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#川西市は動き出しています~商品により立ち上がる社会~


 「#川西市は動き出しています」―――このハッシュタグは元々は川西市長の越田謙治郎さんがTwitterで使い始めたもので、川西市でしょぼい起業の街を育てている私もTwitterでよく使うようになった(乗っからせて頂いた)。   
 「川西市は動き出している」というのは、川西市長が法律や条例に従い市役所と行政の機構を動かして、マクロで大きな政策を実行していることを指す言葉なのは、越田市長の仕事ぶりを見れば伝わってくる。一方私はこのかもカフェのnoteの各記事で、久木田郁哉(くきたふみや)が中心となって川西を起業の街にしようという動きがあり、その芽が出てきているのをご紹介して来た。そして今回の「#川西市は動き出しています」というタイトルの文章では、川西市内の一般市民達が、商品作りによって川西市を動かそうとしているという事をご紹介したいと思う。しょぼい起業から始まった川西の実店舗で具体的な商品を作り込むことが、人々の交流を活性化させ、川西に社会を立ち上げて行っているのだ。そこには必要な所での公民連携もあり、様々な当事者が参画する社会連携の芽が生まれている。それが可能になるのは、川西に生きる人々が具体的な商品を0から作り、育て、社会的に提案しているからだ。


1.川西の二つのシナノ~その経営観と商品~


(1)國屋シナノの商品と地域の人々

國屋シナノのたまごサンドウイッチとビーフシチュー

 川西市にはシナノという名前を持つ二つのパン屋がある。ベーカリー・シナノと國屋シナノだ。ベーカリー・シナノは川西能勢口駅近くの藤ノ森神社の近くの小花という地域にあり、國屋シナノは川西郵便局の前の坂を上がって行った丘の中腹にある。國屋シナノは地域としては花屋敷になる。
 シナノは川西市においては、國屋シナノから始まった。國屋シナノは2021年3月に大阪梅田駅の近く中崎町より川西市の今の場所で移転開業した。今の物件は半地下一階、一階、二階の三階層になっているが、ここは元々は古い駄菓子屋さんで、「めりーほーむ」という不動産屋さんが買い取って、現代風にリノベーションした物件だそうだ。「めりーほーむ」は國屋の中に入って階段を上がった二階に入居している。外から来るお客さんだけでなく、二階からも人が降りてきて注文がよく来る。店は外観も内装もかわいくて、國屋シナノは少し不思議な物件だ。
 國屋シナノのメニューはサンドウィッチが数種類あり、アボカドのサンドウィッチやキーマ鶏そぼろのバングラディシュサンド、たまごオムレツのサンドウィッチなど、美味しいサンドウィッチが沢山ある。サンドウィッチのソースはオニオンソースかトマトソースが選べる。パンの種類は基本は硬めのカンパーニュだが、柔らかい食パンに変更することもできる。これらの素材のパンはケプリ裏のベーカリー・シナノで焼かれている。
 シナノは2022年現在では川西に二店舗あるが、國屋シナノには、お年寄りでもインターネットを見たと言って来店する人は多く、サンドウィッチやパンを買いに来たが、小花の方とこちらはどちらが本店なのか、シナノという店・プロジェクトとは何なのか。両店は何が違うのか。シナノのパンはどこで焼かれているのか。そういう事を國屋シナノの店長のヤスさんは聞かれる。お客さんはシナノとは何なのかについて気になるそうだ。そこで、分からないからとりあえず店に行って商品を買うついでに聞いてみよう。そういう動きが地域の人々の間で出て来ている。
 店が良いのは、(直感的に)気になったら取り敢えずそこに行ってみるという事を消費者や地域の人達が気軽に選択できることだ。店は、そこに行けば何かあるという期待を地域から向けられている。店は常にそこにあって開かれていて、行けば誰かがいるという点が、インターネットやSNSなどよりも優れている。また、飲食店は商品が自分と関係のあることが明確なので入りやすいのも特徴だ。


(2)シナノの経営観

 シナノは元々は伊丹市稲野にあったベーカリー・シナノが本店だが、國屋は2020年9月からシナノの暖簾分けを受けて大阪で開業し、2021年3月に川西の花屋敷に店を構えた。シナノの暖簾分けの条件は、「店長が店長らしくいられること」だそうだ。確かに、國屋シナノ店長のヤスさんとベーカリー・シナノ店長の中嶋さんは、いつもゆったりとしていると思う。
 シナノの基本的な経営の考え方は、①店長がご機嫌 ②豊かなその土地から必要な分だけ ③過剰な資本主義から距離を取る ④しょぼい起業 の四つだそうで、いずれにせよ、無理なく地域でパンを売って行く業態として中嶋さんはシナノを立ち上げた。國屋シナノのヤスさんはそれに共感していることを中嶋さんに伝え、暖簾分けを受けた。二つのシナノはこれらの基本的な考え方を毎日実践している。シナノの両店に入ると確かに、店長がゆったりと動いていて、店内の空気もゆるく、無理がなさそうな印象を受ける。無理なく動くことと良い商品を提供することを両立させ続けるのは力の要ることだと思うが、それを無理なく実践してしまうのがシナノなのだ。


