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Withコロナ時代の人生の節目には、祝儀袋を贈らなくなるのだろうか

こんにちは! 紙単衣の水引デザイナー小松です。

先の見えない自粛の日々が、続いていますね…。
そろそろ、いつか来るはずのAfterコロナまで生き延びるための短期策を練るよりも、Withコロナの世界を生きる(=この生活を楽しむ、経済を回す、続ける)覚悟を決めた方が、未来が見えてきそうな感じでしょうか。。。

今、多くの業界が発狂しそうな状況だと思いますが、私の仕事「水引」の業界も、根底からひっくり返りそうだな〜と勝手に考えています。

今回は、2020年4月21日現在のwithコロナ時代について考えていることを綴ります。

冠婚葬祭の変化で祝儀袋はなくなる!?

オンライン

通年を通して水引の主力商品である祝儀袋が、冠婚葬祭の縮小、オンライン化が進めば需要激減の予想です

これまではキャッシュレス化が進んでも、QRコードの紙が祝儀袋に入っていて手渡しする世界かと予想していたのですが、既存のオンライン結婚式やオンライン葬儀を見ると電子決済一択

書留で現金を送っても受け取りの手間になるし、現金にウイルスが付着するという懸念、盗難の危険、エコの観点から考えても電子決済を選択するのは理解できます。気持ちをのせて贈るものなので、味気ないですが、主催者が儀式を執り行う上で大事なのは祝儀の受け取り方ではないですものね。

せめて、親しい人の出産祝いや入学祝いには、御祝儀袋が使われてほしいな〜と思うのですが、こちらに関しても出産祝いは直接人同士が会わない、進学しても履修内容が変わるだけでモニターの前の過ごし方は同じ…となると、入学祝いの価値も変わってきそうな気がします。

祝儀袋を贈ることに価値を感じる人がどれだけ居続けるか…、希望としては戦前のように一般教養として日本人の贈り物の仕方「折形礼法」を学校教育に含めると日本人なら知っている文化として、水引とその結び方の意味や技法がなんとか残るのではないかと思います。

祝儀袋以外の水引製品

祝儀袋に次いでよく使われる水引製品は、お正月飾りです。
季節ものなので、需要を増やすのはなかなか難しそうです。
家で過ごす時間が増えたことで、室内飾りを季節に合わせて丁寧に取り替えて過ごす人が増えれば、季節のお飾り系も需要が出てくる可能性がありますが、水引以外のものも選択肢にあり、各家庭の収入が減少することを考えると母数は限られそうです。

その次に昔からあるのは、寺社仏閣の授与品
お札やお守りに水引がついているのを見たことがある人も多いと思います。
近年は、参拝が観光化しているので、今の自粛状況だと厳しくなりますね。厄払いや七五三は儀式をしたい人が一定数残りそうな気がしますが…。

あとは、ラッピング材料として水引が使われるケースが近年増えています。
オリンピックに向けて日本文化応援のムードがあったので、商品に付けたいという会社さんも増えていました。生活必需品以外の買い物はネット通販を利用する人が増えるので、他店との差別化のために水引ギフトラッピングをつけたいという企業が今後も増えることを期待しています。

この他の製品だと、アクセサリーやインテリア、ディスプレイ、テーブルコーディネートなど、新たな水引の活用方法をここ数年模索し続けていますが、上述の製品ほどは量産品として定番化していません。

ハンドメイドとしての水引

以前の記事で書いたとおり、水引のハンドメイドブームは右肩上がりで進行中です。作家さんたちの活躍もめざましく、今年になってからもすでに2冊水引の手芸本が新たに出版されています。

