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[特別企画] WCS 2014キセキの世代 | 第一話 「LCQからのふたり」

Pokémon World Championships (以下WCS)の歴史の中で、WCS 2014のジュニアカテゴリーほど日本人選手の躍進が目立った年はないだろう。

大会上位からなる決勝トーナメント、いわゆるTop Cut に名前を連ねる8人のうち、実に6人が日本人選手、準決勝進出者4名はすべて日本人選手だったのである。

ジュニアカテゴリーに参加した日本人選手の数が多かったわけではない。確実な数字は手元にないが、現地にいた人たちの話から、日本人選手は10人にはならない程度のメンバーだったという。そのなかの6人がBest 8に名を連ねるというのは、快挙というよりもはや異常事態と呼べるのではないか。

わたしはこの大会に参加した選手たちを「キセキの世代」と呼びたい。そんな彼らが、あの時になにを思い、そして10年近くが経過した今、どのように振り返るのか。その記録を短期集中連載という形でお届けする。


「あの子は誰?」

2013年5月。オグニタカシ選手が初めて参加した大型大会「バトルカーニバル 2013 スプリング 名古屋大会」で、決勝戦にまで勝ち上がった時、周囲からは誰からとなくそんな言葉がつぶやかれた。

当時のポケモンカードゲーム界隈は小さなコミュニティで、強いプレイヤーは同じ地域の子どもであれば大抵見聞きしたことがある環境だった。しかし同じ名古屋近郊に住むというその選手のことを、誰も知らなかったのだ。

「そりゃそうです。大きな大会に参加するのは初めて。それどころか60枚のデッキをさわったのはその年の2月ごろからで、3ヶ月しか経っていませんでしたから」

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