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宇宙よりも遠い場所を見た

(一応ネタバレ有りです)

「宇宙よりも遠い場所」というアニメを見た。

このアニメは、端的に言えば南極に行く話である。

主人公は、高校に入ったら何かやりたい。青春したいと思っている女子高生玉木マリ(CV:水瀬いのり)が、とあることをきっかけに南極に行きたがっている女子高生、小淵沢報瀬(CV:花澤香菜)と出会い、色々ありながらも南極に行くというお話。

CVから漂う良作感はあるものの、南極に行くという設定が、何というか「ぶっ飛んでいる」気がするのは否めない。

一応、報瀬の母が南極で命を落としたので、心の整理と何か遺品がないか探しに行きたいということであるが、正直言ってちょっと動機としては浅い。

とは言うものの、本編自体は青春物が好きな人のツボを押さえており、見ていて非常に清々しい気持ちになれる作品だった。

このアニメ、ストーリー全体を冷静に見ると、キャストと作画に恵まれただけで、物語の奥深さはあまりない(2クールくらいやってたら変わってたかもしれないが、1クールで今作の話題を掘り下げるには無理がある)。

しかしながら、キャラクター個々の心理描写についてはよく出来ていて、制作サイドはこちらの方に重点を置いたのかなと思える程の尺の使い方だった。

個人的に一番印象に残ったのは、三宅日向(CV:井口裕香)の過去回でもあるSTAGE11「ドラム缶でぶっ飛ばせ!」で、日本との中継に昔の友人が出てきたあとの一件である。

日向は高校で陸上部に所属していたが、大会出場の選抜レースで上級生より早く走ってしまい、引退を目前にしている先輩を蹴落として大会出場権を得てしまう。

この事に怒った上級生は、日向の同級生に、何故日向に対して上級生へ遠慮するよう忠告しなかったのかと詰め寄った。実は同級生は、大会前悩んでいた日向に対して配慮する必要が無いと助言していたのだが、このときは上級生に対して、自分たちは配慮するよう忠告したと言ってしまった。

これを影で見ていた日向は、その同級生の言動に絶望してしまい、ついには学校をやめてしまう。

中継に出ていた「友達」は、このときの友達であって、日向にとっては裏切り者でしか無いと思っている相手である。彼女は、このときの経験を乗り越えたいがために南極に来たのだという。

文字で書いてしまえば「たったそれだけで南極に?」という話だが、過去に人間関係で失敗した人には結構「刺さる」話ではないかと思う。

生きていれば裏切られることは結構あるが、思春期の頃に、友達だとか仲間だとか思ってた人間に裏切られるというのは、思春期以外でのそれとは大きく異なる経験である。

高校生なんて大人ぶってはいるが、まだまだ子供なのである。他人は例外なく善人だと思っているし、周りは自分のために動いてくれるとなんの疑いもなく信じているのが普通である。

思春期、青春というものは、この常識を覆し、「大人の世界」に足を踏み入れるための前段階だと私は考えている。

このアニメは高校生の視点で描かれるので、大人の世界の話は殆ど出てこない。だから、必然的に内容が浅くなってしまうのだが、それは多分製作者の意図なんだと思う(所々に、大人の世界が垣間見れる描写はある)。

私は、青春物のアニメ・小説のメインテーマは、自己の問題の追求とその克服にあると考えている。そういう視点で見ると、このアニメはまさに青春ものど真ん中で、直接的で、情熱的な作品だと思う。

なんとなくこの作品を見始めたけど、見てよかったと思っている。

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