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「夢は無限」 シマダダイチ、東京へ。

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約束したインタビュー場所に、シマダダイチは小さなバックひとつだけで現れた。前回のインタビューで、大きなスーツケースとバッグを抱えていた旅行者のような彼とはずいぶんと装いも空気感も違う。その軽やかな姿を見て、本当に東京に拠点を移したんだな、と実感した。

「まだまだ部屋の荷物が片付かなくて、落ち着きません」

シマダはそう近況を伝えながら、人懐っこい笑顔を見せた。

2023年12月末、シマダダイチ選手が活動拠点を大阪から東京に移すことを、自身のYouTubeチャンネルで発表した。

ポケカ四天王であり、YouTubeで活動するプレイヤーとしても日本国内トップランナーであるシマダが、関西を離れ東京にわたるのはどんな理由があるのか。あらためて彼自身に話してもらった。


YouTuber としてのシマダダイチ

シマダは学生の頃からYouTubeでの発信を始めた。現在はポケモンカードプレイヤー兼YouTuberという地位を確立しているが、当初から今のような姿を思い描いていたのだろうか。

サーニーゴチャンネル

「ゲームのプロプレイヤーのように、ポケモンカードだけに専念して、生活できることを夢見ていましたけど、(当時の)僕に投資してもらうにはメリットがなさすぎでした。なので、まずは自分を知ってもらうことが必要だろう、と考えてYouTubeでの発信を始めました」

ポケモンカードの世界で発信力を身につけることで、自身の価値を高めようという狙いがあったという。その中でYouTubeでの収入を中心に生活の基盤が出来上がっていった。

国内のポケモンカードゲームでは大会に入賞しても賞金が出るわけではない。世界大会で良い成績を残せたとしても、それだけで生活をしていくことは極めて困難だ。大会で収入が得られない以上、「それ以外」での収入を作るしかない。発信力と生活基盤の確立の双方を目指せるプラットフォームが YouTubeだった。

YouTubeでの発信により多くのファンと国内トップレベルの発信力を身につけたシマダが、東京を目指す理由のひとつはまさにYouTuberとしての未来のためだ。

「東京はたくさんの人がさまざまな活動をしている場所です。他の発信者とコラボするにしても、彼らを自分たちのイベントや企画に誘うにしても、東京にいることを生かさない手はないと思っています」

シマダは自身のチャンネル登録者数100万人を目指すことを公言している。その目標を達成するためには、東京への進出は必要不可欠だという。

四天王としてのシマダダイチ

「同じように、ポケカ四天王としての活動も東京が多くなります。昨年(2023年)も大阪と東京を往復する生活で、移動にかなりの時間を費やしていた感覚があります」

ポケモンカードチャンネルの収録をはじめとするメディア活動はどうしても東京が中心なのだという。移動手段は整備されているとはいえ、時間も体力も消費することは間違いない。第6期ポケカ四天王として活動を継続することになったシマダにとって、東京に拠点を移す理由として時間の短縮は大きなものだろう。

ポケカ四天王での活動は年々幅広くなり、チャンピオンズリーグ(CL)などの大型大会とは別に、ポケカ四天王に挑戦!などの独自企画も開催された。こうした子どもたちと交流できるイベントは、シマダにとっても素晴らしい体験だったようだ。

「(ポケカ四天王に挑戦!には)いろんな子達が参加してくれました。ガチの競技として取り組んでいる子も、もっと楽しむためにやっている子も。

いろんな子がいるんだな、という勉強にもなりましたし、対戦後に『うぉーっ』てなっている顔が、いい顔しているんです。(それを見ると)やる気が出るんですよね。

プレイヤーとして目指したい、会ってみたい、話してみたい、対戦してみたい。いろんな温度感はあると思うんですけれども、(彼らがポケモンカードを)続けてもらえる目標になれたらいいかな、と思っています」

スポーツの分野でトップ選手が子どもたちの憧れになるように、シマダもポケモンカードの世界で、彼らの目標と見られるようになってきている。それはポケカ四天王としてのシマダにとって、周囲から期待されている役割のひとつだろう。

