見出し画像

日本人の英語上達には、国語の言い換える力が必須だった!!

日本人にとって英語って難しいですよね。良く言われることですが、学校教育で10年間も英語を勉強しているのに、まともに会話できるようになるのはほんのわずかな人だけのように思います。
なぜなのでしょうか?

外資系企業で10年ほど働いていたので、アジア圏の中でも様々な国の人たちと交流を持つことができたのですが、かつて、しかも一度だけでなく二度、シンガポール人と中国人から、日本人と韓国人は英語が下手だからね、と言われたことがあります。

また、台湾でのことですが、外資系で最低限の英語が出来た私は、明らかに自分よりも英語がうまい台湾人と話しをしていた時(これも一度ではなく二度)、相手から、英語上手ですね、どこで覚えたのですかと言われたことがあります。でも、これって、額面通りには受け取れず、その褒め言葉の前に「日本人にしては」と言う枕詞がつくのだと思わざるを得ないのです。

中国人の場合は、英語が出来る人と出来ない人の差が、とても大きい(教育レベルの問題)のですが、いわゆるグローバルで働く人たちの英語のレベルは総じて高いと思います。
もちろん、日本人でも英語をうまく使いこなしている人はたくさんいますが、日本企業で地位の高い人やグローバルで働いている人たちを見ていると、他のアジア諸国の人たちよりも英語で苦労している人は格段に多いと思います。

かく言う私も、決して完璧な英語が使えるわけではありません。なんとか外資系で仕事を続けられるギリギリのレベルだと思っていますが、そういう意味では、外資系に勤務中はとても英語で苦労していました。
いわゆる英語のうまくない日本人ビジネスマンとして、英語との格闘を10年もやっていたので、実はどうやったら英語が苦手な日本人が英語を使いこなせるかを、自分なりには幅広く経験し、深く理解していると思っています。

その想いで、何とか自分の苦労を多くの日本人の皆さんに伝えたくて、実はかつて下記の2つのブログをやっていました。

日本人の英語学習について考える
これを英語で書けますか?

ヘッダー画像にあるWeb通信講座はこの中でやっていましたが、今は休止しています。
それはさておき。

なぜ、日本人は英語が下手なのか。それは言語構造からくる思考プロセスの違いだと私は思っています。韓国人が下手なのも同じ理屈です。
中国語は、他の言語とは異質のように思えてしまいますが、実は文章構造は英語と似ています。ヨーロッパ諸国の多くの言葉も文法構造は、英語と同じです。

主語と動詞が文の頭にきます。言語構造が同じ(全く同じではないが)であれば極端に言うと単語レベルの置き換えができれば、他の言語が話せてしまうというわけです。
一方、日本語は、構造自体が全く違い、主語が曖昧で、動詞(述語)はいちばん最後にきます。

この構造の違いは、単なる言語の差だけではなく、人がものを考えるときの順序、つまり思考プロセスの違いになって現れると私は思います。

グローバルな商談の場面で、英語があまり上手でない日本人が、それでも何とか英語で発言しようとして、おそらく最初に頭に浮かんだ日本語の単語を英語に直して口に出し、その後が続かなくて、モゴモゴしている間に他の人が助け舟を出す、と言うシーンを私は何度も目にしてきました。

おそらく、主語でも動詞でもない、目的語なのか補足的な内容なのか、日本語にとって優先順位の高い単語が頭に浮かんで、文章構造を考える前にそれを口にしてしまいパニックになってしまったものだと思いますが、日本人の思考プロセスって、主語を先に考える思考になっていなくて、話しながら語尾を調整して文章全体の辻褄を合わせるというプロセスで会話を成り立たせているように思います。
やりながら(話しながら)考えるというやつで、やる前にきちんと決める(契約なども)欧米文化となあなあでまずやってみる日本文化との差にも表れているような気がします。

帰国子女のように、ネイティブレベルで英語と日本語ができる人たちは、この思考プロセスをきっちりと切り替えることができているのだろうと私は思っています。(自分ではないので、あくまで予測ですが)
それに対して、私のように何とか頑張って英語をこなしている人たちは、この思考プロセスを意識的に切り替えなければなりません。

私は、英語戦闘モードと自分で呼んでいますが、頑張って英語ができている人たちは、英会話をするときには、頭の中に英語の構文を置いておいて、英語の構文に合わせてものを考えるようにしているのと、考えながら英単語や熟語が頭に浮かぶように、スイッチを入れ替えて会話をしています。
スイッチの切り替えは、ほぼマニュアル(手動、つまり意識的に)でやらなければならないので、実は外資系に勤めていた頃は、ほとんどずっと英語モードにスイッチを入れていました。
なので、日本語で会話していても、英単語が口から先に出てしまったり、接続詞や熟語なども英語で出てしまって、なんだか周りからはキザなやつだと思われていた時期もありました。
決して、英語ができることを自慢をしたいと言う気持ちからではなく、このスイッチのせいで本当に英語が先に浮かんで、逆に日本語が浮かばなかったりしていたと思います。

