スコットサンティス氏の「MMT+BI」に対する庶民党のオリジナル性

これはツイッターにツリーで書き込んだ内容を転載したものです。
少し校正・編集しています。

庶民党は「MMT+ベーシック・インカム」を提案しています。
最近スコットサンティス氏の
「MMT+ベーシック・インカム」を解説する本が出版されました。
私がオリジナルとツイートしたところ
http://bijp.net/transcript/article/27
を紹介されました。私がオリジナルではなく
2009年からケインズ理論(MMT的理論構築者のひとり)からベーシック・インカム(BI)を実施すべきという主張を続けている団体があるという紹介であり、こちらがオリジナルであるという主張のようです。

2009年といえば、MMTという経済用語がまだないころの話で(笑)私が「信用創造」の本質をネット動画で知ったころの時期と重なります。
今の私の理解度から判断すると、ざっと読んでも内容が理解出来、かつ納得できる内容になっています。

分かりやすく言えばケインズは「正しい貨幣観」を解明している研究者であり、その理論に基づけばベーシック・インカムは可能である。という主張になります。
だから私の「ベーシック・インカムをMMT財源論で」という主張が世界初であるという書き込みに介入してきたということでしょう。
確かに似てはいますし、本質的に(今から見ればの話ですが)通じるものはあると思います。
しかしそうであればスコットサンティス氏が新著を刊行される意味はありません。そこには新しい知見があった故に他ならないはずです。

いわゆるMMT的知見に関する論議は私自身ネット上で試行錯誤を繰り返し、明確な理解が持てない時期が続いていました。
2019年ケルトン教授が日本に来日しますが、MMTという経済用語が聞かれるようになったのは、その数年前ごろからです。
そのころでもMMTの理解や解像度は現在とは比べ物にならないレベルであり、理論が固まっていないからその当時の新自由主義に対して反論できていなかったり間違った見解を提示したりしていたと思います。

したがって、「MMT+BI」というアイディアについて2009年当時の知見ではうまく説明できていなかったというのが私の回答になります。

実際、私自身ベーシック・インカムの話題に関して「信用創造」を知る前は「財源」的に不可能だろうと思っていました。
それが信用創造の正しい知見を得ることで、お金が定量的なもの(貨幣のプール論)でないということを知ることになり、そこからベーシック・インカムができるのではないか?と考えるようになった経緯があります。

そしてMMTという用語を知ってから以降は、ベーシック・インカムを主張している研究者や言論人に対して、「MMT」を財源論とするならベーシック・インカム はできるはず。という主張を続けて今に至っています。

紹介されたブログが先行していることは確かですが、そもそも同じような書き込みは私も続けてきています。
スコットサンティス氏が言及しているかどうか未読の私には分かりませんが、
「MMT+BI」を説明するにおいて
私は「税は財源ではない」ことから説明します。
この「税≠財源」についてはごく最近まで納得する説明がなかったように考えています。
その理由は、信用創造を理解している研究者であっても、信用創造は銀行だけが行えるものであるという認識と思い込みがあったからです。
ケインズの研究団体の解説もこの点に言及していません。

信用創造は政府も行います。これについては私は以前から国債発行は通貨発行と同義であり、「銀行の信用創造に対極するようなものである」という表現として使っていました。(誰も主張していなかったと私は考えています。先駆者の証拠があれば認めますよ)
単純に政府による信用創造であると表現すれば良かったわけで、これは国会質問で西田昌司議員が財務省の官僚に国債発行や政府通貨の発行が銀行に対する「信用創造」ではないか?と質問し、認められている事案です。

多くの主流派経済学者は未だに国債発行を「国民の借金」という言葉で表現している現状があります。
※少しずつそれが間違いだという認識は広まりつつありますが。

国債発行を「信用創造」であるという視点から考えると、基本的に通貨発行は上限を制限されない「無限に発行できる通貨」ということが理解できるはずです。
「え?(笑)それなら3000兆円国債発行しても大丈夫ということかい(笑)」
と主流派経済学の言論人が言っていたのを思い出します。
MMTを理解する人で、だれもそう言った人はいません。
「インフレ率が制限条件」と答えているはずです。

それでは税は財源でないということを端的に説明できていたか?といえばできていません。
私は
『①通貨発行は②徴税とは別物であり、切り離して考えるべき』
と説明しています。

税を財源論とする人は、自分が納めた税金が政府の財源となり、それが無駄なことに使われていると考えています。
そのために例えば老人福祉を削減しろなどと主張しています。
税財源論は、自己責任論につながり、国民分断を引き起こしているのです。

公共事業や福祉政策は、税金で賄われているのではありません。
政府が予算を執行することで市中に通貨が供給されます。一見税収によって財源化されているように思えますが税収(徴税)は銀行の返済(信用消滅)と同義であり、市中の貨幣を破壊している行為に過ぎません。
予算は国債発行(税収ではない)し、新たな通貨を生み出す政府の機能です。
繰り返します。
国債の発行は政府による信用創造ですから原則的には上限がありません。
政府が予算執行することによって通貨が発行(信用創造)され、市中に循環していきます。
原則的には発行上限のない信用創造ですから、予算執行としては基本的には必要な分を予算に計上すればいいことになります。

もちろん通貨発行を無定見にはできないことは確かです。
よく書く例ですが、介護職員の処遇を良くすることは必要であるとしても、給料を月額100万円にすると決めてしまうとそれは「おかしかろう」となることは想像できるのではないでしょうか?
※上げてもいいんですけどね。(MMT的には)

MMTに基づいた政策予算の執行には精査が必要なことはもちろんであり、インフレなどの制限条件も存在します。
最も重要なことは供給力による制限です。物資や資源・エネルギーが有限である以上それによる通貨発行の制限はあります。
労働力の供給制限もあります。予算化してもそれに応えられる労働力がなければインフレを引き起こすからです。

【結論】
①政府による信用創造(=通貨供給)によって需要が作られ市中に通貨が供給される。
②政府の通貨供給は銀行の信用創造と違い返済によって消滅(信用消滅)することがない。
③原則的には過度のインフレが生じない限り国債発行は問題ない。
④ただし、インフレや富の偏在を是正するために徴税は行う。
⑤財源は政府による信用創造で賄う。税収を以て財源とされているのではない。徴税は極論すれば格差を是正する調整として行うものである。
※したがって税は財源ではない。
といことになります。

私の「MMT+BI」はこの知見をもって解説しているものであり、ケインズ理論によるものと同根であるとしても、説明の手法として全くのオリジナルであり、同じタイトルを使っているスコットサンティス氏より以前に主張を続けてきている事実があります。
ですから私の主張にはオリジナル性が認められるはずです。

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