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教科書販売の憂鬱

(2022/06/07記)

 この春の教科書販売の成績を分類すると「2020年並みの堅調だった大学」「2021年よりは緩やかに後退した大学」「2019年までと同じ元の木阿弥の大学」「コロナのない世界が続いていたとしか思えない論外の衰退を見せる大学」という感じである。

 「コロナがなかった世界」の大学では、180送って152返品とか、15送って12返品とか、大反省会レベルの惨敗を喫した。こんな数字は久々に見た。

 もともと小社の営業は実績重視かつ小出しがモットーの出庫ぶりなので、奇跡的大売れがない代わりに大外し、バカ返品はないはずなのだ。

 もちろん先生たちだって受講者の数を踏まえ、テストへの持ち込みを許可するなど工夫はしてくださっている。しかし学生の中から、リモート講義への緊張と教科書がないことへの不安が失われれば、実態はこんなものなのだろう。

 今の学生たちにとってリモート講義はyoutubeと等価だ。これを対面並みの関係に引き戻すには双方向性のコミュニケーションや試験などでよほどの工夫をせざるを得ず、現場への負担はあまりに大きい。

 教科書を読まずに講義を受ける学生が増えることで、学びの本質が失われていく。

 本を読まなくても何の問題もなかった、と思い込んだまま世に出て行く学生が増えることで、社会は一定の知に基づく通念や規範を維持できなくなっていく。

 短絡や安易な印象批評が深慮熟考に優越する世界に生きたくないなぁ。

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