上村秋樹

時々無性に衝動に駆られ、書き綴った短編小説を上げています。 新潟県在住。3度の飯よりバ…

上村秋樹

時々無性に衝動に駆られ、書き綴った短編小説を上げています。 新潟県在住。3度の飯よりバイクが好き!

最近の記事

夢の中の微熱

#創作大賞2024 #恋愛小説 「もう一度、あの頃に戻ってやり直したい」、誰もが一度は思ったことがあるはずだ。あの時、こう言っていたら、あの時、こうしていれば、あの時・・・。 残念ながら人生に、「たら、れば」がないことを、分かってはいるが、最近は何気なく、あの頃に戻ってやり直したい、という想いが、虚無に包まれたシャボン玉のように、浮かんでは消える。  青春と呼ばれる時代から三十年近くが過ぎ、いわゆる「不惑」と呼ばれる齢を順調に重ねてきた。社会に出て年を重ねるにつれ

    • 10月の向日葵

      とある精神疾患者の何気ないものがたり #創作大賞2024 山倉  蒼いカーテンが風で波を打つ、しんと静まり返る訳でもないが、それらが却って気持ちを落ち着かせる。数万冊の本を蓄えた本棚が、きれいな列をなし並ぶ脇の閲覧席に座り、図書館を見渡しながら、重いノートパソコンをおもむろに鞄から取り出し開く。いつも座る席は、最後列の本棚側の椅子だ。ここならば、不用意に背後をとられる必要もない。(もっとも、江戸時代ではないので、背後を取られて、「切り捨て御免」といった事はないのだが)自

      • 倫敦デイズ

        ロンドン留学記と思いきや、恋に落ちると言うベタな物語 レスター・スクエア ロンドンの中心部、通称セントラルのピカデリー・サーカス駅前を通り過ぎ、俺は何気なく一駅先のレスター・スクエア駅に向かって中央通りを歩いていた。 傾き始めた日光に照らされた石造りの建物が、光と影の所作によってより一層美しく輝く。週末、ロンドンの空気を胸一杯に吸いながら、一人気ままに散策をしていた。買い物やエンターテインメントを楽しむ人々で、街は溢れかえっており、活気に満ち溢れている。人は沢山い

        • 潜る人

          一番初めに書いて見たショートショート。裏には色々伝えたいものがあるが、非常に分かりにくい書き物 初期の村上春樹氏のような と言ったら怒られる。 笑 毎年、夏になると当然のように海に潜る。潜る事に意味がある訳ではない。海中は自分が自然体で居られる、唯一の場所。だから潜る。ただそれだけでそれ以上でもない。 潜っていると、必然と沢山の魚や貝に遭遇する。見つかると怒られるのだろうが、潜った日は、その日家族が食べる程度の量を、海の恵みとして頂き、享受させてもらう。 海は、入り始めの四

        夢の中の微熱

          鼓動に乗って

          各地をバイクで旅しながら出逢う縁。それがとても素敵に繋がる物語 最近、何故か同じ夢を見る。夢の中では、男女二人の幼児が、電動の幼児用バイク「ポルカ」に乗って遊んでいる。幼児の内一人は俺の様だ。二人は何やら話しては、笑いながらポルカで家中を走り回っている。夢の中に自意識を潜り込ませ、もう一人の女の子は、一体誰なのだろうと思い出そうとすると、いつもそこで夢から覚めてしまう。  俺はヤマハのSR400と言う、一九七八年に発売され、四十年以上のロングセラーとなっている、レトロなバ

          鼓動に乗って

          Fake or truth

          気付けば犯罪者と結婚していたと言う、サイコホラーのつもりのショート 私  二〇〇四年十二月十日、私は地元商店街の緑や赤で煌(きらめ)めく、クリスマスデコレーションを見て溜息(ためいき)をついた。こんな時期に大好きな透くんと一緒に居られたらいいのに。 三月に高校受験が控えているので、私達中学三年生は勉強しなくてはいけないけれど、無性に彼氏が欲しい年頃でもある。 冬はクリスマスやバレンタインデーなど、恋人達の為のイベントが目白押しなのに、その先にはしっかりと受験が

          夢の中の微熱

          もう一度あの時に戻ってみたらどうなるのか。それを実証した小説。                「もう一度、あの頃に戻ってやり直したい」、誰もが一度は思ったことがあるはずだ。あの時、こう言っていたら、あの時、こうしていれば、あの時・・・。 残念ながら人生に、「たら、れば」がないことを、分かってはいるが、最近は何気なく、あの頃に戻ってやり直したい、という想いが、虚無に包まれたシャボン玉のように、浮かんでは消える。  青春と呼ばれる時代から三十年近くが過ぎ、いわゆる「

          夢の中の微熱

          10月のひまわり

          とある精神疾患者の何気ないものがたり 山倉  蒼いカーテンが風で波を打つ、しんと静まり返る訳でもないが、それらが却って気持ちを落ち着かせる。数万冊の本を蓄えた本棚が、きれいな列をなし並ぶ脇の閲覧席に座り、図書館を見渡しながら、重いノートパソコンをおもむろに鞄から取り出し開く。いつも座る席は、最後列の本棚側の椅子だ。ここならば、不用意に背後をとられる必要もない。(もっとも、江戸時代ではないので、背後を取られて、「切り捨て御免」といった事はないのだが)自宅で詰めてきた水筒から、

          10月のひまわり