(3)ベーカリー・シナノの実直な商品作り

ベーカリーシナノの店内

 伊丹市稲野からケプリ裏に移って来たベーカリー・シナノでは、毎日パンを焼いている。國屋シナノのサンドウィッチのパンもここで焼かれている。 
 ベーカリー・シナノの看板商品はシナモンロールだ。ベーカリー・シナノにはパンの窯が2機あり、それぞれ一回当たりで大体24個のシナモンロールを焼くことができる。朝に一回焼き、昼にもう一回焼き、売れ行き次第で夕方にもう一度焼くというパターンが多いそうだ。売れ行き次第では四回目もある。シナモンロールにも種類があり、通常のシナモンロールの他に、キャラメルナッツのシナモンロールや、チョコレートのシナモンロールなどがある。シナノではシナモンロール以外にも、小麦の密度が高いドイツ系の大きな丸いパンや食パンなどを焼いている。シナノはしっかりしたパン屋さんだ。
 このかもカフェのnoteでは、川西でカレー屋ケプリを中心にしょぼい起業を中心とした社会が立ち上がって行っているのをご紹介しているが(https://note.com/kamocafe/n/n755ac9975b91 )、シナノには独自の文化圏があり、川西ケプリタウンの中に組み込まれているものの、ケプリとはまた違った人達が来る。シナノにはシナノを応援するファンが多いのだ。ベーカリー・シナノには、川西市に移転してからも伊丹市稲野時代のからのお客さんが来ることも多いし、旧来からのお客さんだけでなく、川西市の地域のおじいちゃんおばあちゃんや子連れの女性やサラリーマンなどの来店も多い。おしゃれな外装やゆったりとした雰囲気に惹かれて地域の人がパンを買っていく。ベーカリー・シナノはその経営観から商品製作までを手堅く実践する、実直な製造業者だ。シナノがお客さんに対して経営観を直接に語る事はあまりないが、店をやり続ければそれはゆっくりと伝わる。
 川西の二つのシナノの商品は良質だ。ベーカリー・シナノのパンを焼く仕事は実直で丁寧だと思う。國屋シナノの店長のヤスさんの商品のサンドウィッチも質が良く、接客も丁寧だ。
 シナノ社会のような物は、枠組みとしては明確にしてはいないが、確かに川西に立ち上がってきている。それは両店の商品の力と丁寧な仕事の力に拠る所が大きい。シナノの商品を愛する人々が自然と両店に集まって来て、シナノの噂話をし、シナノに注目する人が増えているのだ。それは地域でもインターネットでも噂になっている。

2.毎日カレー粉の作り込み~スパイスカレーミルズの商品~


(1)商品の種類とシンプルさ

ミルズの商品の棚

 ミルズでは毎日カレー粉を作っている。ミルズより前に始めたケプリは4年前の2018年7月7日からカレーを売り始め、最初はチキンカレー粉しかなかったが、キーマカレー粉や豆カレー粉ができて、段々と商品が増えて行った。2020年4月に川西ミルズが誕生し、欧風ビーフカレー粉や海鮮ココナッツカレー粉などが増え、2022年現在では細かい分類まで合わせると20種類か30種類くらいのカレー粉がある。ミルズとケプリの商品はどんどん進化して、どんどん数が増えている。
 カレー粉の原料となるスパイスは日本にあるインド人経営の業者を経由して、インドから輸入している。美味しさと原価と、そのカレー粉を使ったカレー製作をどれだけ簡単にできるかを総合的に調整して、今のチキンカレー粉を作った。
 ミルズは阪急百貨店や川西市立図書館などが入居する大きなテナントの地下一階の目立つ位置にあり、経済的な最前線だが、ミルズの売り上げを支えるのがカレー粉の小売り販売だ。カレー粉の小売りとは最終消費者が自分のご自宅でカレーを作るためのカレー粉で、クラフトパックという茶色い色紙とビニールが重層構造になった袋に、3食分一袋か2食分一袋に詰められている。その袋の表に貼ってあるシールに原料とカレーの作り方が全て簡潔に書かれてある。カレー粉は種類と番号で色分けされている。チキンカレー粉は赤と001番、フィッシュカレー粉は青で002番、キーマカレー粉は緑で003番という様にだ。ミルズのカレー粉は非常にシンプルで分かり易い形の小売商品だ。使い方も、どのカレー粉も原則として鍋に具材と水と一緒に入れて煮るだけにしている。一般の消費者にとってフレンドリーな商品を目指す久木田の経営姿勢が、外形と使い方のシンプルさを考案した。

(2)商品の作り込み

 

