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「黎明の学師」書籍化への道のり5

0. 目次
1.  Amazon PDO + Kindle 出版について
1.5  Amazon KDPが日本でペーパーバックの印刷開始
2. 書籍化への流れ
3. 加筆改稿・編集作業
4. 装丁について
5. 表紙について(本記事)
6. 発売までの道のり

表紙について

 最近の書籍の表紙はキャラ絵が人気だと思いますが、私は最初から「混沌の惑星」の表紙をキャラ絵にはしたくないと考えていました。登場人物に具体的イメージを与えてしまうことで、読者の方から空想の余地を奪うのが嫌だったのです。視覚が受け手に与える情報量は圧倒的であるだけに、文章で自分の世界を構築している私には、作品に視覚情報を付加することに不安がありました。
 もし表紙にイラストを用いるのであれば、「混沌の惑星」の世界観を伝えてくれる、作品世界のイメージにぴったりの画にしたいと思っていました。
 もちろん、素人が個人で出版するものについて、身の程知らずな願望だという自覚はありました。それ以前に、そんなイラストを描いて下さる方の当てなど全くありません。ですから、雰囲気の良い写真に文字でデザインを入れた表紙にするのが良いと考えていましたし、その方向であだん堂ゆきさんとも話し合っていました。
 ところが思いがけず、夢見ていた通りの、いや、夢見ていた以上の表紙絵を描いて頂くことが出来ました

「黎明の学師 混沌の惑星」表紙サンプル

左手に見えるのは作品の舞台となるティエラ山と、ティエラ教義本院の建物です。ゴシックとオリエンタルの建築様式が融合したような荘厳な建造物が、朝陽を受けて黄金色に輝いています。
その奥に北の連山ノルテ・コルディエラが連なり、遠景にはドームに透ける先進都市が微かに見えています。
小さく煌めく粒は星ではなく、エネルギーの粒子を視覚化したものです。作品の舞台である惑星が混沌エネルギーに満たされていることを表現しています。
手前に見える小さな二つの人影は物語の主人公です。

*本の背厚があまりないので、販促に用いている画と少し縦横比や構図が異なります。

 この素晴らしい表紙絵を描いて下さったのは、gehn / Tsutomu Kitazawaさんと仰るコンセプトデザイナーの方です。
 gehn / Tsutomu Kitazawaさんとの出会いは、「縁」と表現する以外に説明を思いつきません。
 編集と装丁を担当して下さっているあだん堂ゆきさんが、Twitter上でご自分の好きな絵にいいねを押しつつ感想を伝えていたところ、gehnさんご自身がリプライを下さったのがご縁のきっかけです。
 詳しい経緯は、下の記事であだん堂ゆきさんが紹介しています。

 こんな些細なきっかけから表紙絵の作製を依頼し、二つ返事で快諾頂き、あれよあれよという間に想像を遥かに超える美しい表紙絵が完成し……と、何がどのように転がってこれほどの幸運に恵まれたのか、自分でもよく分かりません・笑。自分の人生にこんなラッキーな、都合の良いことが起こるもの??? これって現実??? と、何度思い返しても話がうますぎて信じられない思いです・笑。
 でも考えてみると、ゆきさんがgehnさんの絵を好きだという気持ちと感動を伝えたこと、数え切れないほどのいいねを貰っていたにも拘わらずgehnさんが丁寧にお礼を下さったこと、お二人の人柄が繋いでくれた縁だなあ……と思います。(←つまり私は何もしていない)
 本当に、ゆきさんの行動力と、出会ったばかりの何者とも知れぬ(笑)我々からの依頼を快諾下さったgehnさんの懐の深さに、心から感謝です!

