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論理思考力(地頭)は鍛えられる

論理思考力は鍛えられるという仮説をもって3年間活動してきました。3年経って、仮説は正しいという確信に近づいています。
どうしてこの仮説を考えたか、どうやって検証してきたかというお話をしたいと思います。

論理思考力とは何か?

論理思考力は何かというと、論理的にものごとを考えるというと返ってわかりづらいので、簡単にいうと地頭が良いとか、頭の回転が速い、頭が切れるということだと考えます。

議論を進めたり、アイデアを出すことにセンスがある、という言い方も当てはまるかもしれません。
反対に、「知識がある」「色んなことをよく知っている」というのとは明確に異なるものです。

学生時代くらいまでは、地頭が良い人と、知識が豊富な人は区別がつきにくかったかもしれません。

学校の成績が良いことが頭が良いことだと、多くの人たちが今でもそう信じているのだと思います。
ときとして、この地頭が良い人が同時に知識が豊富なことも少なくありません。
学校の勉強も出来て、地頭も良いという人も実際に多いのだと思うし、だから、世の中の多くの人が、知識が豊富な人、つまり記憶力で成績を上げてきた人が頭が良いのだと考えるのだと思います。

社会人になると、もう一つ混乱することが起きます。
口がうまい人が、仕事が出来る人だという勘違いです。

議論がうまい、というわけでもなく、とにかく強気でメジャーな意見や考え方を、多数意見を背景に押し通すことで、自分の成果にしていくタイプの人です。
良く見分けないと、リーダーシップがあるように見えるので、周りも納得してしまいます。
しかしながら、実社会では、この口のうまい人たちが出世コースに乗っかって、高い役職に就く場合がしばしばあります。

本当に頭の良い人は、ものごとの本質を短い時間で客観的に、冷静に、シンプルに、そして思い込みを排除しながら捉える力を持っている人だと私は考えています。

このような本質を素早く掴む力を「論理思考力」と呼ばせていただいています。

もっとわかりやすくいうと、要するに「本物」ということです。

刑事ドラマでよく見る、出世はしないけど、やたらと頭が切れる、他の人と全く違う視点でものごとを考えて、いつも正しい答えにたどり着く、刑事コロンボや、日本のテレビドラマで言うと「相棒」の杉下右京とか、古畑任三郎といったところでしょうか。

そんな人実際にはいないよ、と言われるかもしれませんが、レベルはともかく、私は多くの会社には上層部からは認められてなくても、本物の要素をもった地頭のいい人は結構いると思っています。

考え方のアプローチが違うので、前述したように多数意見とは合いません。でも、実はこういう人がたくさん面白いアイデアを発想するのです。

突拍子もない、でも大きな可能性を秘めたアイデアを生かしきれない組織の問題ということも起きてきますが、その話は別の機会にすることにします。

人間はそもそも思い込みの塊

人の知識や考え方は、その人の生きてきた軌跡によって作られていると言ってもいいと思います。

一日一日の出来事や経験を積み重ねたものが、その人の考え方や思考プロセスを作り出したものなのです。
そこには、個人ごとに違う“思い込み”が生まれます。
そのことが正しいかどうかをしっかりと検証しないまま、その人の常識に変わっていまい、体に染みついてしまうからです。

企業の中でも同じようなことが起きます。会社の中では常識となっていることを、多くの人はそれが会社の考え方であるからと疑いなく受け入れ、それが組織全体の思い込みであったとしても、そのことを前提に様々なコミュニケーションが進みます。

思い込みは、至る所に存在します。
そしてそれが思い込みであると気づかないまま、色々なことが議論され、間違った決定がされていくわけです。

前述のTV上の優秀な刑事さんたちは、周りの人たちの常識をいつも打破していって事件を解決していきますよね。

このとき、「なぜ?」という言葉がキーワードになります。
なぜなぜ五回、などと言われることがありますが、いろんなことに疑問を持つ、というのが、実は論理思考力向上のカギなのです。

テレビ「相棒」の杉下右京さんの口癖で、「細かいことが気になってしまうのが僕の悪い癖」というのがありますが、論理思考力のある人は、ちょっとしたことに疑問を持つ力がある人だと私は確信しています。
逆に論理思考力の弱い人は、疑問に思わずに何気なくたくさんのことを受け入れてしまいます。
実は、多くの人が多くのことをスルーしてしまうことによって、組織の思い込みをはびこらせてしまっていると私は考えています。

思い込みを排除するためには、色んなことに疑問を持ち続けることです。疑問を持たなければ、それは思い込みを受け入れたことになってしまいます。

論理思考力でセレンディピティ―も起こせる

関心のないことに疑問は持たないよ、なんて声も聞こえてきそうですが、様々なことに関心を持つこと自体も、実は論理思考力と無関係ではなく、ものごとの本質を追及しようということに必要なのは、幅広くアンテナを広げて高い抽象度でものごとを俯瞰的に見る力と、抽象度を自在にコントロールして、現物と抽象の間をズームレンズのように行ったり来たりする力は、本質を掴むだけでなく、新しいアイデアを生み出す可能性を大幅に高めてくれます。

アナロジー思考と呼ばれていますが、自分のいる領域から離れた領域から、アイデアを借りてくるという発想です。ダイソンの掃除機は、サイクロン式と呼ばれ円錐状の筒に空気をらせん状に循環させ、遠心力でゴミと空気を分離するという原理なのですが、この原理は、製材所の大型の集塵機の考え方からアイデアを持ってきています。