ミルズの厨房

 このカレー粉をミルズの従業員が、店内で日々作り込んでいる。店員は小売り用のカレー粉が並べられた棚を見て、カレー粉の減り具合を確認し、今どの種類のカレー粉を作る必要があるのかを確認する。各種のカレー粉を作るために、社長の久木田によって規定された種類と分量のスパイスをミルズ店内の箱から袋ごと集める。例えばクミンやコリアンダーやターメリックなどの原料のスパイスを各種集めたら、袋から出してボウルの中に入れ、量を使って計量し、大きいプラスチックのケースに入れて混合する。10種類くらいのスパイスを混ぜて、大きいケースの中でしっかり混ぜたらカレー粉の完成だ。できたカレー粉を手分けして、カレー粉の作り方が書いてあるシールが貼られた小さいクラフトパックに詰め、蒸着シーラーで封をし、小売りのカレー粉が完成する。それを店頭の棚に並べる。この作業を従業員や関係者が入れ替わりで行っている。以上はカレー粉についての作業だが、他にも店内で食事として出すカレーや小売販売の冷凍カレーなどの商品についても原料の規定量と製造の流れが決まっていて、ミルズの関係者が入れ代わり立ち代わり製造作業を担当している。
 ミルズの商品製作は、店の空間の中で行われる手工業だ。カレー粉やカレーの原材料と調合器具や袋などの資材がある店の中に、ミルズ関係者が入れ代わり立ち代わり入り、彼等彼女等の物理的な手作業による労働力が提供され、それが規定のやり方に沿って商品に変わって行く。
 これら久木田のミルズにおける商品戦略・商品哲学は、シナノの両店の様に質を高度に追求する方向ではないという事を久木田はよく言っている。ミルズのカレーは質をそこそこに抑えつつ、原価を調整して売値を安価にし、生産の仕方をきっちり決めて、商品を大量に生産できるようにする。同時に、カレー粉と鶏肉などの原材料を規定分だけ鍋に入れて煮ればカレーが完成するという誰でも簡単に使用できる商品設計にしてユーザーの利便性を最大限まで高める。広告と店の見せ方も今の時代の大衆にとってフレンドリーな外観にする。商品の質、生産能力、使用感、見せ方の総合考慮から、ミルズのカレー粉はマクロな大衆向けに売る商品を目指した。

(3)久木田の社会への目線

ミルズの冷蔵庫。色んなメモが張ってある。

 

鍋がかかった壁。カレーを煮る時に関するメモが貼ってある。


 今ご紹介した一連の生産過程には様々な人達が参入していて、そこには地域の主婦のアルバイトの方もいれば、行政の福祉サービスを使って就労体験をしている人もいれば、ハローワークのトライヤルで働いている人もいるし、川西市役所からの依頼・紹介で体験的にミルズに来ている人や、久木田の友達や身内の人もいる。久木田はどんな人でもミルズに来たら仕事のイメージができるような工夫をしている。久木田は店内の分かり易いところに、ミルズ店内における作業の内容、作業の流れ、やり方、注意すべき規定値などのメモをラミネートしてペタペタと張り付けていて、ミルズ関係者に対し、ミルズ店内で何をやるべきで、どこの何を参照すれば良いのかを明確に表示し、随時更新している。カレー屋が、仕事の負担が分割され、情報が共有されて、関わる人々にとってフレンドリーな構造になっている事が、川西で久木田を中心に人の輪が広がり、心身の障害やその他様々な事情で困難を抱えた人達が、就労訓練などを目的として久木田を訪ねて来る背景となった。それが次第にコミュニティを形成しつつあるのだ。
 カレーなどの煮込み料理ならより多くの人と共に働きやすいというのが久木田の考え方だ。煮込み料理は大きな鍋で一気に大量に作ることができるし、品質や衛生管理に適切な時間や温度を数値化しやすく、マニュアルを作りやすい。提供はお皿に盛るだけなので簡単だ。煮込む作業とお皿に盛る作業以外は、店員の手と身体は空くので、空いた時間は別の仕事に使える。カレー屋は時間的に余裕がある業態なのだ。それゆえカレー屋は他の事にも手を出しやすいし、就労支援などとも複合的に組み合わせやすい。久木田は、カレーという商品の性質や、商品を巡る仕事の分割のし易さ、仕事の共有のし易さから、ミルズを中心としたカレー屋を、様々な人達が参加でき、社会の様々な領域やプレイヤーと協働できる社会基盤にしたいと考えている。
 これと反対にラーメンなどはお湯の中で麺がどれだけ伸びるかに対して店員は集中力が要る。麺をほぐしたり沈殿物を除去したりするのは感覚に頼らざるを得ない部分が多く、スープと合わせる作業もこだわりが求められる。また、ラーメン業界はお客さんの要求レベルも高い。ラーメン屋で「一杯入魂」と書かれてある店は多いが、あれは本当にそう思ってやっている所が多いと思う。ラーメンは商品の提供に精神的なエネルギーが必要で、店側の精神的な緊張度は常に高めだ。カレーなどの煮込み料理ではそれがあまりない。
 久木田はカレー、カレー粉、冷凍カレーの三つを主な商品とし、それらの製作と販売の二つの過程に、様々な人達が参入できるように設計していく努力を、この数年間行った。その動きが注目され、大阪府堺市の羽衣国際大学人間科学部食品栄養学科からコンサルティングの依頼があり、ハゴロモスパイスカレーというレトルトカレーを開発した。学生が商品を設計し、ミルズが製造を請け負うことになった。
 また、ミルズの小売のカレー粉を置いている商品の棚には、きんたくん子どもカレーという商品がある。これは、川西市役所近くのキセラ川西という社会福祉協議会などが入居する複合施設の中に障害者就労支援施設「あかね」というNPO法人の事務所があり、久木田がそこと協力して作った商品だ。あかねは川西市内で子ども食堂を運営しており、子ども食堂対象のご家庭に調査と試食を重ねてもらい、きんたくん子どもカレーができた。ミルズは毎月100食分のカレー粉をあかねに無償提供している。それをあかねは地域の子ども食堂対象ご家庭の方々へ無償で配っている。
 この様に久木田は地域の人へ、ミルズの資源や利益を還元することも積極的に行いたいと考えており、ミルズでは、川西能勢口駅・川西池田駅周辺で働く人が店員に名刺を見せて頂ければ、カレーの各種トッピングか大盛りにするのを無料で提供するサービスを行っている。

