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四国とスペインの巡礼日記 <四国エピローグ> 最後の弘法大師

エピローグ 
四国遍路 エピローグ
「円むすび」「最後の弘法大師」「輝く杖」

3月12日 
八十八番札所から十番札所まで歩き、歩いた遍路道を円に結んだ。そして途中で訪ねそびれた、鎌大師の妙絹さんという方にやっぱりどうしても会いたくなり、電車に乗って愛媛県北条市に戻った。歩いている時にも泊まらせていただいた北条のユースホステルにまたお世話になった。

3月13日
 朝、ユースホステルに荷物を置かせて頂き、鎌大師に向かった。
 妙絹さん、うわさ通りのすごい人だった。あれは、94歳の肌のつやじゃない。話し口調もとても若々しい。納経帳は最後のページしか残っておらず、そこに納経をして頂いた。するとご本尊は初めてみた「弘法大師」。素晴らしい納経を丁寧に丁寧に書いてくれて感激した。
 納経帳の最後のページに「弘法大師」。なんとありがたい。

 急がないのであれば、お茶でもどうぞ、と言って頂いたので有難く上がらせて頂いた。妙絹さんは話しているだけで幸せな気持ちにさせてくれる。なんの気負いも気取りもなく自然体で、なんだか姿は牡丹の花のようだと思った。お抹茶を立てて頂いた。

 歩き遍路は、どの宗派にも属さないこと、四国遍路はお寺巡りではなく歩くこと、弘法大師空海は仏教を超えた超宗教者だったこと、ご自身がお遍路中に嵐の日に歩いていて飛ばされて死にかけたことなど、四国が世界遺産になるのは反対だということ等々をニコニコと話してくれた。フワフワとした雰囲気の妙絹尼の笑い声はコロコロという音に聞こえた。

 僕の杖を見て、「こんな立派な杖は見たことないわ。クジラのキーホルダーもかわいい、私も欲しいわぁ」と最高のお褒めの言葉を頂いた。途中で真っ黒になって落ちていた竹の杖の大ちゃんは、見る人によって様々な輝きを放っていたんだ。

 最後に鎌大師を訪ねて本当に良かった。最高の人に会って、四国遍路が終わった。

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