見出し画像

3分でわかる! かもめマシーンの2021年

案の定コロナ禍が終わらず、舞台芸術界隈は引き続き難しい活動を強いられた2021年。しかし、かもめマシーンでは、例年にも増して多くの活動をし、活動ごとにしっかりと成果を得ることができ、充実した1年となりました。

とはいえ、そもそものキャパが少なかったり、地方での上演だったりばかりが続き、なかなか活動を追うのが難しい。そこで、2021年の振り返り!

1.もしもし、わたしじゃないし

撮影:荻原楽太郎

2月に開催されたTPAMフリンジにて実施。さらに、6月から早稲田大学演劇博物館で開催された『ロストインパンデミック』展において、この作品のパネル展示および音声展示が行われたことを受け、8月にも上演! 初日は特別バージョンとして、閉館後の演劇博物館内にスマホを設置し、そこを訪れた観客が携帯電話を取り、展示を見ながら作品に参加できる形にしました。

演出的には、8月に台詞を「ですます調」に変え、演技ももっと柔らかくするという形に変えていますこれが、この後の『しあわせな日々』にも生きてくるとは…。

ちなみに8月の公演は、萩原が濃厚接触者となっていたこともあり、家でパフォーマンスを行う清水をZOOM越しに見ながらの上演。いつ公演中止になるかとビクビクしながらの公演でした。

電話演劇についてまとめたテキストはこちら


2.もしもし、シモーヌさん

もしもし、シモーヌさん@YPAM

豊岡演劇祭2021フリンジにて電話ボックスを用いた電話演劇の発展版として上演の予定だったものの、コロナの感染拡大によって、演劇祭は中止に……。とはいえ、どうせフリンジだし、勝手にやっていいんでしょ? ということで、テレフォンカードを送って公衆電話から電話をかけるという形の「もしもし、シモーヌさん<公衆電話バージョン>」が実現!

「家の外で聞いてほしい」「どこからでも参加できるようにしたい」という無理難題を解決する妙案だと我ながら惚れ惚れしていたものの、まさか2500円のチケット代に対して、送付したテレカ代(200度)が1700円になるとは! 公衆電話から携帯電話にかけるのがこんなに高いなんて思いもよらなかった……。

こうして9月の公演は無事に終わったものの、せっかくだからちゃんとした形で仕切り直してやりたいということで、急遽12月に開催されるYPAMフリンジへの参加を決定しました。

仙台の建築家・白鳥大樹に電話ボックスをつくってもらい、小学校からの幼馴染に黒電話を魔改造してもらったことで、黒電話のダイヤルを回すと携帯電話が操作され、パフォーマーの携帯電話にかかる仕組みにアップデート!

こんな感じで輸送していました

さらに、これまで、ライブパフォーマンスでやることにこだわっていたのですが、それだとどんなに頑張っても、20人あまりのお客さんにしか聞いてもらえないので、録音バージョンを作成。当初は録音したら演劇じゃなくなるのでは……? と不安だったのですが、上演を重ねるうちに、うん、これも演劇だね、と考えられるようになりました。

この辺は、また改めてテキストを執筆したいところです。

なお、電話演劇を通じて、上記演博の展示のみならず、オーストラリアの演劇祭でプレゼンテーションさせてもらう、学会で発表されるなど、だんだんと幅を広げつつあります。来年はどんな展開を見せるのかお楽しみに!


3.「しあわせな日々」那覇・わが町の小劇場滞在制作

「しあわせな日々」@わが街の小劇場

「電話演劇をやっていても、なんか物足りないぞ」というカンパニーメンバー(清水、新)と、「それもわかるけど、今劇場で全くやる気がしない」という主宰(萩原)で話し合った結果、レパートリー作品である『しあわせな日々』の沖縄での滞在制作が実現。実は、我々にとって、はじめての滞在制作でした。ここで考えていたことについては、こちらの記事をご高覧いただきたい。

もちろん、助成金に採択されたからといって、さくっと作品じらーなやつをこしらえて公金を掠め取ろうみたいなことはしたくない(そういう企画多すぎませんかね?)。というわけでいろいろと考えた結果、これまでこの作品の象徴であった鉄の丘を使わず、演出を大幅に改変。「今、劇場空間で作品を上演するなら」という課題に徹底的に向き合ったことによって、演出としても演技としてもブレイクスルーとなった作品となりました。

ついでに言えば、この滞在制作、「演劇は祭りだ」と言ってはばからない俳優・舞台監督の伊藤新、自称「大和郡山市で一番感じのいいおっさん」の横居克則、まともな照明機材などない世界中の過酷な現場を経験してきた千田実というスタッフ陣の力量があったからこそできた公演。今や、僕らは、日本でも有数のどんな悪条件でもきっちり乗り切れる集団であると自負しています。


◆2022年の予定

来年は、吉祥寺シアターで電話を使った音声作品を作ったり、電話演劇の最終作『もしもし、あわいゆくころ』を作ったりします。さらに、劇場での新作をつくったり(ワークインプログレスとして発表)も予定しています。お楽しみに! また、電話演劇は海外での上演を行ったり、視覚障害を持つ人に向けた公演などもしていきたいです。

◆助成金・補助金について

今年、かもめマシーンでは、Arts For The Futureから235万円、東京海上日動が原資を提供した文化芸術復興創造基金から100万円の助成を受けて活動を展開しました。

もちろん、観客をはじめとする周囲の方々の支えがあってこそですが、このように集中して取り組みを行えたのは、以上のような形で活動資金を確保できたことが非常に大きな支えになりました。もちろんAFFという枠組みが手続き面で非常に大きな問題を抱えているだけでなく、公的資金と芸術活動に大きな変化をもたらした(もたらしてしまった)ことは言うまでもありませんが、このような資金面の充実が、今後、新たな表現を生み出し、この社会を豊かなものにしていくことを証明していきたいと考えてます。というか、証明していかないとやばいと思っています。

それでは、よいお年を!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?