きんたくん子どもカレー


3.毎日がお祭り~冷食屋の経営学~

(1)冷食屋の仕入れの力

 

冷食屋の冷凍ショーケース


 

野菜や果物の無料配布

 冷食屋は川西能勢口駅から南に3kmほど下った久代(くしろ)5丁目という所にある。冷食屋は2022年1月に開業した。オーナーはマーシーさんという人だ。
 冷食屋は川西市内のしょぼい起業の店舗や、市内に限らず冷凍食品に向いていそうな食品を扱う事業者に電話をかけ、様々な商品を仕入れ、それを冷食屋の店内の冷凍ショーケースに並べる。餃子や手羽先やピザ、カレー、ハンバーグ、様々な加工食品、パン、色んな野菜や果物、お菓子、ケーキ、など。冷凍食品になり得る食品の商品を色んなルートから引っ張って来て、店内に並べる。有名店の冷凍ラーメンやもつ鍋などもある。型が悪い冷凍食品は値引きして販売するし、2000円で冷凍食品をビニール袋に詰め放題できるキャンペーンもやった。冷食屋は商品の多様性と物量がとにかく凄い。冷食屋は店内を見学するだけでも楽しい店舗だ。
 冷食屋は無人営業で経営している。店内は商品の搬入の時以外は従業員はいない。支払いは現金を箱に入れるかペイペイの二択にしていて、商品は3個で1000円など、会計的に明朗な単位にしている。貨幣の枚数・単位や支払方法もとにかく簡単で単純なものに設定している。冷食屋は物量とシンプルさを追及して箱を回しまくる経営だ。
 冷食屋のオーナーのマーシーさんは、2020年の春に、沖縄から川西に移住してきて、しょぼい起業の街づくりに参加した。2020年12月から川西市内の畦野という所でカレー屋チャンプルを開業して、繁盛したが、本当にやりたいことは冷食屋だったらしい。

(2)事業者への提案

 冷食屋は生産者や実店舗などの事業者に対して、冷食屋の側から、こんな商品があったらいいなという提案的な営業活動も行う。2022年3,4月に、國屋シナノにて、冷食屋にシナノが開発した冷凍食品のパンを卸すための会議が開かれた。冷食屋のマーシーさん、ベーカリー・シナノの中嶋さん、國屋シナノのヤスさんの三人が、一回冷凍してから解凍しても美味しさが失われないパンはどういう物だろうかという事を話し合った。元々ベーカリー・シナノの看板商品のシナモンロールは冷食屋に数十個単位で頻繁に卸していて、それが冷凍と解凍というプロセスに耐えられるという事は分かっている。それとは別の商品で、消費者の購買欲に訴えるパンを開発できないだろうかと考えている。冷食屋はどういう冷凍食品が売れ筋かの情報と経験を持っていて、とにかく商品を仕入れて売る商売なので、冷食屋から事業者に働きかけて、こんな商品があったらまとめて買うという提案をして行くのだ。 
 会議が開かれた國屋シナノの店内にはガラス張りの冷凍ショーケースがあり、そこにはいつもベーカリー・シナノのシナモンロールなどが冷凍状態で陳列され、お客さんが買って行く。2022年発の新商品の紅茶のシナモンロールも置かれていて、商品に売れ筋としての潜在力があればお客さんは買って行く。冷食屋に大量に卸す前に、國屋シナノでまず試験的にその商品が売れ筋かどうかを確かめることができる。お客さんからはよく、これは國屋シナノの商品なのか、ベーカリー・シナノの商品なのか?という質問をされる。シナノの社会はやはり皆んなから気にされている。シナノについて気になる人が増えれば増えるほど、冷食屋も大量にシナノの商品を仕入れるメリットが増える。

(3)大衆の心理分析とイベントプロデュース

 

