8.5〜8.8

毎日リハ。
リハの様子を写真に撮ってSNSでシェアしてもらいたいとプロデューサー(舞台制作者)に言われたものの、
なにせ、衣装もなく、セットもないから、写真を撮っても代わり映えしない。さらに、スタッフ陣が来ているわけでもないので、リハをしながら演出家としての本来の仕事のほか、セリフのチェックやら音響操作やらも同時にやらなくてはいけないという状況で、
ようするに写真はすぐに撮らなくなってしまったよ、という話。

5日目。
リハのあと、家に戻って9時にエドゥとマリーナが家に来るというから夕飯を作った。親子丼とみそ汁。チラも日本食を作ると言ったら来たがっていたが先約ありとのこと。でも10日後には日本なんだけど・・・どうせ遅れるだろうなと思ってのんびり作っていたらけっきょく来たのは9時半。前回も書いたけど、こっちの夕飯は遅い。前に住んでいたときもだいたい10時くらいから作り始めてた。
けっきょく12時過ぎまであーだこーだしゃべっていて、もう今日は終わり!ってなって、2人を外まで送りに行こうとしたとき、鍵を部屋に置いたままドアを閉めてしまった。オートロック。マンション的なところに泊まっていて、1階の玄関口も鍵がないと開けられない。なんとか2時間後に解決した。無駄金を使ってしまった。新作の台本をちょっと書いて寝た。まだ肉食べていない。

6日目。
リハはまだ全部を通してできない……。でも、演出家である自分が上から目線で怒ってもしかたないのと、そういうやり方をどうしてもやってしまいそうになるのをやめたいと思っているので、しない。初演の京都のときも思ったけど、言葉が完全に通じ、いわゆる「文脈」を共有できる(と信じ込んでいる)と、気づかなかったかもしれないことを、彼らとのリハーサルでは意識することができる。ようするに、自分が嫌だと思ったりやけに気にしたりすることを彼らに強要できるのか? という疑問。自分が正しいと思うことや、自分のセンスや美学を重んじることは、たぶん「作家」には大事なんだろうけど、そんなに意味ないかもなとも感じる。言い方を変えれば、気にすること嫌だと思うことは、変化するものとして受け入れることもできる(だからたいしたことない)、ということ。こうやって書く前には、すごい変化が自分に起こっているから、このすばらしい変化を公表しよう!という気持ちがあったんだけれども、書いてみるとどうもたいしたことがないなと思う。でも、変化はあったほうがいいと思うから、たいしたことなくても気にしない。
リハのあと、チラの家でうどんを打つことになった。少ない人数だと思ってたら10人来た。なんでこんなことしなきゃいけなくなったのか納得がいかないけど、そのへんに売ってる小麦粉と水道水と塩でも、だいぶちゃんとうまいうどんが作れたのでよかった。これでどこでもやっていけるなと思った。やつらは日曜に迫る選挙の話題でいそがしく10人中9.5人くらい同時にしゃべっていた。おれはコックじゃねーぞと思ったけど、コックだった。餃子も買ってきて焼いてやった。豚肉と白菜の無水鍋、厚揚げの焼いたのなども出した。ピロヤンスキーとチラとエドゥとあとよくわかんないけど何人かに手伝わせた。今日のうどんは、今日ブエノスアイレスで一番うまいうどんだったと自信を持って言える。いまだ(牛)肉が食べれていない。

7日目。ようやく通し。そしてようやく牛肉を食べた!
前によく行ってたローカルなところ。あいかわらずうまい。チョリソ×2、骨つき肉(2,3人用)×2、サラダ、ボトルワイン。3人で行って、1人400ペソ(940円くらい)だ!

8日目。通し2回目。まだ満足しない。ピロヤンスキーがどうも低調。観客がいると急に張り切りだすことは知っているので、ベースとして底上げできそうなコメントだけしておく。彼とやりとりしていると、演出家はイメージとか思想的なこととか言いたくなるんだけど、それって演出家の満足のために言うんじゃないの?という気もしてくる。いっぽうでチラには具体的な動きの話をしても混乱させるだけなので、イメージを伝えるほうがうまく行く……。エドゥには両方ミックスさせて言っている。
ありがたいことに、「バルパライソの長い坂をくだる話」のブエノスアイレスでの出版の話が来た。

ちょっと日本にいないうちに、SNSを通じて伝わってくる日本の状況が、どんよりしすぎている気がするから、国内ではもっと、どんなに気が滅入るのだろうかと考えてしまう。SNSとはしばらく距離をとったほうが自分にとっては健康的だろうなと思う。けど、いつもの癖で見てしまう。なにがしんどいって、SNSでは、あの「スピード感」で、「ただしく」発言しないといけない、という感じがして、それについていく能力がないから、しんどい気持ちになる。高校の友だちとかの投稿見ていると、全然その生活に関係なさそうだから、しんどいと思うその感じも、けっきょく一部だけのことなんだろうなと思う。こちらでは日曜日に大統領選の予備選挙があるので、どこへ行ってもその話題で持ちきりである。こっちは義務投票制なので、投票率は高い。アーティストじゃなくても、そういう話をちまたで、SNSで、している。親戚の話ではテレビもずっと討論番組ばっかりやってるとか。日本で投票を義務化するなんてことが仮に起きたら、誰もがそういう話をするんだろうか。と最近よく考えている。

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