ハンドメイドが流行るということは、細工をした加工品ではなく、材料として紐の状態の水引と、気軽に作れる作品の開発需要が増加します。

水引の紐は機械生産が主流で、1日に何万本も作ることができます。

今の水引産業は、高度経済成長時代の発展から細工製品を薄利多売するための大量生産大量消費に向けた製造を続けています。各会社が家庭内内職者や海外工場を抱えています。細工製品の需要が減ると、製造する労働者も減ってしまうことでしょう。家庭内内職はパートに出るよりも安全のためにやりたい人もいるかもしれませんが、賃金が激安なので、企業のリモートワーク化が進むのであれば、その方が良いという人が多いでしょう。海外工場は中国と東南アジアにありますが、今後の国際交流はどうなるのか…まだ様子見ですね。

予想する業界変化

水引業界は長らく日本の形式的な文化、風習に使われる製品を中心に作ってきました。長野県と愛媛県を中心とする地域産業があってこそ独立した小規模事業者や個人のクリエイターが活躍しています。

図解1

これがwithコロナ時代におうち時間の楽しみとしてハンドメイド水引需要が高まると、極端に言えば、図が逆転しそうに思います。

図解2

業者は水引素材の機械製造・問屋としての機能が強化され、作家やクリエイターたちがファンを牽引して市場を動かしていきそうです

倒産する業者が増えれば、素材の価格は値上がりするかもしれません。そうなると、水引以外の材質の紐で結び細工を楽しむ人が増えることも考えられます。

お祝い事など生活の変化を妄想してみる

結婚
人と会うのがオンライン中心だと、一生で出会う人の人数も限られてくるのでハードルがだいぶあがります。マッチングアプリ的なオンラインサービスが信用度を上げてオープンに使われるようになるのでしょうか。同居している人のみが常時リアルに面会できる人となると、誰と住むかが血縁家族の枠を超えて考えられるようになりそうです。

●出産
妊婦さんの負担があがります。検診のたびに感染リスクに怯え、散歩も控えめで、立ち合い出産や出産後の面会も不可となると、医療は進歩していると言えども心細くて恐怖。日頃の運動不足で体力が低下していると難産も増えそうです。
そもそも濃厚接触しないようにという世界なので、体外受精と人工子宮から生命が誕生するのが当たり前になるのかもしれません。人造人間、クローン人間も出てきたり!?

●子育て・教育
学校は、ドラえもん的な万能ロボットをひとり一台提供して、個人の習熟や関心の度合いに合わせて学習できるようになったら、親が目を離しても小さな子が独学できるのではないでしょうか。体験型学習も一緒にやってくれたり、道具も必要に応じて用意(注文)してくれたり、体調管理や運動も遊びも一緒にしてくれたら、もはや親友、生涯のパートナーになれます。大人にもひとり一台ドラえもんがいて欲しくなりますね〜。

さいごに

江戸時代の日本には、髪を結うための紐「元結(もとゆい)」という必需品がありました。今の水引とほぼ同じ作り方で作られた紙紐です。しかし明治初期の断髪令によって元結は需要が激減したため、元結の製造業者たちは代わりにカラフルな飾り紐の水引を主力製品にしたという歴史があります。
今後の冠婚葬祭の在り方によって祝儀袋の需要が激減すれば、水引業界は明治時代と同等の転換期を迎えそうです。

「水引デザイナー」と名乗る私は、もちろんハンドメイド水引の拡張にも取り組んでいますが、地元水引企業とともに製造品を作ることに重きを置いて活動しているので、今回の予測はディストピア的想いで書いています。
また、ご祝儀袋のリメイク方法を提案していきたいという意向も持っているので、祝儀袋の利用率低下は、その活動も難しくなってしまいます。結婚式のウェルカムスペースを飾るレンタル用品も作ったばかりなのですが、もう日の目を浴びる日は来ないのかもしれません。。

いつの時代も、需要があることが仕事になるので、今私ができることで人の役に立てることは何なのか、また誰に向かって、誰と一緒に、どう働きたいか…、むしろ何が幸せかをこの長い自粛期間でじっくり考えていきます。

【この記事に関するお問い合わせ先】
kamihitoe.shop@gmail.com

サポートいただいた際には、新たな水引製品を開発するための材料や小道具を充実させたいと思います!オーダーメイドのご依頼もお待ちしています。