苺の無料配布



 冷食屋の経営者のマーシーさんは元々はYouTubeのチャンネルのプロデューサーで、マーケティングのプロフェッショナルだ。大衆の経済的な集合意識や大衆の心理分析に長けている。マーシーさんはTwitterやYouTubeなどでの告知が上手く、消費者からの意見を自由に受け付けていて、インターネットの声と冷食屋の実店舗での商品の減り具合などのデータを基に、実際には言葉にされていない大衆の心理や傾向を分析し、冷食屋の経営をその方向に寄せたりアップデートしたりして行く。
 冷食屋は実験的なプロジェクトやイベントを多数やる。1000円以上買ってくれた人には無料配布という事で、籠に沢山の品物が入っている。箱単位でのイチゴ無料配布や、お子さんのためのお菓子掴み取りなどは人気が出た。冷食屋の中では、ミルズのカレー粉が3個で1000円で売られている横に、無料で持って行っていいジャガイモやニンジンやタマネギが置かれていたりする。毎週お祭りの様で、イベント配布や掴み取りなどは頻繁に品が変わるが、マーシーさんは色んな仕入れ先を開拓しており、冷凍食品の売り上げと原価とのバランスを取りながら、無料配布も含めて、消費者に還元できるやり方を模索している。
 冷食屋が実際の商品の販売と同時にこの様な実験的な事をやるのは、大衆は賢いという小売業の基本を常に踏まえて行くためだ。冷食屋を経営するには大衆の心理を知る手立てを持たねばならず、無料配布イベントなどは大衆の心理傾向、物や商品への心理的な反応を知るために使えるのだ。大衆は、上手く言語化はしないにしても、直感的な嗅覚で、良い商品と悪い商品を選び分ける。一人の人がある商品を選んで、ある商品を選ばないというのは個人の好みかもしれないが、同じ位置にある同じ店舗の中で、沢山の人や色々な人が来て毎日買い物をしていると、ある商品は堅実に売れて、ある商品は全然売れないというのはよくあることだ。別に大衆の間での意思疎通などはないが、大衆はやはり平均的かつ同じような直感で、良い商品と悪い商品を見分けることが多い。商品が売れたら店舗は成り立つので、大衆の大きな直感がどの辺りにあるのかを知ることは経営的に必ず必要なのだ。冷食屋は色んな所から色んな商品を持ってきて、大衆という消費者の集合的な大海に、あんな石やこんな石、浮きや道具を投げ込んだり浮かべたりしてみて、反応を見たり海の深さや海の動きを確かめたりする。
 この様な活動をやっていると、商品が楽しみで冷食屋を定期的にチェックしたり、冷食屋の店の仕入れを直感的に信頼したり、冷食屋の仕入れに一喜一憂したりするお客さんが出て来る。人はやはり商品として良い物は、生活の一部や、生活のちょっとした楽しみとして買いたいと思うものだ。この様なお客さんは大衆の中でも消費者としての意見を言語化してくれる人達であることも多い。その様な手掛かりを冷食屋は掴んで行く。経営のヒントは色んな所に落ちていたり、発せられていたりするのだ。
 冷食屋は小売業だが、製造会社ではなく、卸売業者と小売業者の中間の様な業態で、イベント性がある小さい業務スーパーの様な感じかもしれない。冷食屋はちゃんと稼ぐ商品と、稼ぎはあまりないけど店にあったら嬉しい周辺の商品を用意して、収益のバランスを取りながら全体で経営している。

(4)冷食屋の贈与経済の実践


かもカフェのドリップバッグの無料配布

 

 冷食屋は商品の売買を行いつつ、上記の様な無料配布や詰め放題などのなどの贈与経済を部分的に実践する。実験的な商品だったり、売れるかどうかわからないけど取り敢えず消費者の反応を見たい商品や、売るよりも店や事業者の親しみやすさを演出したい商品など、冷食屋が店と消費者の双方のために無料で配布・贈与した方が良いと判断した商品を、取り敢えず消費者に贈与してみる。商品や店舗に対する消費者の反応や傾向を観察できて、物事を最終的にお金に落とし込む工夫がしやすくなる。冷食屋は日々アップデートして行くために、とにかく積極的にデータを採る。
 これを書いている筆者のかもカフェも(https://note.com/kamocafe_note2/n/ndb5446bcd756 )、冷食屋からコーヒーのドリップバッグ(中に挽いた豆が入っていてお湯を注ぐだけでコーヒーが完成する袋)を大量発注したいとの依頼があった。かもカフェは2022年2月にかもカフェのドリップバッグを85個製造し、冷食屋に納品した。冷食屋はそれを冷食屋での商品購入者への無料の贈与・配布物としたが、ドリップバッグ85個は二日間で全てなくなった。

(5)店舗経営と贈与性

 

 贈与に関する少し根本的な視点だが、冷食屋に限らず、店舗経営、店舗の経済を続けていると、経済はまず贈与性が先行するのだと実感できる。店はまず表に看板を出し、道行く人に、店が何を売っているのかを表示するところから始まる。道行く人達に、「私達はあなたにこれを提供できます、これをプレゼントできます。」ということを表示する。それに惹きつけられた人が店舗に入り、商品を買い、お金を店舗に渡す。今時、パン屋やカレー屋などは世の中に沢山ある訳だが、その中で敢えて、自分達はこの様な商品を店の前を通ってくれた人々に提案・提供したい、というような店側の熱意が伝われば、お客さんは店の中に入ってくれて、商品を買ってくれる。地域における店舗の経済は、まずは店側の贈与性からスタートするのだ。
 村上春樹が小説『ねじまき鳥クロニクル』の中で、店を始める時は、その店の物件の前に一日か一週間くらい座り、道行くお客さんがどういう顔をしているか、どういう人達がその道を通るかというのをずっと眺める。そうしている中で、次第にイメージが降りて来て、その土地と物件の性質と自分の店が成功するイメージとが噛み合う点が見つかれば、成功できるという内容のことを書いている。これは非常に的を射ている。消費者と言っても抽象的な人達ではなく、店がある地域に生きる具体的な人々の集合が消費者であり、店はその人達の事を考えて具体的に作り込まねばならない。
 また、消費者への贈与を続けるためにも店を決まった日時に開けておくことは重要だ。店にはお客さんが自分の予定や都合を決めて来店するので、店側が決まって空いている時間を表示して、開けておかないと、贈与が上手く成立しない。冷食屋は消費者が商品を買いたい時にいつでも買えるように、24時間営業を続けている。冷食屋は常に消費者の事を考えており、その負担を惜しまない。

