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タイの手漉き紙 saa paper の製法

こんにちは。
「世界の紙を巡る旅」をしている kami/ (紙一重)です。

先日、タイのチェンマイから車で40分ほど離れたところにある工房で、紙漉きを体験してきました。
初めて溜め漉きを体験して、直に紙の繊維に触れる感覚に衝撃を受けました。

今日は、saa paper の原料や製法についてより詳しく知りたい方に向けて、少しマニアックで細かいことを書きます。

※ここにまとめるのは、HQ Paper Maker での原料や製法で、タイでの手漉きが全て同様なわけではないのでご注意ください。


原料

saa paper の原料は、その名の通り「saa」という植物です。
Mulberry と呼んでる人もいました。

△ saa の葉。原料として使うのは茎の部分です。生え始めて1〜2年の若いものを使うことが多いそう。成長が早く、1年で 高さ4〜5m、直径8cmくらいに育つ。

△ 4〜5年経ったものは良い繊維が取れず、育つ過程で傷が付くことも多いため あまり使わない。

△ 刈り取った木は蒸さずに、すぐに皮を剥ぐ。

saa 自体はチェンマイ各地に自生しているので、何軒もの農家が仕事の合間に刈り取り皮を剥ぎ、原料業者に売っている。
この工房では、業者が農家を回って集めたものを購入して使っているそう。


原料の加工

業者から買い取った原料を、工房で加工する。

△ 苛性ソーダで 8〜10時間煮る。

△ 同じ容器を使って、漂白する。酸素系の漂白剤を使用している。

△ 煮熟、漂白後の saa
手で簡単にほぐせるくらい柔らかくなっている。

△ビーターを使って細かく砕く。
紙を色つけする場合は、このタイミングで染料を入れる。

△叩解後のsaa。
楮などと比べると太めの繊維。

△ 木枠一つ分の原料を計り、丸めておく。重量の30%が原料、70%が水分。


漉き方

この工房では、タイの昔ながらの漉き方を重んじて「溜め漉き」で作っている。
後日 訪れたチェンマイ付近の他の地域の工房では、流し漉きで作っていた。

△ 水に浮かべた漉き桁の中に、原料を流し入れる。

△ 手でバシャバシャとかき混ぜ、枠内全体にsaaを広げる。

△ ある程度 拡散したら、縦に掻く。水の中に指を入れすぎるとsaaが引っかかるため、ほんの少し触れる程度。

△ 横にも掻く。

△ 水面を手のひらで叩いて、絡まっているsaaを拡散させる。

△ 受注内容に合わせて、植物や染めたsaaを漉き込む。

△ 染めたsaa の繊維。

△工房の庭で摘み取ったばかりの花や葉を漉き込むことも。

△ 全体が均一になったら、片側からゆっくりと引き上げる。


乾燥

△ 木枠を外し、45度以下の緩やかな角度で立てかける。この漉き桁は珍しい。

△ 写真の左奥に立てかけてあるように、木枠ごと乾燥させる方が多い。

△ ある程度 漉き終わったら、まとめて外で天日干しする。気温が高い(35度以上)ため、だいたい1日で乾燥する。

△ 凹凸のある表面。筆記性を高めたいときや 滑らかな仕上がりにしたいときは、網の裏側から掃除機で水分を吸い取る。

△漉き場のすぐ外で乾燥させている。気温は高いが風通しがよいため、作業は快適。

△紙の繊維を砕く前のものを広げたら面白い形だったので、乗せてみた


用途

saa paper の用途はいろいろ。
ノートやアルバム、照明、ラッピングペーパーなどなど。チェンマイで見かけたsaa paper の写真を載せておきます。


▽ 合わせておすすめ!

紙を貼った傘作りの風景が、美しい。(公開したいけど書けてない)

タイで見つけた紙もの(上に同じ)

紙漉き村 Ton Paoの日常(上に同じ)

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