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でぃすぺる

本日、紹介する本は、今村昌弘先生の「でぃすぺる」です。

あらすじ

最後の夏休みを終えたユースケは、自分のオカルト趣味を注ぎ込むために、新聞係に立候補する。
思う存分、怖い話を新聞の掲示板に書けると思っていたのだが、なぜか真面目な学級委員長であるサツキも、新聞係に立候補した。
そこに転校してきたばかりの少女、ミナも加わり、三人で「七不思議」について調査を開始することになる。
優等生であるサツキが、「七不思議」に興味を持ったのは、一年前に殺害された従姉妹のマリ姉の死の真相を突き止めるためだった――。

感想

あらすじを読んで頂ければ分かる通り、本作はジュブナイルものです。
余談ですが、ジュブナイルとは、少年期を意味する言葉で、日本では児童、ヤングアダルト向けの呼称として使われています。

私は、こういうジュブナイルものが大好物です。

私が小学生の頃、「スタンドバイミー」とか、「グーニーズ」とか、「ロストボーイ」「エクスプロラーズ」などが流行っていたこともあって、自分と同年代の少年少女たちが、冒険を繰り広げる物語に、心が躍り、色々と真似をしたくなったものです。

ジュブナイルものの面白いところは、何と言っても、思春期を迎える直前に、ちょっと背伸びをしている少年少女たちの心情の揺れ動きというのは、ノスタルジックで、独特の空気感があるものです。

もちろん、それだけではなく、子どもが主人公になるので、多くの行動制限があることも、物語に独自性が生まれます。

本作でも描かれていますが、移動手段であったり、お金の問題であったり、子どもは何かと不便なのですが、そうした制限があるからこその面白さというのがあるのです。

自転車で走り回るシーンとか、最高ですよね!!

そして、これも大切な要素なのですが、主人公たちが子どもであるが故に、重大な情報を入手しても、それを信じてもらえないのです。

だから、自分たちで動くしかない!! と奮い立つ展開は、胸が熱くなりますね。

と、ここまでは、ジュブナイルものの魅力を語ってきましたが、本作「でぃずぺる」が、ジュブナイルものの魅力を内包しているのはもちろんですが、「屍人荘の殺人」の今村昌弘先生が書くのですから、それだけに留まりません。

小学生を主人公にした、オカルト冒険譚だと思っていると、痛い目をみます。

「七不思議」という古典的なオカルトを扱いながら、一年前に殺されたマリ姉の遺品に、「七不思議」のファイルが残されていたのはなぜか? しかも、「七不思議」のはずなのに、なぜか六つしかないのか?――という謎を追うことになります。

単純なオカルト冒険譚ではなく、本格ミステリとしての側面も持っているのです。
いや、むしろ、本格ミステリの方が作品に色濃く出ているように感じます。

読者を謎に引き摺り込み、翻弄していく手腕は、お見事!!という他ありません。

ジュブナイル×オカルト×ミステリが見事に融合した傑作小説です!!

興味がある方は是非!!

作品詳細

「でぃすぺる」今村昌弘
文藝春秋

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