4.商品による社会的困難者の包摂と就労~ミルズとケプリの挑戦~

(1)公的制度の活用

 ミルズでは2022年3月の一か月間、川西市役所の福祉課経由で就労訓練の依頼を受け、10代の人を店員として試用した。国、県、市の三つの行政レベルでは、それぞれにおいて社会的に困難を抱えた人の就労を支援する社会的経済的な制度があり、久木田はそれを活用している。制度を活用し、就労や試用の実例を積み重ねることはミルズにとっても大事だ。
 ミルズの仕事の内容や様子は第2章でご紹介した通りだ。カレー粉を袋に詰める作業などは、一番簡単かつ基礎的で仕事量が多く、誰にでも(=ミルズに入ったばかりでも)できる作業として、ミルズ店内に常にリストアップされている。カレー粉を詰める作業だけでなく、他の既存の業務の中でも、ひとまとまりになっている仕事を要素に分解し、その中で誰にでもできる作業をリストアップし、仕分けて集め、制度を活用してミルズの内側に来る人達にやってもらう。こうすることでカレー屋への参入経路が増えて行く。制度を使えば国や自治体から補助金が出る場合もあるので、誰でもできる仕事を沢山用意すれば、ミルズも儲かる計算ができる。ミルズ、自治体、制度利用者などの関係者・ステイクホルダー達が、できるだけ皆んな得をするように久木田はミルズ店内の仕事を組み替えていく。

(2)製造と販売への参入

 ミルズの仕事については、現状は大きく分類すると、製造と販売が誰でも参入できるところだ。商品の製造の工程の様子は第2章でご紹介した通りで、色々参入できるポイントがある。仕事の仕分けは久木田がやる。販売は実店舗での実売と、それをどれだけ増やすかを頑張っている。BASEでの通販もあり、注文が来ればミルズ実店舗の商品棚にあらかじめストックされている物をケプリ従業員などが取って行って、レターパックに詰めて発送する。
 ミルズは店であり、仕事は基本的に全て商品を起点として発生する。店の看板は商品を売るために作るし、鍋やお盆などの店内の道具は商品を提供するために効果的に配置されている。

(3)どういう人を集めているのか

 久木田はミルズで包摂的に仕事する人を、障害者に限定しているわけではない。精神障害や発達障害を持っていなくても、色んな事情で一般社会で働けなかったり、能力があっても気分的に現在はガッツリ仕事をしていなかったり、あるいは純粋に能力が足りないところがあるが障害者という訳ではない人もいる。近代化した一般社会は万人が社会的に基礎的な能力を持ち働く事を前提としているが、その様な建前には当て嵌まらず、かといってこれといった生き方や道には進んでいない人がいる。久木田は元々若い頃からその様に社会的にあまり明確な枠に当てはまらない人達に馴染み、店に呼び、何となく地域で遊んだり活動したりしていたら、次第に地域が盛り上がって行ったという経験をしていた。久木田の周りには社会的な作法や能力について、良くも悪くも規格化されていない人達が多くいたが、問題をその人達が少し普通ではないことにあると考えるのではなく、ミルズの側の仕事を分解したり再構成したりして、内部や仕事の流れを細部まで規格化し、本当に一般的な意味での仕事のやり易さを実現すればいいのではないかと考えたのだ。しかもそれを売り上げに繋げて、店の盛り上がりによって精神的にやりがいに繋げる工夫をする。これが久木田の経営努力だ。

(4)ケプリという一歩引いた店舗


 以上の様に工夫された仕事は高齢者でもできる。日本は高齢化大国であり、高齢者の方々でもカレー屋を手伝えるように設計することは、久木田のケプリ開業当初からの思いだった。
 ケプリでは初めからずっと久木田のおばあちゃんが働いており、ケプリのカレーを作ってくれているのは今も久木田のおばあちゃんだ。おばあちゃんはケプリがカレー屋として開業した2018年の7月7日からずっとケプリのスタッフとして勤務しており、ケプリ店内の作業もケプリのカレー作りも、おばあちゃんでもできるように設計されている。
 ミルズは経済的な最前線でもあり、店内の流れは速い。満席になって多忙になることもある。そこまでのスピードや労働の負荷には耐えられなさそうなら、ミルズから一歩引いて、ケプリでゆっくりと就労の訓練を積むというルートも久木田は用意している。ケプリは子ども食堂を謳っていることや、営業が毎日昼夜合わせて4時間程度ということもあり、お客さんはあまり来ない。ケプリの中では久木田周辺のスタッフが店番をしながら全国のカレー屋へのカレー粉の卸売りの製造や荷造りをしている。それをしながら時々お客さんや子どもが来たらカレーを提供している。
 川西市役所の福祉課はミルズだけでなくケプリにも注目してくれていて、時々ケプリに来てカレーを食べてくださるのと、ケプリという店がどの様な感じで営業しているのかを観察し、市役所の福祉課に来た就労に関する問い合わせの中でケプリに合いそうな就労希望者をケプリに引き合わせたりする。
 2022年3月に、ケプリの前にある川西市男女共同参画センターの会議室で、ミルズの久木田と特定非営利活動法人「百生一輝」の理事の大西僚さんによる、障害者就労支援に関するトークイベントが開かれた。二人は若くして社会福祉に関して非常に経験豊富で、信頼できる。店をやって行ったら、地域のハブ人材同士が繋がることになるが、それには具体的な商品があるから、堅実で安定した形でやって行ける。地に足が付いているのだ。
 ちなみに、久木田がずっと構想していて時々口にしている事で、高齢化大国日本でゆくゆくは、一階がカレー屋で二階より上が老人ホームというプロジェクトをやってみたいらしい。ご老人が一階に降りてきていつでも働けて、いつでも階上に戻って休めるカレー屋だ。これは日本の高齢化社会にまつわる問題解決の久木田からの一つの提案だ。

