ小さい幼少時代が、2巻では背も伸びてエリザベスの異母姉になった姿が描かれるメアリちゃん。
 メアリちゃんはただ両親に仲良くして欲しかっただけで、ずっとお母さんと一緒にいたかっただけにも関わらず、お父さんのヘンリー8世は離婚どころか二人の結婚が無効だったとか言い出す。は?
 色んなことが積み重なってめちゃくちゃになった結果、お母さんは男の子が欲しかったのに女の子として生まれてきた私が悪いんだ…とか思い詰め始める。本当に勘弁してくれ。メアリちゃん何も悪くないよ……。

 私が特に大好きなのは、コミックス2巻収録の第7話のラスト(上のツイートの画像2枚目です)
 「恨んでは、だめよメアリ」
 自分に言い聞かせる言葉とは真逆のその表情。
 他者に向かうマイナスの感情を必死に理性で抑え、自分を律しようとしていた彼女の、恐らく「決壊」のシーン。
 ここがもう本当に好きで好きで。
 作者であるこざき亜衣先生がTwitterでされていたスペースも拝聴したのですが、「メアリはブラッディメアリのゲージを溜めている」とのお言葉がありゾクっとしてしまいました。
 実のお母さんと幸せに暮らしてほしいけど、無理なんだよな……歴史多少捻じ曲げて幸せにしてあげてもらえませんか? 無理か。デスヨネ~……。

 これからどんどん歪んでいくであろうメアリちゃんの人生を追える「セシルの女王」はまだ2巻が出たばかりという追いつきやすさです。
 1巻のエリザベス誕生とともに聴こえる名作誕生の産声を、是非読んで聴いて下さい。
 そしてこの泣き顔の印象的な女の子がどう血まみれになっていくのか、見届けましょう。

 ビッグコミックの公式サイトで第1話の試し読みが可能です。

 メアリちゃんの泣き顔を堪能したい方はコミックスをどうぞ。

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