「(ポケカ四天王の役割として)一番重要かも知れないですね。その意味でも直接会って、対戦したり会話したりというような機会は、これからも大切にしたいと思っています」

ポケカ四天王としての活動についてはシマダ自身からも、意見を出したりしているのだという。そうした取り組みに積極的に参加するためにも、東京を拠点とすることには大きな意味がある。

「ポケカ四天王に挑戦」は今年も開催されることが発表された


プレイヤーとしてのシマダダイチ

スカイツリーと隅田川とシマダダイチ選手

最後にプレイヤーとしてのシマダダイチにとっても、東京は非常に魅力のある街である。取材は彼が東京に転居して一週間経っていない時期だったが、すでに都内で開催された練習会などに、何度も参加していると嬉しそうに話してくれた。

「大阪にも強いプレイヤーはたくさんいるわけですが、東京にはさらに多くのプレイヤーがいます。平日の夜に集まってたくさんの練習機会を作ることもできますし、その密度や強度を高くすることだって可能です。まだ引越しの整理が済んでいないのですが、それより先に練習を繰り返しています」

プレイヤーとしてのシマダダイチは、昨年話を聞いた時と変わらず、『毎年Pokémon World Championships (WCS) に出場し、毎回Top Cutに残る強豪選手になる』という目標を設定している。

横浜で開催されたWCS 2023には、前回大会(WCS 2022)の準優勝選手として招待されたシマダだが、今年のWCSへの出場権はまだ手にしていない。WCSへの出場権を勝ち取るためには、国内の大会で結果を出すほかにない。

ポケカ四天王としてCLへの参加権は持っているシマダだが、それに甘えることなく、しっかりと目標を見据えて研鑽を続けている。

夢は無限に広がる

ここまでは大阪でやってきたことの継続、もしくは強化の話だったが、東京に進出して新たにやってみたい、始めたいということは、まだまだたくさんあるのだという。

その一例として挙げてくれたのが、ポケモンカードをはじめたてのプレイヤーでも安心して参加できる、ポケモンカードのイベント開催だ。

「大会形式のイベントはこれまでも開催してきました。でもジムバトルに出ることもためらってしまうという人が、僕のチャンネルのメンバーシップにもいるんです」

プレイヤー人口が増え、より対戦環境が整ってきた近年でも、家の外での対戦を「怖い」と感じる人は少なからず存在する。そんな人にとっては、いくらシマダダイチと会える、対戦できるチャンスがある機会だとしても、そうした大会に参加することに大きな壁を感じてしまうことだろう。

「ポケモンカードにはいろんな楽しみ方がありますが、やっぱり最終的には対戦したりコレクションを見せあったり、人との交流が一番楽しいと僕は思っています」

デッキをつくること、カードを集めること、その全てが最終的に人との交流につながっていくことが楽しいのだ。そう語るシマダの姿は、プレイヤーとしての自身の世界大会出場を語る時よりも、いっそう熱がこもっているように見えた。

「夢は無限に広がっている」と語る

「(イベントに参加することを)ためらっている人がいるなら、その一歩目を手助けできるような、そんな存在になりたいと思うんです。一歩出て、(人との)繋がりが増えるとか、カードゲームの面白いところを知ってほしいな、と。

情報発信でも、自分がイベントに参加することでも、なんでもいいから、そっとその背中を押すことができないか、と考えています。

どんな形で実現できるかはまだわかりませんが、東京に来てから無限にできることも、やりたいことも増えています。

そしてそれは(ポケモンカードの)競技をしている側として発信力を持っている自分が、今やるべきことだし、やりたいことかな、と思っていますね」

自身がポケモンカードを楽しみ続けるために身につけた発信力を、今度はポケモンカードの未来のために活用する。

プレイヤーとして、YouTuberとして、ポケカ四天王として。それぞれの立場で、そしてそれを超えて、シマダの夢は無限に広がっていく。

今回の東京進出は、「誰かの一歩を手助けする」という夢を実現するために必要な、シマダにとって大切な一歩なのだ。

(了)

文:zb


▼ 2023年1月に行われたシマダダイチ選手へのインタビューはこちら(現在有料公開中)


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