5.商品により動き出す社会

(1)カレー屋&コワーキングスペース・ケプリ

 ケプリでも川西の関係者達が集まって商品会議が行われることが多い。2022年2月中旬、ミルズの久木田、冷食屋のマーシーさん、百生一輝の大西僚さんの三人がケプリに集まり、商品についての会合を開いた。百生一輝が運営する就労継続支援B型作業所「ふぉーふーむ」が経営するケーキ工房「菓楽」というケーキ屋さんで作っているケーキを大量に冷食屋に卸すことができないだろうかという会合だった。冷食屋は商品の話を聞きつけてケプリにも顔を出した。
 菓楽は川西市内で障害者就労支援のために運営されているケーキ屋で、廃業予定だったケーキ屋を百生一輝が引き継いで経営しているという、障害者支援の形としては少し珍しい形の作業所・事業所だ。
 実際には障害者がカレー粉やケーキなどを作っても商品の質は一般の物と何ら変わらない。しかし、問題になるのは商品の販路で、冷食屋が最終消費者への販路を大量に提供してくれるのは経営上非常にありがたい。販路の開拓というのは結構骨が折れる事なのだ。最終的な販路がある程度以上の規模で用意できていれば、ミルズなどの社会的困難者の受け入れ店舗としては、とにかく店の仕事の中で、誰でもできる作業などを仕分け、それを優先的にその人達に振り分ければ、儲かる計算がしやすいという事になる。
 冷食屋のマーシーさんは、シナノの会合に出たり、ケプリでの会合に出たりと、色んな所に顔を出して、冷食屋で売れそうな商品を探している。物を最終的にお金に落とし込む箱である冷食屋を持っているマーシーさんは、冷食屋の中の冷凍ショーケースの中に、この商品を入れてお客さんに紹介すれば売れるだろうかというイメージができるかどうかで大量購入を判断するだろう。マーシーさんは、自分からこんな商品があったらいいなという提案もできるし、良い商品を見つけたら大量買いの提案をして、生産者側にも冷食屋側にもメリットになるようにしていく。

(2)労働力の商品への落とし込みと商品のお金への落とし込み

 川西では例えば、①労働力を提供できる人→②ミルズで仕事→③冷凍カレー完成→④冷食屋に搬入→⑤お金 という流れで、労働力が最終的にお金に変わっていく。この様な、労働が貨幣に変わるという価値の変換は、仕事の現場の整備や販路の開拓がなされて実現している。そして、それにはまずは売る物としてのカレーなどの商品があるから、ミルズや冷食屋などの様な具体的な形で実現できるのだ。いかに冷食屋が強力なプレイヤーでも、商品がないと経済活動はできないし、いかに久木田の周辺に社会的な余剰となっている労働人材が居ようとも、それを具体的な商品へと落とし込めないことには、何も始まらない。川西ではしょぼい起業の関係者が毎日具体的な商品を作っており、ケプリにいて会話をしていると、こんな商品があったらいいな、こんなことができないかな、という提案が、自然となされることが多い。
 また、川西で店舗をやれば、いつでも久木田による商品と店舗に関する監修を受けることができる。ケプリと久木田には今も月に何件か、自分も起業をしたいという相談や経営相談の依頼が来る。
 そして、作った商品はお金に変わることが大事であり、買い手は地域の人達だ。川西のしょぼい起業の店舗では、商品の製造と販売には経営者や障害者やその他様々な人がいるが、買い手にとっては商品の製造者・販売者が障害者かどうか、どういう属性の人なのかは関係ない。商品が良いかどうか、店舗が商品を買ってみたくなるようなきっちりとした感じかどうか、それが全てだ。広い意味で経営においては、人が持つ労働力をちゃんとしたクオリティーの商品に落とし込む仕組みと、それをお金に変える仕組みの二つが必要な訳だ。この二つにはそれぞれ少し別の頭の使い方が要る。商品をお金に落とし込む方法についても、また稿を別にしてご紹介したいと思う(これを実地で見てみたい人は、ぜひ冷食屋の実店舗に行ってみて欲しい)。

