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2024年の投資環境を考える


2023年に神山の印象に残った3大金融・経済ニュース


今年は日本で印象的なことがいくつかありました。
 
1. 中国からの観光客が増えないのにインバウンド消費が回復したこと
日本のインバウンド消費(外国人観光客の使うお金)は、中国からの観光客がさほど増えないにもかかわらず回復しています。コロナ禍前より為替レートが円安であることが一番の理由でしょう。裏返せば、140円を超える円安水準は、本来の購買力の比較から見ると円安すぎるのだと思いました。
 
 
2. 日銀植田総裁が「チャレンレジング」と言ったこと*
このチャレンジングという言葉は、日本ではさほど使わないのですが、英語圏では「難しい」をマイルドにいうときに使うことが多い印象です。 日銀総裁として日本の変化を感じる情報が増えて、それをどう解釈するのか、これからどんなタイミングでどのように政策を変えていくのか、年末から1月にかけて考えることが増えるという趣旨と理解しましたが、市場の一部では1月までに政策変更する、もうすぐ利上げするという意味にとったのに驚きました。
*2023年12月7日の参議院財政金融委員会での発言

3. 日本株上昇でも日本の未来を信じない日本人が意外に多いこと
リーマン・ショック後に日本が長らく抱えてきた人手、設備、お金の「余剰」が、ついに「不足」に転じてきています。これは日本経済にとって千載一遇の体質改善のチャンスだと2023年初から主張してきました。

終身雇用慣習で労働者が伸びる産業に移らない、設備投資しても従業員を減らせないといけないといった袋小路に入っていたのですが、コロナ禍対応で世界的な財政政策を受けて景気が拡大したことなどから、そのままでも「不足」が目立ってきました。

人手不足および人手不足に起因する賃金上昇は、売上が上がったからこそ起こったことが大事です。このチャンスに、伸びる産業や企業に人が移る、それによって賃金も上がる、人手不足で設備投資をする、それを使う人たちの生産性が改善するといった好循環が期待できます。しかし、日本の将来を悲観的に見る人たちが多いことには驚かされます。

目先では、物価高が賃金上昇を上回ったので心理的に明るくないのは仕方ないのですが、このチャンスを活かせると思う人が少なければ、実際に好循環への道に進み損なってしまいます。これが来年は変わることを祈ります。


2024年は正常化2年目の年

23年はじめに「世界的なインフレ率の落ち着き、日本のデフレ懸念からの正常化、巣篭もり需要の一巡、中国のゼロコロナ政策の緩和など、正常化と低成長の年となる」と神山解説vol.35で書きましたが、半分当たって半分当たっていないと思われます。

まず、世界的にはインフレが落ち着き、日本のデフレ懸念からの正常化は進み始めています。アメリカの巣篭もり需要は落ち着き、日本も観光など経済活動が戻ってきました。中国のゼロコロナ政策は緩和されました。

ところが、FRB(連邦準備制度理事会)は相変わらずインフレに臆病で金利の正常化が始まっていません。一方、日銀も正常化が見え始めた割に、チャレンジングとはいえ12月の政策決定会合では何も変えないことにしました。経済状況は思ったように進むのですが、中央銀行を納得させるのが難しい状態に終わりました。そうであれば、24年は中央銀行の態度が変化することで、23年に続き正常化の進む年ということになります。

アメリカは利下げのない23年でした。急激なインフレは3%程度に落ち着きつつあり、高金利政策を続けると、インフレ率が目標の2%を下回る恐れすら感じるほどになりました。2023年初に「FRBはそれでも「インフレ再燃リスク」を警戒して政策金利を下げないままにするかもしれない」と書いたのですが、2023年12月時点ではその通りになってしまいました。これは、持続的にインフレが続くかどうかを見る賃金上昇率が高止まりしたことによると見ています。アメリカの政策金利は2024年の年央までに引き下げられ、ある程度利下げを織り込んだ長期金利ももう少し低下すると見ています。


日本では、年初に述べた「3%を超えるインフレ率は落ち着く方向と予想」が、少し遅めですが明確になってきました。実は日本のインフレは、22年に光熱費、23年に食料品価格が起因し、24年は一段落すると見ています。ところが、人手不足は簡単には収まらないでしょう。賃金上昇は続き、24年にはいよいよ賃金上昇が物価上昇を上回る時が来ると見ています。

売上は横ばいでも高水準が続くと見ており、設備の増設や従業員増が23年以上に必要となるでしょう。内需もコロナ禍による一時的な従業員や設備の余剰から一気に不足に変わっています。これはまだ続くでしょう。日銀の注目するベースアップ率が十分高ければ、日銀も24年前半までには経済状態に合わせてマイナス金利を脱却しプラス金利に進む可能性が高まっています。

資産形成しやすい環境が続く

資産形成を考える時に大事なことは、世界の全ての人たちが、努力と工夫を積み上げて成長するとの想定です。我々は、それに資金を出すことで分配に参加することができます。23年の円安、世界株高で投資で良い経験をした人たちが増えたという安心感の広がりもありました。

2024年は、新NISAによる投資の税制優遇のスタートだけではなく、日本経済の改善による賃金上昇、インフレの落ち着きなどが期待され、余裕資金も増えると見ています。これらは単なるキッカケでしかないのですが、投資を考えるには良いときになるでしょう。


世界経済の成長を信じて投資をしていくことについて、noteで「投資ってなんだ!?」の連載が無事終わりました。ぜひ参考にしてみてください。


日興アセットマネジメント 神山解説

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