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二度とこんな本は作れない

(2021/06/30記)

 明日7月1日に結党100周年を迎え、ここしばらくは「神話作り」に力を入れる(Reuters)、などといった、やや皮肉な調子の報道も見受けられる中国共産党。

 鄧小平の「韜光養晦」はすっかり過去のものとなり、習近平が押し進める「強軍強国」路線が生み出した軋轢に、南シナ海のみならず世界各国が憂慮の色を露わにする2020年代を迎えています。

 そうした諸々を受けて、中国は変質した、とする分析には一定の説得力がありますが、その一方で、中国の本質は建国以来何一つ変わっておらず、折々の国際社会や国内情勢への対応が表出しているに過ぎないという見方もあります。

 長らく北京大学国際関係学院で中国の外交政策決定過程を研究してきた牛軍さん(現在は華東師範大学特任教授)が、建国から2010年代にいたる中国外交の論理とメンタリティを探った本書『中国外交政策決定研究』(千倉書房)は、中国、そして中国共産党がその時、何故、どう動いたのかを探ることで、西洋世界には理解しにくい謎めいた大国の実像に迫る指針を与えてくれるでしょう。

 補章を含め全32章。本文773頁は二段組み。関連書籍・論文の要覧が59頁。サービスでくっつけた私の自作年表類が65頁。索引の最終ページには「911」の刻印(ノンブル)が燦然と輝いています。

本体価格は12000円

 2008年、前著となる『冷戦期中国外交の政策決定』(千倉書房)を刊行した際に松田康博さんが寄せてくださった東京財団政策研究所の書評 に、ようやくお応えできることに、少しホッとしています。

 前著は著者・訳者と相談の上絶版にし、その内容はすべて情報をアップデートして本書に収録しています。

 ヘビーなパッケージと価格に負けないよう頑張りましたので、ぜひお手にとっていただきたいところ。

 とはいえ、自分で買ってとは言いにくいところもこれあり。お近くの図書館に購入リクエストを出していただけると嬉しいです。

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