冷食屋の料金箱

6.#川西市は動き出しています~商品と多様な人々の社会的交差点~

 商品を提供する。そうすれば人と人の関係が始まり、社会は立ち上がって行く。商品と人々の力により、川西市は動き出す。
 地域に店舗を作り、店舗で商品を作る。商品と貨幣の交換関係が始まれば、噂が噂を呼んだり人が人を呼んだりして、次第に商品と貨幣の動きが複雑になり、人々の交流が増え、社会が立ち上がる。貨幣が手に入れば店舗はまた商品を作ることができる。商品を売る店舗が増えれば、お客さんの回遊が起き、店舗同士の協力関係も発生し、商品経済を基盤とした強靭な地域共同体が段々と立ち上がって行く。
 実店舗を舞台にして地域の人々の交流が活発になれば、困り事の解決などもできるかもしれない。例えば、いま久木田も含め、まわりの事業者には子育てをしながらお店を営む人も増えてきているため、子育てや子育て支援、相互扶助の話になることは多い。子育てをやりながらの事業者同士では、やはり悩むことは似通うのだ。情報共有や困り事の話の共有が、店舗や商品との出会いの中でなされ、店舗を活用した子育て支援イベントなども企画されるかもしれない。
 何らかのイデオロギーや社会的影響力を行使して人間関係と貨幣をテクニカルに使い社会を立ち上げるのではなく、実体のある商品を出発点として人間関係と貨幣の流れを立ち上げて、それを時間をかけて育てれば、それは強靭な社会になっていく。この順番を順守することが、久木田が立ち上げている川西のしょぼい起業の街の作り方だ。
 商品を基盤に立ち上がっている社会では、本稿で紹介したミルズの店や商品の構造の様に、多様な人々が参入できる経路を用意できる。多様な属性や立場や職種の人々が、商品が起点となって立ち上がる地域社会で関わりを増し、新しい経済と社会を作っていく。具体的な商品によって、#川西市は動き出している のだ。

7.補論:商品の開発の仕方~歴史の継承とオリジナリティー~

 「#川西市は動き出しています」という本稿では、具体的な商品が川西で社会を立ち上げて行っているという事をご紹介してきたが、その様な商品は最初はどうやって作ったのだろうか。何も無いところから商品を開発するというのはどうやってやるのだろうか。オリジナリティーがないと提案的な商品にはならないし、店をやっていても面白くない。かといって角が立ち過ぎていたり、あまりにも変化球だと売れない。
 筆者が指摘できるのは、商品はまず歴史の土台に乗せるべきだということだ。昔からある食べ物などは、やはりそれなりの理由があってずっと食べられている。商品としての安定性があるから、歴史の流れに耐えられて残っているのだ。そこに少し新しい提案を加えることが店舗の仕事だ。商品はまず歴史を継承することが大事だ。
 筆者はKamo Caféというカフェを実店舗でもやっていたが、そこではコーヒーとスパイスを組み合わせたコーヒーを売っていた(BASEの通販では今でも売っている)。Kamoブレンドというコロンビアやブラジルやモカの豆を独自の割合でブレンドしたコーヒーに、シナモンやカルダモンなどのスパイスを少し足し、香り付けしたコーヒーだ。中東ではコーヒーとスパイスを混ぜて飲むのは一般的だが、筆者は中東の事は知らずに、何か新しい提案的な店ができるかなと思い、やってみた。初めは面白がられて結構売れたが、実際に堅実に売れ続けるのはスパイスで香り付けしていない普通のKamoブレンドだった。何だか恥ずかしい思いをしたのを覚えているが、実際味は悪くなく、カルダモンで少し香り付けしたコーヒーなどは本当に美味しいと思う。しかし、カルダモンのコーヒーを毎日飲めるかと言われたらやはりそれは少し戸惑う。日本人の舌としてその味に慣れているかどうかは非常に重要だし、香り付けを頑張って美味しくしようと意気込まず、特に意味もなく取り敢えず飲めるコーヒーというのは生活に重要な品だと思う。
 結局、店舗とは、基本的には万人に対して開かれた存在として存在できるのであり、本稿で紹介し続けた冷食屋の様な、大衆の感覚を信頼して、まずは商品の量や規模を確保するやり方は、商業活動の王道だと言える。その上でどうオリジナリティーを出すかで人々から熱心に応援される繁盛店になるかどうかが決まる。久木田のミルズとケプリのカレー粉についても、このような考えを踏まえて設計・開発されている。
 これを読んでいるあなたも、何か自分の商品を作ってみて欲しい。商品にポテンシャルがあれば、それに注目する人が必ず出て来る。今ならBASEで簡単に通販を始められる。店を間借りするという手もある。歴史を継承しつつオリジナリティーがある自分の商品を持てば、贈り物に丁度いいこともあり、自分の実生活も豊かになる。

 

ミルズのビリヤニ

8.川西見学ツアー・就労体験募集


・川西のしょぼい起業村をご案内します
・カレー屋研修制度あり
・カレー賄い付き
・寮あり
・久木田による起業コンサルあり
・川西への移住も支援します
・詳細は久木田(through12345@gmail.com)までメールくださればご返信差し上げます
・久木田Twitter( https://twitter.com/fbtfumiel )
・久木田郁哉HP
https://ykvisart11.wixsite.com/my-site?fbclid=IwAR0Q7ZLwJv_5xJnFI5XZPbw34DVVjYRME4b-sLYaNqPPkDISR5ke0QKfCdc )
・ケプリTwitter ( https://twitter.com/KhepriCo )
・チャンプルTwitter ( https://twitter.com/kawanishicurry )
・川西麺業Twitter ( https://twitter.com/kawanisimengyou )
・國屋シナノTwitter  ( https://twitter.com/kuniya_cinano )
・ベーカリー・シナノTwitter ( https://twitter.com/cafe_cinano )
・かっぱ食堂 Twitter ( https://twitter.com/kappasyokudo )
・冷食屋 Twitter ( https://twitter.com/reisyokuya )
・Kamo Cafe ( https://twitter.com/kamocafekawaii )








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