 絵を見て頂ければ、gehn / Tsutomu Kitazawaさんの描いて下さった表紙絵が「黎明の学師」の作品世界を完璧に再現しつつ、作者の私のイメージすら凌駕するものであることは容易に伝わると思います。この絵が自分の中だけで創り上げてきた作品の世界に広がりと奥行きを持たせてくれたように感じています。
 こうして表紙絵を眺めていると、つくづく「本」というのは数多くの要素が詰まった一つの「作品」なのだと感じます。原稿があれば仕上がる、ただ文章の印刷された出版物ではありません。
 書籍にすることによって、私の書いた文章にゆきさんによる編集や装丁という新たな要素が加わり、更にgehn / Tsutomu Kitazawaさんが文字とは全く異なる形で作品の世界を表現して下さり、ものすごい正の化学反応が起こっているをのを実感します。
 ……ああ、私って本当に文字しか書いてない!!!笑
 願わくば、この見事な絵と私の文章が相乗効果を生み、「黎明の学師」が少しでも皆様の琴線に触れる本に仕上がりますように!!!

表紙絵を使って作成した販促用チラシ

gehn / Tsutomu Kitazawaさんの各種アカウントはこちら↓

gehn / Tsutomu Kitazawa
ArtStation: https://www.artstation.com/kita_tom
Twitter: https://mobile.twitter.com/gehng5555
pixiv: https://www.pixiv.net/users/9933519

表紙サンプル集

 当初の予定では、作品のイメージに合う写真を探して、それに文字でデザインを入れるような装丁の表紙を考えていました。
 あだん堂ゆきさんに「好きな装丁の表紙を送って下さい」と言われたので、Amazonで本の表紙を検索して好きなものを片っ端からゆきさんにメールで送りました。(結果、9割以上が海外翻訳小説でした。)
 そのイメージを元にいくつかゆきさんが試作して下さった表紙を紹介します。

 まずは一番「黎明の学師」のイメージにぴったりだと感じたものから。当初は帯風のデザインを付ける予定だったので、文字は上寄せで下はシンプルです。とても気に入ったので、初期の販促用チラシはこの写真を使ってデザインして貰いました。

空や大地の色合い、荒涼とした雰囲気が「混沌の惑星」にぴったり

 次は私が一番気に入ったデザイン。色合いとタイトルのレイアウトが大好きです。ただ、作品世界で水は地下にある設定でして……泉や小さな湖はあるのですが、それらも今回の「黎明の学師」には出てきません。

山の連なり、水面、色合い、タイトルのレイアウト、全て好き

 その他のサンプル表紙たち。

好きなデザインだけど、山がティエラ山の雰囲気とは異なるかな
これは私が「DUNE砂の惑星」の表紙を好きだと言ったから・笑
現代ものっぽい?
抽象的なデザインのものも

「黎明の学師 混沌の惑星」冒頭の試し読みはこちらから!

遥か未来に人類が移住した惑星では、あらゆる物質に混沌エネルギーと呼ばれるエネルギーが宿っていた。初期移民である先住民は、この惑星のあらゆる物事を探求し、生命との調和の道を探る学問体系「ティエラ教義」を生みだし、惑星本来の環境下で暮らしている。一方、数百年後に移住した後期移民は、地球環境に近い人工都市を築いて暮らし、都市人と呼ばれていた。

ティエラ教義の総本山であるティエラ山に二年ぶりに帰ってきた学師のエドガルドは、「アダンの再来」と呼ばれる学徒ナサニエルと出会う。養い親である大学師プラシドから、ナサニエルは身分を偽りティエラ山に潜入している都市人だろうという話を聞かされたエドガルドは、ある作戦をナサニエルに持ちかける。
初めは己れの目的のために互いを利用しようとしていたエドガルドとナサニエルだったが、徐々に信頼関係が育まれていく。それに伴い、隠されていた二人の過去も明らかとなる。
エドガルドが生き延びた過酷な経験、ナサニエルの抱える秘密と孤独とは……!?

凄惨な過去を生き延びたエドガルドと、深い闇と孤独を抱えて生きてきたナサニエル。ティエラ山での出会いが、二人の運命を大きく変えていく。

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