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和紙の原料の違い

布の素材の違いを知っている人はたくさんいる。綿は吸湿性が良くて、リネンは涼しくて、ウールはあたたかくてシワになりにくい。

じゃあ、和紙の原料 楮、三椏、雁皮は?
その違いを知っている人は、布の違いを答えられる人と比べるまでもないくらい少ない。そもそもわたしは、この3つの漢字の読み方すら知らなかった。

知ったところで何の役にも立たないけれど、これを知ったら紙をじっくり見たくなる、かも。

そんなわけで #紙の自由研究 初回は、和紙の原料の違いについて書きます。

目次
⚪︎和紙の主な原料
⚪︎楮(コウゾ)
⚪︎三椏(ミツマタ)
⚪︎雁皮(ガンピ)
⚫︎余談 / すきなものを語る楽しさ
⚪︎和紙の原料をもっと知りたい方へ

和紙の主な原料

楮、三椏、雁皮。
コウゾ、ミツマタ、ガンピ。

和紙の代表的な原料です。
正直、読み方を覚えてもらえるだけでもこのnoteを書いた甲斐があるので、事あるごとに連呼します。
楮 三椏 雁皮。

そもそも和紙は、木の皮の繊維が絡まって出来ています。
和紙の風合いは、原料となる木の繊維の特徴と漉き方(=繊維の絡ませ方)で変化するので、原料の特徴を知っておくことはとても大事です。

人それぞれに髪質があるように、植物の繊維にもそれぞれ特徴があります。硬いとか柔らかいとか、細いとか太いとか、光沢があるとか、平べったいとか、長いとか。

1本ずつの繊維が長いと絡まりやすくなって、より丈夫な紙ができます。
硬い繊維を使うとハリのある紙になって、平べったい繊維だと密度の高い紙に。

そんな風に、和紙の風合いは 原料の影響を多分に受けています。風合いが異なると使われ方も変わります。

あとは、植物なので栽培のしやすさや 成長のスピードもそれぞれ異なります。加工のしやすさも違います。
気候によって育ちやすい場所も変わるので、産地もいろいろ。

特に成長スピードは大切で、紙はたくさん流通するものなのでたくさんの原料が必要になります。
具体的に言うと 原料の約4%しか紙にならないので、作りたい紙の重さの25倍の重さの原料が必要です。

紙の原料と紙の使い方の関わりをまとめると、こんな感じ。社会や生物の授業が好きだった人にとっては面白い分野だと思います。
諸々の条件を踏まえて選ばれてきた楮や三椏や雁皮に、興味が湧いてきませんか…?

楮(コウゾ)

〈繊維〉
太い、長い(平均7mm)、強い。
扁平な形なので、緻密な紙ができる。

〈栽培〉
育てやすく、成長が早い。毎年採れる。
国内の主な産地は 高知県。

〈用途〉
幅広く、和紙の最もメジャーな原料。

三椏(ミツマタ)

〈繊維〉
柔軟、細い、短い(4.5mm)、光沢がある。
円筒形のため、隙間の多い紙になる。

〈栽培〉
比較的簡単。3年毎に収穫できる。
国内の主な産地は岡山、高知、徳島、島根など。

〈用途〉
紙幣(印刷適正に優れているため)など

雁皮(ガンピ)

〈繊維〉
細い、短い(4.5mm)、光沢がある。
扁平な形のため、緻密な紙ができる。

〈栽培〉
栽培が難しく、成長が遅いため野生の雁皮を使用することが多い。

〈用途〉
箔打ち紙など

楮、三椏、雁皮 +α
和紙の原料だけ切り取ってみても、いろいろあります。そこに産地の地域文化や漉き方が掛け合わさって、多様な和紙の使われ方が生まれました。

なんとなく頭の中に浮かべた「和紙」が一言で説明できない様々な違いがあること、奥深い世界が広がっていること。
このnoteを通して少しでも伝わるといいなと思いますが、全然うまく伝えれません。

知識を蓄えながら、現地で話を聞きながら、伝える方法・切り口を考え続けたいです。

余談 / すきなものを語る楽しさ

このnoteを書こうと思ったきっかけの話。

先日 鳥井さんのこの記事を読んで、わたしが紙の可能性を感じた瞬間を思い出しました。
紙は、やっている人が少なくて、ちょっと詳しくなっただけで珍しい感じになれます。
そして何よりも、わたしが紙にまつわる色々を知るのが楽しくて、その面白さや 紙の奥深さを「誰かに伝えたい」という気持ちが一生消えないだろうな、と感じた瞬間がありました。

それ以降 日本各地を回って職人さんに話を聞いたり本を読んだり、大学で紙の研究をしたりネパールに現地調査に行ったり。
そんな風に3年間なんとなく紙に関わってきたけど、伝えることを念頭に置いたインプット/アウトプットをしてきませんでした。

このままではいけないなぁと思って、怖くて逃げていた「紙について語る」ことと そろそろ向き合うことにします。
ほんとに怖い、何よりも怖い。

わたしは紙がすきなだけで、紙のことを何も知りません。
無知は恥ずべきことなんだろうけど、紙に関しては「知らないと思われること」が全く恥ずかしくなくて、「知らないままでいること」の方が断然イヤで、「知らないことを知ること」が楽しい
常に、小学生の自由研究みたいな気持ちで向き合っています。

これからわたしが書いていくことは、夏休みの自由研究レベルのことばかりです。
世界一周の中で見るものも、絵日記に毛が生えたくらいの内容しか書けないと思います。
だけど、それを温かい目で見守り、ときどきスキを押してくれる友人や見ず知らずのフォロワーさんたちのおかげで、続けていけそうな気がしています。

kami/ の #紙の自由研究
これからも ゆるっと応援してもらえると嬉しいです。

もっと詳しく知りたい方へ
和紙の原料について▷阿波紙ファクトリー楮の育て方▷東京和紙ウェブサイト(このサイトがめちゃくちゃ面白くて、楮を食べたらジェノベーゼみたいだったとか、紙を食べてみたとか、変な記事が盛りだくさん。)
和紙全般▷




こんにちは、kami/(かみひとえ)です。いただいたサポートは、「世界の紙を巡る旅」をまとめた本の出版費用に充てさせていただきます。今年の12月に発売できる…はず…!