日本企業に戻って、英語が日常では必要でなくなると、徐々に普通に戻っていったのですが、戻った当初は、お前の日本語はカタカナが多すぎてわかりにくい、と言われたこともあります。(逆に外人からは、お前の日本語は何だかちょっとわかるとも言われました。)
しばらくたって、この英語戦闘モードから抜けてから、外資系企業の営業マンと話しをしていたら、その人がやたらと日本語会話の中に英単語を散りばめているのを見て、なんか懐かしさを覚えたのと、この人も苦労しているのだと思ったことを思い出します。

さて、今度は日本語について考えてみたいと思います。
福嶋隆史さんの「本当の国語力が驚くほど伸びる本」の中で、国語力、つまり日本語力は、論理力として鍛えられるのだと述べられています。
国語力とは、言い換える力、比べる力とたどる力の3つで表せるということです。

この中で、言い換える力は、日本人が英語を使いこなす時には必須の力で、物事を抽象化する力、抽象と具体の世界を自由に行き来する力、および発想を変える力につながります。
日本語と英語は文章構造が違うので、一対一で言い換えることはできません。英語にはない日本語、日本語にはない英語がたくさんあります。
とすると、日本語と英語の変換には、その本質的な意味を読み取って、日本語を別の言い方、つまり英語に簡単に直せる日本語に言い換える必要があるのです。

つまり、日本語をそのまま英語に変換できないケースがたくさんあって、日本語→英語になる日本語への変換→英語への変換というプロセスが必要であって、日本人が英語を使う時のハンデのようになっているわけです。

そしてこれは、中国語と英語、他の言語間の変換にはあまり必要がない能力なのです。

よく例に出すのですが、「よろしくお願いします。」に相当する一つの英語文章はありません。
一方、日本語で「よろしくお願いします。」と言う場面は、すべてが同じではありません。
何か仕事をお願いして、念を押すために言う場合もあるし、初めて会って今後仲良くしてください、と言う場合もありますよね。英語にするには、それぞれの場面に合わせた、本質的な意味を表現する言葉に置き換えて英作文しなければなりません。

ある人に今仕事をお願いした。この仕事は自分からの依頼であって、なんとかうまくやってもらいたい。この気持ちをどうやったら相手に伝わるか。気持ちを伝えよう。

Your attention on this matter will be appreciated.

人事異動で新しい職場で、新しい仲間に挨拶を終えて、仲良くなりたいな、と言う気持ちをどうやって表現するか。

Please don’t hesitate to talk to me.

初めて会って話をして、仲良くなれそう。次にいつ会うかは決めなかったけど、今後ともお付き合いしたい気持ちをどう表現するか。

Please keep in touch.

このように本質的な意味を読み取るのは、日本語の中での思考力が重要ということになります。
上の例で示した背景の理解を瞬時に行いながら、適切な言葉に言い換えていき、それを英語で表現します。
福嶋さんがおっしゃるように、この思考力は日本語力を強化することで鍛えることができると思います。

上記のいくつかの例は、別の見方をすると、英語を話すのは日本語を英語に変えるという発想から、気持ちを伝えるということだと考えを変えることになるかもしれません。
ただし、気持ちを英語で表現できるようになるためには、まずは、英作文力を鍛えなければならず、そのために、国語力を鍛え思考力を柔軟にすることで、日本語から英語への変換をスムーズにしなければなりません。

そして、今まで説明してきたように、日本語と英語の文章構造が違うことによって、日本人が英語力を鍛える過程ではこの思考力を鍛えることを避けて通れないため、英語が上達すると実は自然に思考力が上がっていくと考えられます。

英語力を上げることが、頭を柔らかくすることに自然につながるわけです。
また、逆にいうと、頭が柔らかくならなければ、英語の上達もおぼつかないということかと思います。

「聞くだけで英語ができるようになる。」などという話もありますが、自分の経験からいうと、ヒアリングはもちろん大事ではありますが、気持ちを伝える英作文力は、むしろ英語を使い続けること(話すや書く、日本人には書く方の方がハードルが低い)だと思っています。そして使い続けることが、実は論理思考力を上げていることに気づいて欲しいと思っています。
逆に言うと、論理思考力を日本語(国語力)の強化によって進めながら英語の訓練をすると、英語の上達も早まると私は思います。

10年間、英語と格闘した結果、私自身の論理思考力は自然に鍛えられています。手前味噌ではありますが、英語力の上達はソコソコですが、論理思考はかなり強化されていると自負しています。それが、今、コンサルタントとして非常に役立っていて、自分の経験していない業種や業界の方達に対しても、私の経験や知識を当てはめて様々な改革の実行をお手伝いできています。

クライアント企業の問題解決や戦略立案に、TOC(制約の理論)を使うことがありますが、このTOCによる問題解決のフレームワークは、思考プロセスとも言われています。
論理思考力を総動員することが、問題を正確に解き、実行して成果を得るための鍵になります。

英語力と論理思考力を意識的に同時に上げていくことを目指しましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?