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紙を求めてネパールへ|そしてわたしは、紙をすきになる[第7話]

大学4年の冬、ネパールで一人旅をした。
「ネパールに行きたい」なんて思ったことはなくて、行きの飛行機に乗ってる瞬間も「え…、ほんまに行かなあかん?」と全然乗り気じゃなかった。
なのに10日後 日本に帰るときには、ネパールを離れるのが寂しすぎて泣いてしまうくらい、すきになっていた。

「世界の紙を巡る旅がしたい!」なんて本気で思ってしまったのは、この一人旅のせい。
遥かなる国、ネパール。この国の人と自然と雰囲気と、食べものと、そして紙の文化が、すきだ。


大学生のとき、「文化人類学」という学問を専攻していた。ざっくり言うと文化の側面から 人について考える学問。
もともと興味のあった「手工芸」について深く考えたいなと思って、この分野を選んだ。

文化人類学で手工芸を研究するとき、その題材として選ばれるものは染めものや織ものが多い。
例えば、インドネシアのバティック(ろうけつ染)やインドのカディ、イカッタなどの先行文献は、たくさんある。

だけどわたしはどうしても「紙と手工芸」というテーマで卒論を書きたかった。
担当の先生から「先行文献が少ないから、それは大変だと思うよ...?」とやんわり窘められながら、研究を進めていた。

論文検索やインターネットで
「手漉き紙」
「アジア」
で検索して出てくる日本語の文献はタイかネパールのものしかなくて、「その2択だったら なんとなく面白そう」という理由でネパールの紙を研究することにした。

その結果、先生の心配通り やっぱり文献の少なさはどうしようもなくて、卒論を書くだけの資料が揃わなかった。
だから卒論の中間発表の2週間前に、泣く泣くネパールに現地調査に行った。何度も言うけど、ネパールに行きたいなんて思わなかった。


旅の詳細は書き出すときりがないので、(わずか10日間の旅でノート50ページ分の日記を書いていた)いつか改めて記事にするとして。

とにかくわたしは、出会ってしまった。
日本にいるだけでは出会えなかった鮮やかで異質な数々の紙と、その紙で作られたノートや照明、封筒、ガーランド。
たった1カ国で、しかも特に行きたいとも思っていなかったアジアの辺境の地で、こんなにも心動かされる紙との出会いがあるなんて。


「世界には、どんな紙があるんだろう」

ネパールに行ってから、いつも心のどこかに その期待が消えずにあった。

大学生の時、研究のテーマに「ネパールの手漉き紙」を選んだこと。
なんとなく行った現地調査で、予想を遥かに上回る楽しくて興味深い出会いがいくつもあったこと。

これが、わたしが紙をすきな理由の1つです。


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