このような発想をするためには、思考の過程で抽象度を上げたり下げたりする力と、幅広い領域に対する知恵が必要です。
セレンディピティ―という言葉があります。予期せぬ発見とか、偶然の幸運のような意味で使われますが、これは単なる偶然ではなく、その準備が出来ているからこそ、ふとした時に思い出すように発見をすることだと思っています。

論理思考力を向上させることで、このセレンディピティ―を起こす可能性を上げることもできると思っています。

若い人たちとの接点から見えた仮説

大手企業で開発部門にいたころ、若手の育成も自分としての大事な仕事であったこともあり、出来るだけ不満が出ないような人事考課への取り組みやOJT、キャリアプラン作成の支援などに、それなりに真剣に取り組んでいました。

すごく良い視点をもっているのに、表現が下手でなぜか上層部から評価されない人、まあ、いろんな面で平均点付近に見えるけど、野心だけは強く不満の多い人、元気に発言するし目立つけど中身が意外と薄い人、人の数だけ個性があるのはわかってはいても、この違いはどこから生まれてくるのだろうか、優秀な人を育てるとは、一体どういうことなのかと、考え始めるようになりました。

ある時期、希望者を募って就業時間外に読書会のようなことをやったときに、本を読んだ感想をみんなで披露しながら議論をしていったのですが、同じ本を読んでこんなにも感じ方が違うのだと、少し驚いたことがありました。

感想を披露しあうと、さすがに誰もが感じ方の違いに驚くのですが、同時にそれぞれが感想を言い合うことで大いに学んで成長できているように見えたのです。

ここら辺にヒントがあるのではとこの時に思い始めました。
優秀な人が、論理思考力がある人だとはまだ気づいていませんでしたが、いわゆるセンスのいい人は、読書から著者の本当に言いたいことを正確に読み取れるけど、センスの弱い人は、読み取る力が弱い、というところの気づきで、そして、この読み取る力を色んな人の感じ方を学ぶことで、変化させることもできそうだというのが、このときの思いでした。

TOC(制約の理論)との出会い

その後、大手企業を退職し、コンサルタントとして独立・開業したのですが、開業して間もなくのころ、ある出会いがあってTOC(制約の理論)を学ばせていただく機会に恵まれました。
その学びの場で最初に教わったのが、対立解消図(TOCの世界でクラウドという)を作るということだったのですが、組織の問題解決を行うフレームワークの中で、組織内で起きている問題を客観的に、正確に、そしてシンプルに捉えることで、その後のフレームワークを進めていくための入り口に当たるツールなのですが、これが簡単なようで結構難しい、というか、センスのいる作業だと気が付いたのです。

そして、TOCの世界では肝になる部分なので、30日間、毎日一日ひとつのクラウド(対立解消図)を作るというトレーニングがありました。
講師の方が選んだネット上の記事を読んで、その中の問題点をクラウドとして表現するという訓練です。

私も最初はなかなかうまく書けずに、講師からダメ出しのコメントをもらっていました。
なかなかうまくできないので、なんかイライラして講師に突っかかったりもしたのですが、5日目くらいにハッと閃くものがあって、そこからは80%くらいは合格点をもらえるようになったのですが、いっしょにトレーニングを受けている人たちの中には、30日たっても合格点をもらうには怪しいクラウドを作っている人たちもいました。

はっきりとセンスが出るということがわかったことと、実はTOCの問題解決フレームワークは、思考プロセスとも呼ばれていて、これは論理思考力そのもののトレーニングでもあるのだと思ったわけです。

そして、かつての読書会での想いと繋がって、これが論理思考力を鍛えるトレーニングになるのだと、そしてこのトレーニングによって技術者の思考力を鍛えて、“本物”の優秀な人材を育成できるのではないかという仮説を持つようになったのです。

そして1か月のTOC学習を終えてから、コンサルタントとしての仕事の中で、クラウド作成による思考力トレーニングというカリキュラムを追加するようになり、この3年間で延べ1,000人以上のクラウド添削をさせていただきました。

その結果、ある企業では、2年間毎月一回のクラウド課題をこなし、その結果、若手社員の会議での発言が活性化され、行動そのものも言われた仕事を黙ってこなす体質から、なぜその仕事をやるのかという意識が芽生えたと、その企業の部長さんから感謝の言葉をいただくことができました。

この企業以外でも、トレーニングを繰り返し、徐々にクラウドの質が上がっていくにつれて、企業改革活動においての意見の質が高まっていくのを私自身も現場で感じています。

裏話をすると、このクラウド作成トレーニングを部課長の方たちにも参加してもらうと、部課長さんの中で、苦手という方が時々出てきます。

もちろん、慣れもあるので、一生懸命トレーニングに取り組んでいただければ、すぐに出来るようになるのかもしれませんが、実は、センスの無さがばれてしまうというケースも無きにしも非ず、ということかもしれません。

クラウド作成は、TOCfe(TOC for education)という形で、お子さんたちも含めた教育の道具としても活用されているのだそうです。

論理思考力、つまり地頭の良い、そして口だけではない本物の社員を育成する道具として、検討されてみてはいかがでしょうか?

論理思考力を鍛える進め方について半日のセミナーも開催しています。

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ご興味があればご参加ください。


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