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スコットランド日和⑩ チャリティ大国イギリス(1)日常のなかにあるチャリティ

 スコットランドのエジンバラで研究生活を送っている阿比留久美さん(早稲田大学、「子どものための居場所論」)の現地レポートを連載します(月2回程度の更新予定)。
 ★「子どものための居場所論」note はこちらから読めます。
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 イギリスはチャリティが盛んだとよく言われますが、スコットランドに来て、そのことを本当に強く感じます。街のあちらこちらにドネーションボックスが置いてあったり、食品を受け取れる場所があるのです。

 ドネーションボックスは、教会はもちろんのこと、大小問わずあらゆるスーパーマーケットにあって、大手スーパーマーケットはどこもドネーションボックスを設置しています。スーパーのドネーションボックスでは、そのスーパーで買ったものを寄付できる仕組みになっていて、それを地域のチャリティ組織が分配するという役割分担をしていて、うまくできているなあと感じます。ドラッグストアにも動物園などのアミューズメント施設にも置いてあって、思い立った時に自分がいいなと思うものを、自分ができる分だけ寄付できるので、寄付のハードルが低いのです。

大型スーパーマーケットに置かれているドネーションボックス①
Tesco Extra @Corstorphine Meadow
大型スーパーマーケットに置かれているドネーションボックス②
Sainsbury’s @Corstorphine 2023年5月

 こういうものを寄付してほしい、こういうものは寄付しないでほしい(食品であれば常温保存できるものにしてほしいとか、ドラッグストアであれば剃刀などは寄付しないでほしいとか…)という説明書きはあるものの、寄付する人は自分が寄付したいものを寄付することができます。そのため、寄付する人が、単にお金を寄付するのではなく、なにを寄付するか考える楽しみをもつことができて、参加意識も感じやすいといえるでしょう。

 基本的には食品が中心ですが、食品にかぎらず、折に触れて生活に必要なもののボックスが設置されます。

 イギリスは9月から新年度で、6月末が年度末になるのですが、6月半ばになってくると制服やかばんなど通学に必要な用品のドネーションボックスが期間限定で置かれるようになっていました。新しい洋服を買って寄付するだけでなく、以前に買って準備しておいたものの使わないままサイズが小さくなってしまったり、卒業をむかえてしまった服も寄付することで、他の子どもに活用してもらえることになり、とてもいい仕組みだなと思いました。

新年度に向けた学校関連用品のドネーションボックス
@Tesco Extra 2023年6月

 12月のクリスマスの前にはクリスマスに子どもへのクリスマスプレゼントのボックスが置かれます。

クリスマスプレゼントを募るドネーションボックス
@Edinburgh Zoo 2023年12月

 ただ、新しいものを買って寄付するとなると、そこまでの余裕がない人もいるでしょう。そういう場合には、チャリティショップが中古のものでも比較的きれいなものを受け入れているので、そういうかたちで寄付ができます。

 イギリス(のスコットランド)にはチャリティショップがそこかしこにあります。貧困に対応する「オックスファム(Oxfam)」、子どもの問題にかかわる「セーブ・ザ・チルドレン(Save the children)」、住居支援をおこなう「シェルター・スコットランド(Shelter Scotland)」、その他ガンや心臓病など、とにかくありとあらゆるテーマのチャリティショップがあって、社会にある問題がチャリティショップの存在を通じて可視化されています。
チャリティショップに不用品を持ち込んで寄付することもできますが、大型スーパーの脇にいくつもの種類のボックスが設置されていたり、道路脇にぽつんとボックスが置かれていたりもします。

いろいろな種類のチャリティーボックス
@Chesser 2023年6月29日

 チャリティショップには食器などの壊れ物も含んだあらゆるものをもちこめますし、道端においてあるボックスを利用すれば、いつでも自分の都合のいい時に寄付をすることができます。

 時にはチャリティ団体から、自宅のポストに寄付用の袋が届けられて、決められた日に回収してくれることもあり、寄付をするためのハードルが低いのです。

寄付用の袋がポストに投函される
指定された日に家の外に寄付品をおいておく
@Western corner 2023年11月

 それぞれの家庭にとって必要なものと、寄付する人があげたいもの。寄付をする人に決定権がしっかりあることによって、時には需要と供給のニーズがマッチしない場合もあるかもしれません。でも、寄付を管理する側が管理しやすいやり方ではなく、寄付をする側が寄付しやすく、また寄付したくなるようなかたちで寄付ができる環境が整えられていることで、寄付の文化が持続可能になっているのだろうな、と思います。

阿比留久美『子どものための居場所論』
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